キミの作った味噌汁が毎日食べたい
かえでと半年ぶりに会った日の翌日、朝6時30分。ベッドの上でまどろんでいると。
「京ちゃーん!朝ごはん出来たよー!」
「あー、今行く~・・」
・・・って、は?
────バタンッ、ドタドタドタ、ガチャッ
眠気が一気に覚めた俺は、急いで自室を出てリビングに向かった。
「かえで?!なんでいるの?!」
リビングには、やはりかえでが居た。あ、エプロン姿可愛い。
「おはよう京ちゃんっ!ん~っとね、とりあえず、今日のところは通い妻から始めようと思って。まだ、お母さんにも話してないし、あたしたちの関係」
「は、はぁ・・・?」
「通い妻」・・・?どういうことだ。かえではそういうのに憧れてたのか?
だから、昨日のうちに合鍵が欲しかったのか?もしかして、”これ”がしたくて・・・?
「せっかくだから、できるだけ早く京ちゃんの朝ごはん作ってあげたくて、だから昨日のうちに合鍵欲しかったんだぁ~」
やはり、そうであるらしい。
「
「それより、起きて奥さんと顔合わせたら、まずなんて言うの?」
子どもを
「お、おはよう、かえで」
そう口に出したとたん、自分の心のなかで何かあたたかい感じがしたのに気が付く。
(・・・そうか、俺、最後に「おはよう」って口に出したの、もういつだったかわからないくらいだったもんな・・・)
人と挨拶を交わすのがこんなに幸せな気持ちになれるものだとは。相手がかえでだからというのが大きいのかもしれない。
「ちなみに、あたしが来たのは朝の5時だよ~」
「ご、5時?!大丈夫かかえで、無理してないか?」
寝不足は女性の天敵だと言うが・・・。
「大丈夫だよ~、今日のために、昨日は9時に寝たし!」
「いや、なんでそこまで・・・」
「京ちゃんが何時に起きるのかわからなかったから」
にっこり笑顔でそう言われたが、つまり、・・・どういうことだ?
「どういうことだ?俺が起きてから来るんじゃダメな理由でもあるのか?」
「・・・京ちゃんさ、この半年、毎日、朝起きたら、誰もいない家で一人だったでしょ?」
かえでは一転して悲しそうな顔になって、そう言った。
「うん、まあ・・」
「だから、京ちゃんが起きた時に、家に誰かがいて、あったかいご飯が作ってあったら、京ちゃんの寂しいのが少しでも
かえではどこか不安そうな表情で俺をチラッと見る。
たぶん、連絡なしでいきなり来たから、俺がどう反応するか不安なのだろう。
そんなかえでを、俺は。
無言で抱きしめた。
「きょ、京ちゃん・・・?」
「・・・ぐすっ、・・」
「泣いてるの・・・?」
「ひぐっ、・・うっ・・。ぐすっ・・・」
心が震えすぎて、嗚咽ばかりで声が出ない。
「やっぱり、寂しかったんだね・・・」
そんな情けない俺の頭を、かえでは優しく撫でてくれた。
「京ちゃん、半年も、ずっと一人で、つらかったんだね・・・」
かえでも涙声になっていた。
(この言い方は、昨日、俺がかえでに言った・・・・)
「う゛っ、う゛あぁぁっ、かえでっ、ありがと゛ぉ゛ぉ・・・・・」
かえでは俺が泣き止むまで、俺の頭を撫で続けた。かえでのやさしいぬくもりに、余計に涙が止まらなかった。
「ごめん、ご飯、冷めちゃったよな」
俺はティッシュで涙を拭きながらかえでに謝った。
「ん、大丈夫だよ、あっため直すから。あたしは学校の始業時間までまだ時間あるし。京ちゃんも、まだ時間は余裕あるでしょ?」
「ああ、うん。かえでが少し早い時間に起こしてくれたからな」
「じゃあ、温め直せるね。京ちゃんは先に座って待ってて」
「おう、わかった。全部任せちゃって、なんか悪いな」
「いいのいいの~、これも奥さんのつとめですから!」
やたら嬉しそうに「奥さん」を強調するかえで。
やべぇ、可愛すぎる。
「おぉ!すごい美味しそうだな!」
「ちょっとリアクションが大げさだよ~、京ちゃん」
「いや、かえでが料理できるのは知らなかったから」
「高校入ってから料理部に入ったんだ~。いつまでも昔のままじゃないんだからね~?」
「そっか、もう俺の知ってるかえでじゃないのか、寂しいなぁ・・」
冗談めかして言ったつもりだったのだが、
「だっ、大丈夫だよっ、あたしはずっと、京ちゃんのことが大好きなあたしのままだからっ!寂しいならぎゅ~ってする?」
かえでは予想外に慌てふためいて、そんなことを言ってきた。
「・・かえで。かえでのほうこそ、リアクションが大げさ」
「あっ・・」
自分が口走ったセリフの恥ずかしさに気付いたようで、かえでは顔を真っ赤にして俯いてしまった。かわいい。
「さて、また冷めちゃわないうちに、食べよっか?」
「・・・うん・・。京ちゃん、さっきのは、その、忘れて・・・」
「いや、一生思い出してニヤニヤするわ」
「うぅぁぁ~~・・・・」
それにしても、なんでさっき、かえではあんなに慌ててたんだろう。
もしかして、俺の「寂しい」って言葉に過剰反応したのか・・・?
「「いただきます」」
誰かと一緒にご飯を食べるのも久しぶりだ。
うぅ、また涙出そう。
朝食のメニューは、しゃけの塩焼き、豆腐となめことわかめの味噌汁、ほうれん草のおひたし、野菜炒め。いろどりも品数も栄養バランスも満点の、手の込んだ和食だった。
「美味い。とくに味噌汁の味が最高だ。かえではいい奥さんになるな」
「えっへへ~。それは奥さん自慢ですか~?」
「はいはい、確かにそうかもな」
かえでと夫婦になれたら。すごく幸せなことだろう。まだ先の話だが、かえでとなら一生添い遂げたいと本気で思える。
「ね、ね、アレ言ってくれない?『キミの作った味噌汁が毎日食べたい』っていうやつ」
「え、やだ、
「いいじゃんいいじゃん、一回言われてみたかったの~っ。お願いっ」
かわいいかえでのお願いとあらば無下にするわけにもいかなかった。
「・・・・。き、キミの作った味噌汁が毎日食べたい」
恥ずかしがりながらも俺がそう言うと、かえでは満面の笑みになって。
「はいっ!毎日作りますっ!」
「え、マジで?」
「うん。マジで」
「たまに味噌汁じゃなくてコーンスープをお願いしてもいいですか?」
「もちろんですよ、旦那さま」
・・・え、これ、もしかしてマジで、明日から毎朝かえでが朝食作ってくれるの?
「いや、ほんとに毎日作るの?さすがに悪いよ」
「ううん、あたしが、作りたいのっ。それに、あたしは京ちゃんの奥さんになるんだよ?奥さんにそんな遠慮してちゃダメでしょ」
おぉう、なんつー嬉しいお言葉・・・。
「俺の将来の嫁は天使か、あるいは女神かなにかなのか?」
「京ちゃんだけの女神さまだよ?」
そう言って、かえではいたずらっぽく
やっぱり小悪魔かもしんねぇ。くそぅ、可愛すぎんだろ。
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