<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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一迅の金色の風

 □【修羅王】サンラク

 

 

 無数の蠍の大群。

 俺自身、動揺は特にない。

 統一感のあるMOB軍団に襲われるのは数多のゲームで経験したこと。

 慣れている。

 蠍の大群に襲われる、というのはシャンフロでも経験した事態だが……あの時とは事情が違う。

 一つ、この蠍はそこまで知性が高くない。

 シャンフロの蠍が、あくまでAIであり、アプデによって日々プレイヤーの動きを学習しつつ進化する。

 一方、デンドロのAIは徹底して生物の再現をしている。

 良くも悪くも、ゲームシステムとしては非合理的な動きが多く、攻撃のパターンもさほど多くはない。

 流石に<UBM>となると話が変わってくるが……そうでもなければ、動き自体は単調。

 そして、もう一つ。

 

 

『今の俺は、空を跳べる(・・・)!』

 

 

 この<Infinite Dendrogram>においてもっとも頼れるスキルである《配水の陣》君を起動!

 いや本当に毎日助けられてます。

 こいつがいないと本当に遠距離攻撃持ってるやつらとか空飛べる連中には何もできないだろうし。

 そのまま爆速で青い結界を跳ねまわり、蠍の攻撃から逃れる。

 あー、何か下の方で悲鳴が聞こえた気がしたけど気のせいだな。

 いや違うな、悲鳴じゃないわ喘ぎ声だわこれ。

 やめろ気持ち悪い。

 虫プレイがどうとか二度と言うな変態女。

 耳をふさごうにも、【蛇眼鳥面】のせいでできないんだよ。

 本当に何でこんなふざけた<エンブリオ>になったんだか……はい、今までの俺の行動の結果ですねすいません。

 レイの<エンブリオ>や、ペンシルゴンのやつと違って、俺の<エンブリオ>はあまりに多機能。

 それ故に扱いが面倒だが……手札は多く、そのすべてが強力だ。

 

 

 さて、蠍群団を見下ろす。

 岩石が蠍の形をしたかのような造形。

 ロックライクってのが、「岩に似ている」という意味なのだろうと思われる。

 地形は岩肌が目立つ、山岳のふもと。

 砂漠ではないが、木々も少ない。

 

 

 《看破》で見るに、ステータスは耐久型の純竜クラス。

 俺は、超級職ではあるが、まだ成り立て。

 STRは決して高くはない。

 火力を補うティック性の装備もおおむね短期決戦型であり、こういう相手には向かない。

 となると、ケツァルコアトルで反動を消して、速度任せに突貫することになるが、これも問題がある。

 速度任せの攻撃は、俺のAGIを乗せてダメージを与える。

 それは、一つの問題がある。

 速度を攻撃力に変換する方法は、直線状に移動しないと、ダメージが乗らない。

 しかし、直線状に動けば、潰したほかのモンスターに飽和殲滅されてしまう。

 アンダーマテリアルを攻撃している、あの蠍共の様子を見ている限り……数で押しつぶすムーブが主体みたいだしなあ。

 とはいえ、戦うのであれば、それ以外に選択肢はない。

 これほど硬い素材が大量に、なおかつ無数にある。

 それを放置して逃げる?冗談ではない。

 そんなことは、一ゲーマーとして許されざる行為ですよ。

 アンダーマテリアルは知らん。

 ああでも、あいつがデスペナってくれればあいつのドロップがゲットできるのか。

 それはちょっと興味があるな。

 と思ったけど、ヌメヌメの触手とかだったら嫌だな。

 あいつのキメラ、だいたいそういう(・・・・)のだし。

 流石下ネタでゲーム一つ丸ごと潰しただけのことはある。

 

 

 いや、それはいい。

 

 

 《配水の陣》を起動する。

 ただし、今度は地面と並行に床のように配置するやり方ではなく、跳ね回るための壁として使う。

 

 

『はっはっはああああ!随分柔らかい岩だなあ!』

 

 

 堅いといっても、あくまでそれだけ。

 スライムやスピリットのように完全物理無効でもなければ、逆に鯨みたいに無限に再生するわけでもない。

 スピードを乗せただけの、純粋物理攻撃で削れる相手。

 このまま跳び回り続ければ、いずれ押し切れるが……ある程度倒したら適当なところで引かないとSPやMPきついな。

 思ってた以上に硬い。

 あ、一体倒せたいっちょ上がり!

 ドロップアイテムを、《豊穣なる伝い手》で回収しつつ、跳躍を継続。

 こいつらが遠距離攻撃を仕掛けてくる気配はないし……あとは。

 

 

『おい変態!サポートしろお!』

「やれやれ、人使い、もとい腰使いが荒いねえ……。ああ!激しいいいいいいい!「ーー《マジック・リジェネレート》」」

 

 

 

 アンダーマテリアルが、下ネタと同時に放ったのは、MP継続回復のバフ。

 というか、今のセリフ顔と腹がつぶれてたから、両手の口で言ってたんだよな。

 眼球も潰れてるはずだが……さては大方どっかに増やしてるな?

 別に人のビルドに口を出す気はないし、否定もしない。

 ましてや、それが強いのであれば、なおさらだ。

 なのだが……こいつに限ってはどうにも嫌悪感が先に立つ。

 

 

 因みにそれをアンダーマテリアルに言ったら、「つまり、私は特別ってことだねえ!」とかなんとか言ってた。

 聞かないし、聴かないし、効かないのがよくわかる。

 

 

「サンラクくうん」

『あ?』

「まずいよお」

 

 おや、蠍の様子が……なになに、岩食って回復してますねえ。

 まずくね?

 

 【ロックライク・スコーピオン】。

 岩のような(・・・)蠍、じゃない。

 岩のような蠍だけじゃない。

 岩が好物の蠍だったんだ。

 通常、蟲に再生能力はない。

 そして、それはこの<Infinite Dendrogram>においても同じこと。

 口角が硬く繁殖能力が高い代わりに、再生力が極端に低く、あっさりと死んでしまうのがデンドロのワームだ。

 あるいは、そうでなくては繁殖しすぎてこの世がワームで埋め尽くされてしまうからかもしれない。

 そう、間違いなく埋め尽くされる。

 さすがに削り切れない。

 

 

『これは押しきれないな』

 

 

 撤退する外ない。

 そう思った時。

 ーー風が吹いた。

 金色の風が、蠍を圧倒的な速度でなぎ倒し、切り飛ばし、貫く。

 光の塵が、量産されていく。

 

 

『――っ』

 

 

 

 風だと思ったのは、金色の刃だった。

 必殺スキルを使っていない俺と同速か、あるいはわずかに遅い程度の速度で動く。

 だが、それより異常なのはその強度だ。

 END換算にして5000を超えているはずの、蠍たちの甲殻。

 それらに幾度となくぶつかってもなお、傷一つない。

 うわさに聞く古代伝説級武具と同等か、あるいはそれ以上の強度。

 それがはるか遠くから伸びている。

 そして、そんな金爪が岩のように堅く、硬い蠍の甲殻を穿ち、斬断していく。

 【符】が設置されている腕からは、熱戦らしきものが放たれており、それもまた光の塵とドロップを量産する。

 これができるのは、戦闘系の超級職か、あるいは……。

 

 

「金色の腕、炎熱魔法、黄河……なるほどねえ」

『知っているのか?』

「まあ、ねえ」

 

 

 足を伸ばして、ここまで来る。

 それは、一人の人物だった。

 アンデッドと思われる青白い肌。

 顔全体を覆う白い札。

 ギザギザの歯が生えた口。

 今まで、俺が出会ってきた面子を思い出す。

 着ぐるみ、半裸、緑の服と下面、半裸マッチョレスラー……そして

 俺と蠍の間に割って入ってきたソレは、

 

 

『あン、なんダ?お前人間カ?それともモンスターなのカ?』

『お前がそれ言うのか?』

「同感だねえ」

 

 

 全長四メートルの化け物キョンシーに言われたくないんだわ!

 

 

 

To be continued. 




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