「俺なんで生きてんだろう」って呟いたら幼馴染に泣かれたんだけど、俺なんで逆プロポーズされてんだろう

ξ~(´・д・`)「リクト」

本編

「俺なんで生きてんだろう」って呟いたら幼馴染に泣かれたんだけど、俺なんで逆プロポーズされてんだろう

その日、俺はいつものように学校に行き、バイトに行き、バイトを終え、自宅に帰る途中で、ふと、公園に立ち寄った。

中二病ではないが、ときどき公園のブランコで黄昏たそがれたくなることがあるのは俺だけじゃないだろう。


ブランコに腰掛けてキコキコと小刻みに揺らす。


半年前に、両親が事故で死んだ。クリスマスの夜だった。ケーキを買い忘れた母さんが、急いで買いに行って、父さんもそれについて行って、その道中での交通事故。俺は留守番してて、自分ひとりだけ無事だった。両親の生命保険が下りたため生活費には困っていないが、大学に行く場合の学費にするためにそのお金にはできるだけ手をつけたくなくてバイトをしている。アパートで一人ぐらし。帰っても誰もいない。将来の目標もない。友人もいない。いや、いたけれど、両親が死んでからは人付き合いが億劫になってしまって疎遠になった。


「はぁ・・・。俺、なんで生きてんだろう」


今日、俺は朝起きてから今このときまで、バイト先での事務的な会話以外に、一言も発することなく過ごしていた。今日だけではない。昨日も、一昨日も、その前の日も。両親が死んでから、俺の周りのやつらは皆、腫れ物に触るように扱うか、わかりやすい同情的な態度を浮かべるか。もしくは、正義感ぶってあえて明るく俺に話しかけてくるかだった。でも、最初のうちはそうやって話しかけてきたやつらも、今では諦めて全く話しかけてこない。


「いま俺が死んでもきっと、もう誰も泣いてはくれる人はいないんだろうな・・・」


・・・いや、幼馴染のかえでなら泣いてくれるだろうか?


しかし、彼女とはもう半年も会っていない。

中学までは同じ学校だったが、高校はお互い違う学校に進学した。それ以来、今までの二年間、疎遠になっていた。


半年前、俺の両親の葬式で久しぶりに顔を合わせたわけだが・・・。



──────半年前─────



「京ちゃん・・・」


冷たくなった親の棺を前に泣き続ける京介に話しかけるかえで。

しかし、気が立っていた俺は、俺の肩に添えられた、かえでのその手を、


「ーー触るなッ!」


──つい、力任せにはねのけてしまった。


「あ・・・」


涙でよく見えなかったけれど、あの時、そう小さく声を漏らしたかえではどんな顔をしていたのだろうか。


あれ以来かえでには会っていないので、謝ることすらできていない。





──────────



かえでは俺の初恋の人だった。

でも、俺は平凡で、かえでは美少女で、性格もよくて、モテた。

告白なんてできないまま、十数年間。この思いをこじらせ続けてきた。



「俺が死んだら、かえでだけは泣いてくれるかな、あいつ、優しいから・・・」



俺はしばらく公園のブランコに座って夕暮れを眺めていたが、やがて日が完全に沈み切って、星が瞬くころになって、夜の寒さを感じて腰を上げた。


「はぁ・・・」


応える者もいない独り言を言っていた自分に溜め息が出た。

そのとき。


「京ちゃんっ!どこ行くの?!」


「えっ?」


かえでの声がした。


「これからっ、死にに行くつもりなのっ?!」


公園の塀の向こうから姿を現したかえでは、目を真っ赤に腫らして涙をながしていた。


「かえで?なんでここに・・・」


「そっ、それはっ・・。京ちゃんが心配で、様子見に行こうと思って京ちゃんのおうちに行ったけど、帰ってこないから探しに来てたの!」


・・・そう言えば、かえでとは半年話してないから、俺がアルバイト始めたことも言ってないんだよな・・。


「・・・聞いてたのか?」


「全部、聞こえてたよぉっ!ぐすっ、」


「かえで、俺は・・」


べつに、今から家に帰ろうとしていただけで・・・。


「京ちゃんっ!死んじゃだめぇっ!」


「うぉわっ?!」


誤解で焦っているかえでは俺の腹に抱き着いてきた。


「京ちゃんっ!あたし、京ちゃんが死んじゃったら、生きていけないよぉっ!京ちゃんのこと、ずっと昔から大好きでっ、おじさんとおばさんが亡くなった日、ほんとは、二人はっ、ケーキ買い忘れたのはわざとだったの!あたしが、あの日、京ちゃんに告白したかったからっ、二人に頼んで京ちゃんひとりでお留守番するようにしてもらって、サプライズで京ちゃんのおうちに行って告白するつもりだったの!だからっ、二人が死んじゃったのは、あたしのせいなのっ!ごめんなさいっ、京ちゃんっ、ごめんなさい・・・。あたしのせいで・・・。ごめんなさい・・。怖くて、半年も本当のこと言えなくて、逃げちゃっててごめんなさい・・」


「・・・・・・かえで」


俺がそう呼ぶと、俺に抱き着いているかえでの体がビクッと震えた。

俺に怒鳴られる覚悟で本当のことを言ったのだろう。


「べつに、俺はそれを理由にかえでを恨んだりしない。・・仕方のないことだったんだよ、あの事故は。かえでのせいじゃない」


嘘だ。本当は、「仕方のないこと」だなんて割り切れていない。けど、かえでのせいじゃない。それは確かだ。実際、今の話を聞いても、かえでを恨む気持ちは湧かなかった。


「・・うっ、うわぁぁぁんっ」


再び泣き出してしまったかえでの頭を、俺はそっと撫でた。


「かえで、半年も悩んで、つらかったんだな・・」


俺はかえでが泣き止むまで、かえでの頭を撫で続けた。






「ぐすっ、ひぐっ、・・ごめんね、京ちゃんのほうが、この半年ずっとつらい思いしてたのに、あたしが泣いちゃってごめんね・・・」


「かえでは謝る必要があるようなこと、なにもしてないよ。なにも悪いことしてないのに、謝らないでくれよ。困っちゃう」


「ぐすっ。でもぉ・・」


「ところでさ、かえで、さっきのって、告白?」


───ピタッ



自身の制服の袖で涙をぬぐっていたかえでの両腕が止まった。つい今まで涙をぬぐっていた腕でかえでの顔は見えないが、どんな表情をしているんだろう。



「俺もかえでのこと、大好きだよ。ずっと昔から。だから・・・」


「ふっ、ふぇぇぇ~~・・・・」


「ちょっ、なんでまた泣くの?!」


「だって、今度は嬉しくて・・・」


「泣くほど?!」


「泣くほどだよっ!」


「で、えっと、かえでがよかったらなんだけど・・・」


「はいっ、あたしを京ちゃんのお嫁さんにしてくださいっ!」


「うん。よろしくお願いします」



・・・・え?俺、流れで「よろしくお願いします」って言ったけど、今この子なんて言ってた?

ちゃんと「彼女にしてください」って言ってたよね?


・・・・言ってたよね?

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