【北京=比嘉清太】中国メディア・財新などは5日、中国広西チワン族自治区の全州県で32年前に起きた子供の連れ去り事件に、県政府が関与していたことを文書で認めたと伝えた。

 文書では、連れ去り行為を当時の産児制限による人口抑制政策に基づく「社会調整」だと正当化しており、世論の批判が広がっている。

 報道によると、1990年8月、同県在住の夫婦の子供7人のうち1歳未満だった末子の男児が男女5人に連れ去られた。当時は夫婦の子供の数を原則1人に制限する「一人っ子政策」が厳しく適用されており、当局者が同政策に違反して生まれた子供を親から引き離す事例があった。こうした手法を当局は「社会調整」と呼んでいる。この男児は今も行方不明のままだ。

 夫婦は今年6月になって、連れ去ったのは地元当局者だったとして、誘拐容疑での捜査を陳情した。県政府は「90年代は人口抑制(政策)を厳格に実施しており、規定違反で生まれた子供の中から選んで『社会調整』を行った」と文書で回答。陳情を不受理とした。

 中国紙・新京報(電子版)が不受理は「二次被害を生んだ」と批判するなど、対応に非難が集中。県の上部機関は5日、陳情を軽視したとして県政府幹部を停職処分にすると発表し、沈静化に躍起となっている。