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日本の民主主義と自由における課題と、世界との比較:Freedom in the World 2022

 公表からすでに半年近く経ってしまっていますが、遅ればせながらFreedom in the World2022を見ていきます。

(昨年の2021年報告については以下の記事)

 

Freedom in the Worldとは

 Freedom in the Wolrdは自由と民主主義を監視するために設立された国際NGO団体フリーダム・ハウスが毎年公表しているレポート及びランキングです。

 1948年に国連総会で採択された世界人権宣言を元に、各国・地域の政治的権利(Political Rights)及び市民の自由(Civil Liberties)を点数で表しています。採点は25項目4点満点、合計スコアは100点です。但し自国民の虐殺など極めて深刻な人権侵害が発生している国家・地域では別途減点されることがあります。(シリア、南スーダン、中国などいくつかの国で減点されている)

freedomhouse.org

 

 Freedom in the Wolrd2022におけるランキング上位は以下の国家・地域です。

 平均スコアは55.7点、中央値は60点、標準偏差は31点でした。

 日本は合計スコア96点でアジアでは1位、210国中11位タイであり、世界的にも上位に位置していると言えます。

 とはいえ、このようなランキングを見る記事では度々述べていますように、順位そのものにあまり意味はありません。重要なのはどのように評価されて、何が問題とされているかの内訳です。順位が高いのであればその維持方法、低いのであれば改善方法を考える必要があり、そのためにはどのように採点されているかを見なければいけません。

 

レポートの詳細

 具体的にレポートの内容、採点における失点項目を見ていきましょう。

 日本は政治的権利においては40点満点でしたが、市民の自由においては4項目で1点ずつ、計4点を失点しています。これらの失点項目が日本の民主主義と自由における改善すべき課題と言えそうです。

Are there free and independent media?

無料で独立したメディアはあるか?

 この項目では2014年に施行された秘密保護法に対してジャーナリストが懸念を抱いていること、放送法第4条に対する勧告、記者クラブ制度の存在、といったことが問題とされています。

Do laws, policies, and practices guarantee equal treatment of various segments of the population?

法律、政策、慣行は、さまざまな層の人々への平等な扱いを保証しているか?

 この項目では外国人の住宅や雇用へのアクセス、部落問題、アイヌへの人権問題、中国人や韓国人へのヘイト、LGBT+への差別、女性への雇用差別やセクハラ、難民や亡命者への対応、といった様々なセグメントに対する課題があると指摘されています。

Do individuals enjoy personal social freedoms, including choice of marriage partner and size of family, protection from domestic violence, and control over appearance?

結婚相手や家族の大きさの選択、家庭内暴力からの保護、容姿の管理など、個人的な社会的自由を享受しているか?

 この項目では戸籍制度による同姓の義務、同性婚を認めていないこと、表沙汰になっていない隠れた家庭内暴力、といった問題があると報告されています。

Do individuals enjoy equality of opportunity and freedom from economic exploitation?

個人は機会の平等と経済的搾取からの自由を享受しているか?

 この項目では長時間労働による健康への害、非正規労働者の低賃金と福利厚生の不足、商業的な性的搾取、について不自由な点があると指摘されています。

 

 これらの失点項目と問題はどれも実際に日本で社会問題となっているものが多く、本レポートが日本の情報を十分に収集して作成されたことが見て取れます。

 例年のレポートから大きく変わった問題はありません。しかしそれは逆説的に、これらの問題こそが日本の抱える宿痾と言えそうです。いずれも法律や慣習が絡んでおり即座に解決できる容易な問題とは言い難いものばかりではありますが、しかし自由主義の国家としては解決しなければならない問題でしょう。

 

結言

 経済規模や人口を考慮すれば日本は政治的権利と自由がしっかりと保障されている国家であり、世界的に見ても優秀な成績だと言えます。しかしまだ様々な課題が残存していることから、より良い社会を目指すために慢心せず課題の解決に取り組むことが必要です。

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  • 珈琲好きの忘れん坊 (id:external-storage-area)

    中尾さん、コメントありがとうございます。

    フリーダム・ハウスは1941年にアメリカで設立された組織で、親民主主義、かつ反権威主義、反ファシズム色の強い組織です。NGOですが米国政府の資金援助も受けており、アメリカ的な民主主義価値観を持っています。(悪く言えば民主主義の押し付け的思想を持っています)

    経済的余裕が自由と民主主義に必要なのは事実ですが、一応バルバドスのような小国やウルグアイのような南米の国も高スコアを記録しています。これはこのレポート及びランキングが「権利の有無」に着目しているからです。選挙の公平性や暴力の排除、集会や表現の自由、司法の独立性や手続きの正当性、そういった権利の有無でスコアが決まるため、日本も上位になります。
    権利に関しては、まあ日本は上位で問題無いかと思います。例えばドイツは94点ですが、反イスラムや反ユダヤ的思想によって信仰の自由が制限されており、政治家が過激派に暗殺されるなど暴力の排除も不十分とされています。世界の平均スコアが55.7点ということからも察せるように、政治家が暴力で殺されない、皆に投票権がある、学問ができる、集会や組織に制約が無い、司法手続きが存在する、居住や移動の自由がある、野党が選挙に参加できる、国民が政策を知ることができる、といったことができる国は意外と少ないです。相対的に見れば日本における権利は世界でも上位です。

    ただ、具体的な民主主義の度合いであればイギリスのエコノミスト誌が毎年公表している民主主義指数(Democracy Index)のほうが適切です。2021年の日本は8.15/10点で17/167位と、上の下くらいの位置で、これはギリギリ「完全な民主主義」判定です。評価項目のうち、「市民の政治参加」が6.67点と低いことが理由です。また「政治文化」も8.13点と少し低いです。

  • レフティ中尾 (id:qqaq83ddgalilei18)

    珈琲好き様、こんにちは。コメント失礼します。

    恥ずかしながら、フリーダムインザワールドのことは全く知りませんでした。自由と民主主義を監視するNGOですか。監視するって、ネガティブな言葉のように思うのですが、この場合は肯定的な意味なのでしょう。

    北欧諸国が満点で、アメリカがランク外というのも意外には思えません。しかし、日本がなぜ高得点なのか、よくわかりません。
    まあ、経済的に安定している国が上位にくるのは必然です。自由と民主主義はカネで買えるのです。しかし、自由と民主主義があるから国民が満足しているかと言えば話はまた別なのでしょうね。

    このランクの価値観がいわゆるリベラルなのですね。(自由だから当然か)。この意味で日本はリベラル寄りの国と言えます。けれども、この国は保守政党が強いのも面白いです。

    今回もとても勉強になりました。ありがとうございます。