<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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遅れて申し訳ありません。


黒き暴発する怪物

 □【修羅王】サンラク

 

 

 超級職としての力を試したい、蠍を倒したい、そしてMVP特典が欲しい。

 ゲーマーとして、俺が考えていることは三つだ。

 最重要なのは、この蠍を倒すこと。

 広域にまき散らされる毒、光速のレーザー、そしてあの赤いオーラ―に起因する防御とカウンター。

 いずれも、俺にとっては難敵。

 速度型全般にとって広域殲滅型の攻撃は天敵だ。

 毒ガスならマスクで防げるが、溶解毒をまき散らされたら防げない。

 どうやっても、俺より速いレーザーも脅威だ。

 とはいえ、こちらは射出口がわかっているので、射線を斬れば対処できる。

 

 

『結局、あの防御スキルが問題だよな』

 

 

 特に警戒するべきは、あの赤いオーラ。

 超級職の奥義、《真火真灯爆龍覇》さえも防いで見せた、あの技。

 あれをどうにかしないことには、勝利の可能性はない。

 火力が根本的に足りないのを、ティックや特典武具による大技で補っている俺にとってはどうしてもああいう単発式の防御は苦手だ。

 迅羽の必殺スキル――《彼方伸びし手、踏みし足》とか言ったか、あっさりと防いだ。

 体内に発生する奇襲攻撃、おそらくはレイの必殺スキルに近いものだ。

 それをあっさりと防いだことから考えると、オート防御。

 

 

 絡繰りというか、ネタはわかっている。

 あの尻尾の周りを飛んでいる、発光体が、一つ減っている。

 おそらくは、一度防御スキルを使うごとに、一つあの発光体を消費する。

こういうストックを消費しているタイプの、スキルは<エンブリオ>に多く見られる。

 俺の《暴徒の血潮(ライオットブラッド)》のように、ストック消費している奴らは多い。

 ストック式は便利だ。

 短期決戦においては、あれ以上にいいものはない。

 ストック尽きた後に、連戦になるときついけどな。

 まあ、そこはログアウトできるゲームなのである程度何とかなるけどな。

 あるいは、ログアウトできる<マスター(プレイヤー)>だから、<エンブリオ>にそういうスキルが多いということなのか。

 重要なのは、そこではない。

 

 

 

『アンダーマテリアル、いくつ削れる(・・・・・・)?』

「まあ、三回ならイカせられるかな。切り札(・・・)はまだ晒せないし」

『切り札?』

「とっておきだよ。ちょっと温存しておきたいかなあ。お楽しみは後に……もとい、夜に取っておきたいものだよねえ」

『好きにしろ……。それで三回まではいけるんだな?』

「そうだね、三発は出せるよ……ひぎいん!」

 

 

 うるさい変態バカを殴って黙らせる。

 割とゲージがギリギリになったような気がするが、知らん。

 こいつの場合、MPさえ残ってれば、HPなんていくらでも回復できるからな。

 

 

『だ、そうだ迅羽。あと三回(・・・・)は俺達だ』

 

『どっちが持って行っても恨みっこなしってことカ?いいゼ、やってやるヨ』

 

 

 迅羽は、両手足の爪を伸ばす。

 俺もまた、触手を展開し、そのすべてで俺の牙を構える。

 さて、四つ目の特典武具奪取と行きますかあ!

 

 

 

「《喚起ーー【スプラッシュ・エレファント】、【プレイ・ケルベロス】、【ビッグ・マグナム】》」

 

 

 

 アンダーマテリアルが、ジュエルから手持ちのキメラを召喚する。

 以前も見た象と、ケルベロス。

 それに加えて、異様なキメラ。

 五メートル程度の大きさの人型。

 ただし、腕が一本しかなく、その右腕はそれ以外と同等のサイズか、それ以上のサイズ。

 どう考えても、「一発ぶち込んでやるよ」と言わんばかりの仕様である。

 後、名前どうにかしろ。

 全部下ネタじゃねえか。

 改良として、象に毛を生やしてマンモスにするのやめろ。

 ちょっとそれっぽくなるだろうが。

 

 

 

 象が、鼻から毒液をまき散らし、ケルベロスが炎、雷、冷気をそれぞれ口からまき散らす。

 それらは、動きを阻み、蠍によってまき散らされる毒液を防ぐ。

 さらに、毒で地面が溶けるので、【リボルブランタン】の動きは大幅に阻害される。

 加えて、炎熱と雷撃が、動きをけん制し続ける。

 

 

 

「VIIIIIVOOOOOO!」

 

 

 

 

 その間に、隻腕の怪物が、接近していた。

 冷気で、毒と炎熱と雷撃から守られて、接近できる。

 あれ……なんか腕でかくね?

 さっきまで五メートルぐらいあったんだけど、それが横に膨らんで、長さも倍近くになって。

 黒い皮膚が、腕の部分だけ赤熱して。

 

 

 

「VIIIIIIIIIIIIIIVOOOOOOOOOOOOOOOO!」

 

 

 蠍を、全力で殴り飛ばす。

 

 

『――』

 

 

 それと同時、赤い発光体が点滅し、赤いオーラが蠍を守る。

 赤いオーラで、ダメージがすべて防がれ、ダメージは一切通らない。

 

 

 そして。

 

 

 

『《ファイア》』

 

 

 

 【リボルブランタン】のカウンターとして、極太のレーザーが、隻腕巨人を捕らえ。

 

 

 【ブローチ】によって阻まれる。

 そして、もう一度。

 

 

「VIIIIIIIIIIIIIIIIVOOOOOOOOOOO!」

 

 

 

 赤熱した腕が一閃。

 再び、レーザーが飛んでいくが、これは。

 あ、ケルベロスがブローチを盾に守ったな。

 んー、あの隻腕キメラ、もう腕ボロボロだな。

 三回ってのは、三発打ったら使い物にならないくなるって意味とみていいかな。

 あいつのキメラは、そういう奴らが多い気がするけど。

 使い捨て前提みたいな。

 そうしたほうが瞬間火力が出るってことなんだろうな。

 

 

 

「「「WOOOO!」」」

 

 

 

 そして、三度目。

 また防がれて、赤いオーラが展開、発光体が割れる。

 けれど、それと同じ展開にはならなかった。

 

 

 カウンターのレーザーが当たらなかった。

 正確に言えば、当たる的がなかった。

 

 

 

「VI、VO……」

「やっぱり三発が限界かあ……」

 

 

 赤熱し、肥大した腕が自壊する。

 そしてそれに巻き込まれて、腕以外の部分も崩れて、光の塵になった。

 

 

『た―まやー』

 

 

 なんとなく使ってるけど、これどう言う意味があるんだろうな。

 花火と言えば幕末くらいしか出てこない。

 そういえば京ティメットにイベント誘われてたような気がする。

 まあ、気にしなくてもいいか、始まったら始まったときに考えればいいだろ。

 どうせ始まる直前に、またメッセージが来るだろうし。

 

 

 なんとなく聞いたことを、意味もわからずいうのって今更だけどすごいバカっぽい気がする……やめておこう、その辺考えすぎるとシンプルにダメージがでかい。

 まあ、いいや。

 どうせ誰もきいていない(・・・・・・)んだから、深く考えることはない。

 

 

 

 残りは四つ(・・)、さあどうやってブッ壊すかね。

 

 

 To be continued




???「シャンフロを思い出すねえ?」


・《黒殲》

 【ビッグマグナム】唯一のスキル。
 リミッターを外して、全力で殴る。
 ただそれだけだが、その一撃の威力はクマニーサンに匹敵する。
 なお、反動も大きい。
 キメラ体はつぎはぎゆえに、自身のSTRに耐えられない。

・切り札

 それは、龍であって龍ではない




 しばらく更新不定期になります。
 いろいろ忙しくて、申し訳ありません。
 ストックをため込んできたオリジナルがあるので、良ければそっちもお願いします。

  https://ncode.syosetu.com/n9871hf/

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