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アルカディア・クエスト〜死にゲーを極めたRTA廃人が駆け抜けるMMORPG『理想郷探索Any%盾使いチャート』〜 作者:蒼唯まる

燃え尽きたRTA廃人と理想郷探索

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夜天からの襲来者

「さてと。ボスも倒せたわけだし、ここらで一息つきたいところだけど……それよりもまずは、急いで森を抜けるぞ」

「え……うん」


 地面に転がっていたブロードソードだけ回収して、すぐにボスフロアの出口へと走り出す。

 ストレイクァールも中々の脅威ではあったが、ピンチはまだ終わっていない。


 ボスフロアで戦闘が始まると、他のプレイヤーからの干渉を防ぐために出入り口に障壁が展開されるようになっている。

 こいつは戦闘が終了すると一定時間後に解除される仕様となっており、ストレイクァールが再出現するまでの僅かな間、自由にフロアを出入りすることができる。


 つまり、あいつらが諦めて帰っていればいいのだが、そうでない場合――


「――弱ってるところを仕掛けてくるよなあっ!!」


 突如として、背後から飛んでくる矢を咄嗟に盾で防ぐ。

 が、さっきの戦闘の疲労が祟って弾き落とせずに、鏃が脇腹を掠めてしまう。


 途端、全身が一気に硬直しだし、立っていられなくなる。

 地面に片膝をつきながらHPバーを注視すると、真下には黄色い稲妻マークが出現していた。


「ぐっ……!? 麻痺、か」

「――ジンくんっ!?」


 まずったな……出口まであと少しなのに。


 確か麻痺は自然回復しなかったはず。

 しかも麻痺を治すアイテムは、次の街からでないと売ってないという嫌なおまけつきだ。


 くそっ、どうしてこうも対処できない状態異常ばっかになるんだよ。


「ヒャハハハ!! 折角、苦労してボスを倒したのにざまあねえなぁ!!」

「ストレイクァールの討伐、ご苦労さん! けどまあ、また倒しに来なきゃいけなくなるけどな!!」


 前方を見遣ると、案の定さっきの連中がニタリと嘲笑を浮かべながらボスフロアの中に侵入してきていた。


 隣には、さっきは見なかったフードを被った赤ネームのプレイヤーの姿もある。

 手に弓が握られているから、ボス戦前と今さっき矢を放ってきた奴で間違いないだろう。


「……ったく、ここまで粘着してくるとか、俺のこと好き過ぎんだろ」


 男たちとの距離はまだ数十mあるのに対して、出口まではあと2、3m。

 俺はもう一人で動くこともままならないからどうしようもないが、シラユキ一人ならどうにか逃げられるはずだ。


 リポップするまでの間、入り口側からは自由に出入りはできるが、出口を抜けることをできるのは、ボスを倒したパーティーのみだ。

 それ以外のプレイヤーが出口を抜けようとすると、障壁によって阻まれるらしい。


 連中は各々の武器を取り出しながら、ゆっくりと近づいてきている。

 もう俺が逃げられないから勝ちを確信しているのと、じっくりといたぶってやろうという表れだろう。

 まあ、確かにもう俺に抗う手段はないけど、流石に油断し過ぎじゃないか?


「シラユキ……俺を置いて先に行け。ボスフロアを抜ければ奴らはまた追って来れなくなる。そしたら次の街まで逃げ切れるはずだ」

「でも……そしたら、ジンくんは?」

「まあ間違いなくリンチにされてボコられるだろうけど、言ってしまえばそれだけだ。そしたらすぐに追いつくから……って、おい!?」


 言い切る前に右腕をシラユキに担がれる。

 振り解こうにも、全く動けないから、体重をシラユキに委ねるしかない。


「見捨てないよ、絶対に。ジンくんには何回も助けられたんだもん。だから今度は私が助ける番……!」


 シラユキは顔を赤くしながら言うが、俺を運ぶのはかなりキツいだろ。

 僧侶に筋力のジョブ補正は乗っていないし、パラメータだって無振りだったはずだ。

 現に俺を持ち上げることはできずに、引きずるのがやっとだった。


「逃がすなよ!! ここでぶっ殺せ!!」


 背後から短剣男の怒号が聞こえてくる。

 しかし、出口までの距離が短かったおかげで、連中の凶刃が届くよりも先にシラユキがボスフロアを抜け出すことに成功する。


 だが、俺の麻痺が治らないことには窮地を脱したとは言えず、奴らのレベルであればリポップしたストレイクァールを倒すのも時間の問題だ。


「……無理だと判断したら、すぐに俺を置いて逃げろよ」


 一応、そうは言ってみるものの、シラユキが首を縦に振ることは無かった。




 パスビギン森林を抜けて、シラユキは必死にアトノス街道を突き進むが、次の街まではまだ大分距離がある。


 走ればさほど時間はかからないが、俺がいたのではそうはいかない。

 ただそれでもシラユキは、息を切らしながらも着実に一歩ずつ足を進めていき、ようやく次の街――”ビアノス”が見えてきた頃だった。


「ようやく追いついたぜ! いい加減、観念しやがれ!」


 ストレイクァールを撃破した男たちが、こちらに向かって物凄い勢いで追走して来ていた。


「くそっ、やっぱそこまで時間を稼げなかったか……!」


 適正レベル余裕で超えた5人がかりで挑んだらそりゃ楽勝か。

 いや、逆によくここまで持ち堪えてくれただけ凄いと言うべきだろうな。

 流石、ストレイクァール教官って呼ばれるだけあるわけだ……って、感心してる場合じゃねえか。


「シラユキ、やっぱ――」

「死なば諸共、って先に言ったのはジンくんからだよ」


 どこか決意に満ちた表情でシラユキが微笑む。

 やっぱ俺の言うことは聞いてくれそうにないか。


「確かにあの時はそう言ったけど、あの時は逃げるって選択肢が存在してなかったから……!」

「じゃあ、逆に聞くけど……もし私とジンくんの立場が逆だったとして、ジンくんは私を置いて逃げる?」

「あ? んなこと――」


 答えは決まりきっている。

 だからこそ、それ以上は何も言えずに口を噤むしかなくなった。


「……言っとくが、戦闘になったら今の俺らにまず勝ち目はないぞ」

「うん、分かってる。だから、またあのボスを倒しに行こ?」


 柔らかな笑みを湛えてからシラユキは、俺を地面に降ろすと、杖を構えて男たちの前に立ちはだかる。

 ようやく俺たちに追いついた男たちはというと、シラユキの行動に対して苦笑を浮かべていた。


「……おいおい、一体何の真似だ?」

「彼を倒すのであれば、先に私が相手になります」

「ひゅ〜、勇ましいねえ。でもさあ、君じゃ俺らの相手にならないよ?」

「あ、別の意味での相手をしてくれるなら大歓迎だけどな!」


 連中が飛ばす下品な笑い声につい顔を顰める。

 さっきちゃんと矢を弾き落とせてたら、と後悔しても仕方ないが、やっぱイラつくもんはイラつく。


「……ま、邪魔するってんなら仕方ねえ、容赦無く殺らせてもらうぜ。おい、やれ」


 短剣男が赤ネームの戦士2人に指示を出すと、戦士2人は歪な笑みでゆっくりと近づいてくる。


 チッ……万事休すか。




 ――それは、突如として夜天からやって来た。




 ボロボロに朽ちた醜悪な翼を持ち、頭部からは羊と牛を彷彿とさせる4本の角が生え、尻尾はまるで毒蛇のよう。

 そして、何より特徴的なのが全身を覆う禍々しいオーラ全開の漆黒の外骨格。


「……何、こいつ?」


 身長2.5m程の人型をしたそいつを一目見た瞬間、俺は直感する……いや、理解(わから)させられる。

 こいつにはどうやっても勝つことができないんじゃないか――そう錯覚してしまうほど理不尽に強き存在であることを。

 正真正銘、最強と呼ぶに相応しい化け物であることを。


 空から舞い降りた黒いそいつは、俺を一瞥するなり突き出した掌から黒い衝撃波を繰り出してきた。


「――は!?」


 反応する間もなく俺は、傍にいたシラユキを巻き込んで10m以上の距離を吹っ飛ばされる。

 正直、即死を覚悟した被弾だったのだが、HPは殆ど減っていないようだった。


「シラユキ、大丈夫か!?」

「私は平気。なぜかダメージもほとんど受けていないみたいだし」

「……強烈なノックバックだけの見せかけ、なわけないよな」


 今の状態は気になるが考えるのは後だ。

 視線を黒いそいつに向けた瞬間、男たちが悲鳴を上げ始めた。


 黒いそいつによってパーティーが壊滅させられていた。

 赤子を弄ぶように一撃で連中を一人ずつポリゴンと散らしていき、最後に生き残った短剣男が尻尾を巻いて逃げる様をまじまじと見つめた後、瞬時に追いついて上半身と下半身を真っ二つに引き裂いて見せた。


 そして、最後に俺をまた一瞥してからそいつは、夜空へと消えていくのだった。




 この時、俺はこのゲームに対する認識が甘かったことを思い知らされた。

 アルカディア・クエスト――このゲームは間違いなく、大衆向けソフトであると同時にJINMUを超えるように作られた超極悪高難易度の一面を兼ね備えていた。


 あいつを完全攻略したい、この世界を探求し尽くしたい、誰よりも速く――。


 俺の中で冷めていた熱狂が、再び息を吹き返そうとしていた。

ここまでが1章となります。

次章から、ゲーム内ストーリーに深く迫っていけたらいいなあ・・・(白目)

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