2022年5月 Google コア アルゴリズム アップデートについて

Google は、2022年5月25日、コア アルゴリズム アップデートのリリースを発表しました。ロールアウトは6月9日まで続き、その間、検索結果にはさまざまなクエリで変動が見られました。このレポートは、このコア アルゴリズム アップデートについて、日本における日本語の検索結果に、どのようなジャンルで、どのような動きが見られたのかをまとめたものです。

定期的にリリースされるコア アルゴリズム アップデートに関して、インターネット上では数多くの情報が出回っていますが、誤解を生むような表現が多く、参考にはならないものが多くあります。誤った情報が過度に拡散されることを防ぐために、JADE では今回、コア アルゴリズム アップデートで何が起こっているかについて、弊社の見解を発表することとしました。この分析は、あくまで JADE が入手した情報に基づくものであり、Google 公式のものではありませんが、少しでも読者の参考になれば嬉しく思います。

今回のアップデートに特徴的な動き

  • コア アルゴリズム アップデートに典型的な動きとして、税金やニュース、健康など、YMYL カテゴリで大きな動きが観測されました。
  • 公的機関など、信頼性が高いと思われるにもかかわらず表示機会が下がるドメインが、特に YMYL 関連カテゴリでいくつか見受けられました。単純にランキングを落としたというものだけではなく、複数表示されていた検索結果がひとつに束ねられるなど、より多くのサイトが表示されるようになり、多様性が広がったクエリも観測されます。
  • かねてより問題視されていた、ドメインを悪用したサブディレクトリのサイトに、大きくランキングを下げたもの・主要クエリでもランキングを下げたものが観測されます。
  • Instagram や TikTok などのメディア SNS の表示回数が、カテゴリを横断して上昇しました。
  • サイト全体で、クエリを横断して落ちる・上がるというよりは、クエリの特性に応じて、上がるクエリ群、下がるクエリ群がそれぞれ見受けられました。細やかなクエリの粒度での調整が以前よりも目立つように思われます。
  • ランキングだけではなく、アップデートによってインデックス率に影響があるようなサイトが見受けられました。

大きく変動したカテゴリ

YMYL周りの動きが大きめです。ジャンル32分類中もっとも大きな変動観測がされたのが税関連情報、以下コンピュータ・テクノロジー、ニュース・メディア、健康、センシティブ関連と続きます。

確認できた変動の多いカテゴリ状況(5月25日と6月8日の比較)

  1. 税関連
  2. コンピュータ・テクノロジー
  3. ニュース・メディア
  4. 健康
  5. センシティブ
  6. 社会・コミュニティ
  7. 運送
  8. マーケティング・広告
  9. 法律・公共系情報
  10. ファイナンス

税関連

国税庁のサイトが大きく表示回数を減少させているのが特徴です。後述しますが、順位の低下ではなく、検索結果の多様性が高まっている傾向が確認できます。

コンピュータ・テクノロジー

大手キャリアサイトが下落、企業運用のメディアサイトが大きく上昇しました。

ニュース・メディア

選挙関連など知識系のクエリでWikipediaが大きく伸びている傾向です。

健康

大手総合情報サイトの大きな下落やWikipediaの上昇などを中心に各サイトで特に激しい動きが観測されます。

センシティブ

健康領域と同様Wikipediaが1位に表示される例が多く観測されました。メディアサイトの中には大きく表示回数を減少させたものも確認できます。

社会・コミュニティ

Wikipediaが上昇した反面、ジャンルの近いサイトが下落しました。

運送

日本郵便サイト (post.japanpost.jp) の表示回数が大きめに減少しました。

マーケティング・広告

オウンドメディア系のサイトが上下しました。リンクスパムを行っているサイトが上昇しているケースも確認できますが、おそらく一過性の順位と想定されます。

法律・公共系情報

公共機関等の住所クエリ等でタウン系サイトページが大きく下落しました。法律系サイトは指名検索等で表示される枠数が減少した動向もあります。

ファイナンス

多くのサイトで順位変動がありました。特徴として、コーポレートやサービスサイト配下にメディアサイトを運用していたサイトなどがあります。その中には事業と無関係なメディアを運用していたサイトも多く観測されました。

大きく変動したドメイン例や傾向

ここからは、今回のアップデートで大きく変動したドメインの動向や事例を紹介します。

ドメインの中でもジャンルやカテゴリなどで上下した例

  • ドメイン全体で上がっていても特定のカテゴリで下落しているものがあります。
  • カテゴリ以外にも特定のディレクトリ、特定のクエリ群などで細かな違いがあり、ジャンルやクエリに対してのマッチ度が精査されている動きがあります。

(例1) ホスト単位で大きく伸ばしている大手通販サイトですが、ジャンル別に見るとAdultカテゴリでは下落傾向にあります。画像は大手アダルト通販サイトとの比較です。

(例2) Arts & Entertainment ジャンルの大手通販サイトの動きです。検索ページの表示回数が大きく下がっている一方、別サブドメインが入れ替わるように上昇しています。

 

表示枠数が減少した例

  • 税関連のクエリで国税庁(www.nta.go.jp)のドメインが大きく表示回数を落としていますが、単純にランキングを下げたというものは観測している範囲では多くありません。特定のクエリで国税庁のドメインが複数件表示されたものが減少しているという傾向にあり、他のジャンルでも同様の傾向が観測されるものがありました。
  • こうした、1つのサイトが検索結果を独占していたが、そのサイトの枠が減少したことから他のサイトが表示されやすくなった、といったケースもあります。

クエリとの関連性調整が起こった例

  • またコンピュータ関連のクエリ群(回線など)では大手キャリアのドメインが大きく下がり、メディアのサイトが大きく上昇している傾向も見受けられます。クエリの中には特定ドメインと強く結び付けられすぎたものが調整され、結果としてランキングを落としたものが確認できます。

サブディレクトリハックの対処がなされた例

  • ドメイン配下にアフィリエイトサイトの差し込みなどを行っているサイトの下落が観測されます。ただしまだ一部に限られます。
  • 確認した範囲では特に美容系のジャンルに顕著な傾向がありました。

 

サブディレクトリハック例

サイト ジャンル VisibilityScore前後比
クリニックA 健康 35.3%
クリニックB 健康 59.1%
クリニックC 美容 56.9%
クリニックD 美容 66.3%
クリニックE 健康 61.8%
コーポレートサイト 美容 57.1%

 

  • 特徴的な傾向としては、サブディレクトリのアフィリエイトのクエリが下落しただけではなく、本体のクリニックサイトのクエリも下落傾向にありました。
  • 下記はクリニックDの表示回数の動向。アフィリエイトサイトの下落と同時に本サイトで作成されていたコンテンツのランキングも下落しています。

  • 下記はクリニックBの表示回数の動向。アフィリエイトサイトの下落と同時に「地名 × XX科」などの主要クエリでもランキングを落としています。

Instagram / TikTok が伸びた例

  • Instagramの台頭が、多くのジャンルで観測されました。
  • 計測範囲では、ハッシュタグページの伸びが顕著です。

 

「大川 ランチ」



「前髪 インナー カラー」



  • Instagramよりはやや弱めだがTikTokも伸びている傾向が観測されました。



Google コアアルゴリズムアップデートとは?

コア アルゴリズム アップデート(Core Algorithm Update、CAU)は、Google が定期的に実施する、アルゴリズムの更新です。主にサイト単位での品質・権威性の再計算を行うために発生します。主にサイト単位・ドメイン単位で影響があり、URLごとではなく、サイト全体に対して影響があることがほとんどです。また、性質によって、影響の大きいクエリ群と、そうではないクエリ群があります。大半のサイトには大きな影響はありませんが、一部、再評価によってスコアが大きく変化し、大幅な上昇・下降を示すものがあります。

毎週なにかの新しいアップデートを Google は実施しています。そのほとんどは公表されませんが、その影響範囲の広さと、影響がある場合のインパクトの大きさから、コアアルゴリズムアップデートが実施された際は、Google から発表を行うことが慣習となっています。

このアップデートに関するGoogle からの発信としては、「Google のコア アップデートについてサイト所有者が知っておくべきこと」というブログ記事があります。その他の資料としては、渡辺隆広氏による「Google コアアップデートの読み解き方」という書籍が参考になります。

YMYL について

YMYL(Your Money & Your Life)は、Google が独自の検索品質評価者ガイドラインの中で提示しているもので、個人の幸福・健康・財政・安全などに関わるトピックやページのことです。ニュース、法律、ファイナンス、ショッピング、健康、医学、差別などのトピックが関わってきます。こういった、特にセンシティブと Google がみなしたトピックやページに関しては、権威性のあるサイトがより重視され、コアアルゴリズムアップデートの影響が強く現れる傾向にあります。

E-A-T について

E-A-T(Expertise-Authoritativeness-Trustworthiness)は、Google が独自の検索品質評価者ガイドラインの中で提示しているもので、「専門性・権威性・信頼性」の略です。その名の通り、検索結果を評価する際、その中のサイトがどれくらい専門性や権威性、信頼性があるのかを評価する基準になっています。

しばしば誤解されていますが、E-A-T そのものはランキングシグナルではありません。これはあくまで検索品質評価者が作られた検索結果を評価する際に利用するものです。専門性の高いサイトであることは重要ですが、それが直接的にアルゴリズムによって評価されるわけではありません。

この分析について

データについて

  • 各カテゴリでクエリセットを生成し、定常的に一定数のクエリ(十数万種)をモニタリングしています。
  • 順位については日々細やかな変動があります。Google 全体の動きを把握しているわけではなく、正確性を保証するものではありません。単に一部分のクエリをベースにしたトレンドの観測として捉えてください。

表示回数スコアについて

  • クエリにおける順位をベースに、重み付けした数値を合計することで、計測クエリセットにおけるホストの見つけられやすさをスコア化しています。