この本は自分でも驚くほどの興奮をもって、一度開いたらほとんど止めることもできず、一気に(といっても数度に分けて読みましたが)読み切ってしまいました。文章が恐ろしく平易に書かれていて、その点にまず驚嘆しました。これは佐藤勝彦教授の類稀なる才能によるものなのかと思って舌を巻いていましたが、最後の方で実は彼は監修者に過ぎない、つまり誰か他の人間が書いたものにOKを出したに過ぎない(有名教授の名前で出したほうが本が売れる!)、ということが判明しました。PHPの編集者か、ほかのライターが執筆したもののようです。
驚いたというのは、このような一般人の視点にまで降り立った文章というのは、その道の専門家にとっては非常に書くのが難しいというのを、私自身も科学者の端くれとして知っているからです。科学者が日常使っている専門用語や数式をほとんど封じられてしまい、失語症のような状態で難しい概念を説明しなければいけません。誰が書いたにせよ、素人に理解できる文章を書くという点では本書は稀に見るほどの成功例だと思います。
なんとなく量子論のことが気になってはいたが、どうも全体像がつかめない、一体どんな話なんだろう、と疑問に思っているような人には最適の入門書でしょう。また、数式などは本当の最小限にしか出てこないものの、むしろそれによって興味を引くようなところもあり、これから物理を勉強しようという若者にもよいかもしれません。
以下は本のレビューというより、本書を読んでの個人的な(非常識な)考察です。
量子論については、以前からスピリチュアルやオカルトの方面で色んな人がしたり顔に「現代の量子力学でも同じように言われている」、というような言い方で紹介されているのを頻繁に耳にしたり読んだりしてきました。でもそういうあんたは物理を理解しているのかな?物理学者の仕事を無理やり自分に都合の良いように曲解して伝えているのでは?という疑念がずっと残っていました。
レビューワーの私は生物系科学者ですが、残念ながら物理学については素養がまったくないド素人。いっぽうで、スピリチュアルやオカルトといわれる分野の話をかなり広く受け入れてしまっている変人です。物理学とは縁のなさそう人たちが振り回す「量子力学」は本当に量子力学なのか?という問題意識が始まりでした。
「この世は仮想現実であることを示す証明式」というYouTubeの動画がありますが、これがあまりにも良く出来ていて、物理の素養なき私には正直うまい反論が思いつきませんでした。これは二重スリット実験における観測者効果(観測される前までは波動として振る舞っている電子や光子が、観測されたときには粒子として振る舞う)を、CGにおいて、プレーヤーがその場面を見るまでは細かい絵をいちいち描かずに「絵の可能性」としてほったらかしにしてあるが、プレーヤーが見ているときだけはその場面の絵を緻密に描くという計算量節約のトリックと類似していると指摘して、そもそもこの世が仮想現実世界なのではないかと問題提起しているものです。
正直な所、これをもうちょっと検証してみたいというのが量子論について読んでみたいと思った動機です。まじめな物理の徒からすればあまりにも不純かもしれません。
またこの動画の続編では、本書でも扱うEPRパラドックス(スピンしていない一つの粒子が壊れて2つになり、互いが1光年離れたときに片方だけを観察するとその瞬間にその片方のスピンの向きが確定されるが、同時に一光年離れた場所のもう片方が反対向きにスピンすることも確定され、「情報」が瞬時に一光年を超えて伝わってしまうというパラドックス。後に実験で実際にそうなっていることが確認。)さえも、仮想現実世界の中では時間や空間そのものが仮想なので容易に実現できてしまうじゃないかと指摘しています。。
話が飛躍しますが、仏教の般若心経で有名な「空」の概念、「色即是空空即是色」(実体のあるものはであり、空とは実体のあるものだ)とか「不生不滅」(生まれたり死んだりということはない)、というものも、この世の現実だと思っているものすべては「空」=仮想現実世界だよ、と解釈すると意味が通ってしまいます。
このような考え方は広い意味ではシミュレーテッドリアリティ仮説という哲学になるようですが、量子論の超入門書たる本書は、この問題について、答えてくれるのでしょうか。
本書ではシミュレーテッドリアリティ仮説そのものは取り上げられていないので、その意味では直接答えは出ていないのですが、関連するような幾つかのことは確認できました。
本書によれば、他ならぬアインシュタインの言葉として『量子論の言い分が正しいのであれば、月は我々が「見た」からそこにあり、我々が見ていないときにはそこにはいないことになる。これは絶対に間違っていて、我々が見ていないときも、月は変わらずに同じ場所にあるはずだ』というのがあるそうです。見ていないときには月がそこにないというのは、まさしくプレーヤーが見ていないときには月は描画されない=そこにはいない、というCGの比喩と同じことだと思いました。
また量子論の生みの親であるボーアは、中国の伝統で陰陽を象徴する太極図を好んで使用していたいことも紹介されていました。太極図というのも奥深いシンボリズムがあるようですが、単に陰と陽の二元性を白と黒で表すだけであればあのような形を取る必要はなかったわけで、陰と陽が統合された一元論的な世界をむしろ象徴しているという見方があります。本書の説明によるとボーアが太極図を好んだのも同じ一元論的な自然観からのようです。
ミクロの世界の振る舞いを説明する量子論とマクロの世界との関係を考えるための、「シュレーディンガーの猫」という有名な思考実験が本書でも紹介されています。50%の確立で発生する原子核崩壊によって箱の中の猫の生死が決定されるが、箱の外からは直接生死が確認できないという状況において、箱を開ける前の猫には「50%の生きている状態と50%の死んでいる状態とが重なり合っている」と量子論(コペンハーゲン解釈)では考える。
この奇妙な解釈を回避するために出てきたのが「多世界解釈」という文字通り無数の並行宇宙が瞬時に生成されるというアイデアだそうです。これによれば、箱の中の猫が死んでいる宇宙と生きている宇宙とが分岐しており、そのどちらに観察者がいるのかという確率が50%であると。
この考えは突飛すぎて現在でも主流ではないそうですが、この多世界解釈(プリンストン大学のエベレットという大学院生が1957年に唱えた学説)について、少なくとも本書の説明から受ける印象は、スピリチュアル分野で言われているような話と全く同じ印象でした。
とりわけ、エササニ星人バシャールがチャネリングを通して語る宇宙論(VOICEから多数本が出ています)では、連続時間というのものは幻想で、映画のコマのような離散時間となっており、過去と未来のあらゆる可能性がひとつひとつの映画のコマとしてすべて現在に揃えられているが、そのうち波動の近いものが次から次へと選ばれて、我々は無数の並行宇宙の間を超高速でジャンプしているのだと言います。多世界解釈の一つと言えそうに思います。
この多世界解釈とか並行宇宙とか映画のコマ、というのも、仮想現実世界の喩えとはよく馴染むのです。現在のテクノロジーの仮想現実(わかりやすいのはコンピュータ・ゲーム)においても、ゲーム内の時間というのは、有って無いようなものです。実際はいろんなキャラクターやモノの動きの可能性がプログラムされていて(確率分布が広がっているイメージですが、シナリオの数だけ、あるいは動きの可能性の数だけゲーム世界が複数存在しているとも考えられる)、その時々に描画されているだけです。
ともかく、こういう興味で読み始めたので、特に興味をそそられたのは、コンピュータの生みの親であるフォン・ノイマンが、『波の収縮は人間の意識の中で起こる』と提唱していたという話です。
波の収縮というのは、存在の確率分布が空間に広がった状態から、場所が決まるということですが、コペンハーゲン解釈ではミクロの世界を観測をすることで波動性が消えて粒子を帯びると言います。この観測者というのが、明らかに重要な役割を果たしています。これが実験に用いられる測定装置(通常光を用いて粒子を検出する)による物理的な影響がミクロの世界では無視できず、この装置によって「波の収縮」が生じる、という意味で捉えるのか、測定装置を動かしたとしても、人間の意識が観測しない限り波は波のままであり、意識こそが「波の収縮」を起こす観測者なのだ、とするのか。ノイマンははっきりと後者と結論したそうですが、「現在ではほぼ否定され」「波の収縮は、もしそれが起こるならば、人間の意識などではなく実際の物理現象の過程で発生しているだろうと考えるのが現在の通説」なのだそうです。
スピリチュアル分野で喧伝されているのは「意識」が観測者であるという見方であり、これが成立すれば物心二元論のジレンマを破る突破口になります。現在ほぼ否定されているとはいえ、ノイマンほどの人物がその考えを支持していたというのはとても興味深いと思いました。
一方でノイマンは「シュレーディンガー方程式によると波の収縮は起きない」ということを示しており、コペンハーゲン解釈の肝である「波の収縮」をどう扱うかという窮余の一策として後に登場したのが上の多世界解釈でした。多世界解釈を採用すると、はじめからいろんなパターンの宇宙をたくさん用意しておけば良いので、「波の収縮」を仮定しなくてもよいそうです。
ノイマンの説が否定されるようになった詳しい経緯(観測者とは実験機械の意味であると考えてよい実験的な裏付けがあるのかどうか)、多世界解釈と意識との関係、あるいは多世界解釈における意識の役割といった点についてもっと詳しく知りたいと思いました。
購入オプション
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる! (PHP文庫) Kindle版
- Kindle版 (電子書籍)
¥0 Kindle Unlimited 会員は、このタイトルを追加料金なし(¥0)で読み放題 ¥265 Kindle 価格 獲得ポイント: 3pt - 文庫
¥726
獲得ポイント: 33pt
素粒子のしくみから宇宙創生までを解明する鍵となる物理法則「量子論」。本書ではそのポイントを平易な文章と図解を駆使して徹底解説。
とても興味があるけれど、むずかしくて理解できない……そんな代表的なものが、アインシュタインが提唱した「相対性理論」だろう。ところが、現代物理学にはその相対性理論よりも難しく、奇妙で、なおかつとても面白い理論がある。それが「量子論」。
一番身近な例をあげると、最近はほとんどの人が持っている携帯電話やパソコンのもっとも重要な部品ともいえる半導体チップの中を支配している法則である。こればかりではなく、素粒子などのミクロの世界に適用されるもので、人などの遺伝子など生物の構造や進化、そしてマクロの極限である宇宙の創生までを解明するとされている。
本書は、その量子論のポイントが一目で理解できるように、図やイラストを多数使って初心者向けにわかりやすく解説した格好の入門書。最先端物理学の不思議な世界を手軽に味わうことができる。
監修は宇宙物理学を世界的にリードしている東京大学の佐藤勝彦教授。文庫書き下ろし。
とても興味があるけれど、むずかしくて理解できない……そんな代表的なものが、アインシュタインが提唱した「相対性理論」だろう。ところが、現代物理学にはその相対性理論よりも難しく、奇妙で、なおかつとても面白い理論がある。それが「量子論」。
一番身近な例をあげると、最近はほとんどの人が持っている携帯電話やパソコンのもっとも重要な部品ともいえる半導体チップの中を支配している法則である。こればかりではなく、素粒子などのミクロの世界に適用されるもので、人などの遺伝子など生物の構造や進化、そしてマクロの極限である宇宙の創生までを解明するとされている。
本書は、その量子論のポイントが一目で理解できるように、図やイラストを多数使って初心者向けにわかりやすく解説した格好の入門書。最先端物理学の不思議な世界を手軽に味わうことができる。
監修は宇宙物理学を世界的にリードしている東京大学の佐藤勝彦教授。文庫書き下ろし。
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2000/3/31
- ファイルサイズ3907 KB
商品の説明
出版社からのコメント
はじめに
序章 量子論の世界へようこそ――天才科学者二人と猫による「量子論超特急」
世紀の対談の幕開け
現代物理学を支える量子論
量子論はミクロの物質を「波」と考える
1章 量子の誕生――量子論前夜
光の正体をめぐる歴史
光のエネルギーは「とびとび」の値を示す
光の正体は粒だったのか?
2章 原子の中の世界へ――前期量子論
原子の構造を探る
電子にもあった「とびとび」の制約
3章 見ようとすると見えない波――量子論の完成
電子を波と考える
シュレーディンガー方程式の誕生
波動関数の確率解釈
4章 自然の本当の姿を求めて――量子論の本質に迫る
電子は「二つの顔」を持つ
不確定性原理
月は見たときにだけあるのか?
5章 枝分かれしていく世界――解釈問題を追う
シュレーディンガーの猫
多世界解釈
6章 究極の理論へ向けて――量子論が切り開く世界
さまざまな現象を解き明かす量子論
量子論の発展と将来 --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
序章 量子論の世界へようこそ――天才科学者二人と猫による「量子論超特急」
世紀の対談の幕開け
現代物理学を支える量子論
量子論はミクロの物質を「波」と考える
1章 量子の誕生――量子論前夜
光の正体をめぐる歴史
光のエネルギーは「とびとび」の値を示す
光の正体は粒だったのか?
2章 原子の中の世界へ――前期量子論
原子の構造を探る
電子にもあった「とびとび」の制約
3章 見ようとすると見えない波――量子論の完成
電子を波と考える
シュレーディンガー方程式の誕生
波動関数の確率解釈
4章 自然の本当の姿を求めて――量子論の本質に迫る
電子は「二つの顔」を持つ
不確定性原理
月は見たときにだけあるのか?
5章 枝分かれしていく世界――解釈問題を追う
シュレーディンガーの猫
多世界解釈
6章 究極の理論へ向けて――量子論が切り開く世界
さまざまな現象を解き明かす量子論
量子論の発展と将来 --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
相対性理論とともに、現代物理学のもう一つの柱といえる「量子論」。人間の構造・進化から宇宙のはじまりまで、あらゆる現象を解明するとされるこの物理法則は、我々に未知の世界を垣間見せてくれる。本書は、難解とされる量子論のポイントが一目で理解できるよう図やイラストを多数使って初心者向けにわかりやすく解説。最先端物理学の世界が手軽に味わえる画期的な入門書。 --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者について
登録情報
- ASIN : B0089H281U
- 出版社 : PHP研究所 (2000/3/31)
- 発売日 : 2000/3/31
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 3907 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 230ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,921位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 7位物理学 (Kindleストア)
- - 7位PHP文庫
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
この本を読んだ購入者はこれも読んでいます
ページ: 1 / 9 最初に戻るページ: 1 / 9
ご意見、ご要望をいただき、ありがとうございます。
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.3
星5つ中の4.3
483 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
スポンサー
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2019年2月18日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
72人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2018年11月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「水面の波は水(これを媒質というらしい)が振動しているのだし、音は空気が粗密を繰り返している、では光も波だということらしいが、光は何が振動しているのかね。粒でもいいんだけどさ」という話を飲み会でしたところ、友人がこの本を薦めてくれました。今まで、この手の本を何冊も(と言ってもたかだか10冊くらいでしかないけれども)読んできましたが、一つとして(文系の)私の?に明快に答えてくれた本はなかったので、この本もどうかなあ、と思っていました。題名も「量子論」だし、、、、
で、読み始めたところ、おおお!!、何と48ページに「では、光の媒質は何でしょうか?」 「・・・・この理論(エネルギー量子仮説のこと)を推し進めて考えることで、先ほどの光の媒質は何か、という難題にも答えを出すことができたのです」とあります。数十年来の疑問が判明するか!? と、欣喜雀躍して読み進めました。
しかし、その後は量子論についての叙述が進むばかりで、上記の問いに対する回答は私には読み取れませんでした。著者は「ここに、こう書いたではないか」ということだと思うのですが、私の頭では理解できませんでした。残念。
当著作は読みごたえのある良書であると思います。
1)研究の経緯が歴史的に記述されています。先人の理論、学説を後続の研究者が取り入れ、修正し、触発され次々と新見解を発表してゆく様が記述されています。無から一発で結論に至ることはないのですね。多くの研究者の思考、実験、探求の積み重ねで、現在があるということですね。
2)解説を読み、「ははあ、では〇〇ということだな」と一人理解納得したと思った直後に、「〇〇ということではないのです」とガツンと来ます。ガッカリもしますが、なぜかうれしくもあります。だって、間違ってそう考えてしまいそうな素人さんがたくさんいるから、「そこ間違えないでね」、と著者が先回りして注意してくれているわけですから。自分と同じような人が大勢いるんだな、と思えてニヤッとしてしまいます。
3)光の媒質については、私には理解できませんでしたが、とにかく当著作は素人の読者を念頭に置いて書かれている、ということがひしひしと伝わってきます。ある項目を説明するのに、その前の前のも一つ前、くらいから説明してくれます。内容は私には分からないのですが、筋立ては理解できますので、納得感があります。
ところで、当著作には、監修者の名前はありますが、著者の名前が無いという不思議な本です。PHP文庫さん、有名人を表に出せば良い、とでも考えているのか、いただけませんね。
しかしこの著者は終盤で、強烈な自己主張をしています。「・・・・インフレーション理論(その提唱者の一人が本書監修者の佐藤勝彦教授です)は・・・・」ってね。ムフフ。著者頑張れ。
さて、次の本を探しましょう。友人にもお礼のメールを入れておこう。
で、読み始めたところ、おおお!!、何と48ページに「では、光の媒質は何でしょうか?」 「・・・・この理論(エネルギー量子仮説のこと)を推し進めて考えることで、先ほどの光の媒質は何か、という難題にも答えを出すことができたのです」とあります。数十年来の疑問が判明するか!? と、欣喜雀躍して読み進めました。
しかし、その後は量子論についての叙述が進むばかりで、上記の問いに対する回答は私には読み取れませんでした。著者は「ここに、こう書いたではないか」ということだと思うのですが、私の頭では理解できませんでした。残念。
当著作は読みごたえのある良書であると思います。
1)研究の経緯が歴史的に記述されています。先人の理論、学説を後続の研究者が取り入れ、修正し、触発され次々と新見解を発表してゆく様が記述されています。無から一発で結論に至ることはないのですね。多くの研究者の思考、実験、探求の積み重ねで、現在があるということですね。
2)解説を読み、「ははあ、では〇〇ということだな」と一人理解納得したと思った直後に、「〇〇ということではないのです」とガツンと来ます。ガッカリもしますが、なぜかうれしくもあります。だって、間違ってそう考えてしまいそうな素人さんがたくさんいるから、「そこ間違えないでね」、と著者が先回りして注意してくれているわけですから。自分と同じような人が大勢いるんだな、と思えてニヤッとしてしまいます。
3)光の媒質については、私には理解できませんでしたが、とにかく当著作は素人の読者を念頭に置いて書かれている、ということがひしひしと伝わってきます。ある項目を説明するのに、その前の前のも一つ前、くらいから説明してくれます。内容は私には分からないのですが、筋立ては理解できますので、納得感があります。
ところで、当著作には、監修者の名前はありますが、著者の名前が無いという不思議な本です。PHP文庫さん、有名人を表に出せば良い、とでも考えているのか、いただけませんね。
しかしこの著者は終盤で、強烈な自己主張をしています。「・・・・インフレーション理論(その提唱者の一人が本書監修者の佐藤勝彦教授です)は・・・・」ってね。ムフフ。著者頑張れ。
さて、次の本を探しましょう。友人にもお礼のメールを入れておこう。
2018年2月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
モーガンフリーマンの「時空を越えて」で、2重スリット実験と言う不思議な実験について紹介していたのですが、番組ではさらっとしか語っていなくて、詳しく知りたいなあと思って色々な書物を漁っていたらここへ行きつきました。
2重スリット実験について語った他の本やネットのブログでは、理系の大学も出てない私にはチンプンカンプンな話が多かったのですがこれは良かった。
思いの外2重スリット実験について徹底的に語っていて、大変分かり易かった。お薦めです。
2重スリット実験について語った他の本やネットのブログでは、理系の大学も出てない私にはチンプンカンプンな話が多かったのですがこれは良かった。
思いの外2重スリット実験について徹底的に語っていて、大変分かり易かった。お薦めです。
2019年10月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
量子論の概要を知りたくて購入しました。
関数や物理が分からない素人の僕でも、とても読みやすかったです。
勉強になりました。
ただ、理解するのが非常に難しかったので、何回も読み、インターネット
でも、色々調べました。
日常では経験できない考え方なので、敬遠されるのも分かる気がします。
その中でも、以下の4つの話が非常に面白かったです。
●相補性
=電子は「粒」と「波」の両方の性質を持つ。(粒が動いて波になって
いるのではない)
●重ね合わせ
=電子には重ね合わせが起こっている。つまり、電子がA地点にいる
状態とB地点にいる状態が1つの電子で起こっている。
●ミクロの世界では観測に影響が出る
=電子は「波」の性質を持つが、その状態を観測できない。観測する
ためには、光を当てないといけないが、光を当てると電子の状態が
変わり、正確な状態ではなくなる。
●不確定性(原理)
=電子は1つでありながら「波」の性質を持つ。
つまり、位置を決めようとすると速度に無限の可能性がでる。
逆に、速度を決めようとすると位置に無限の可能性がでる。
量子論の概要をつかむには、おすすめの入門書でした。
興味のある方はぜひ一度読んでみてください。
関数や物理が分からない素人の僕でも、とても読みやすかったです。
勉強になりました。
ただ、理解するのが非常に難しかったので、何回も読み、インターネット
でも、色々調べました。
日常では経験できない考え方なので、敬遠されるのも分かる気がします。
その中でも、以下の4つの話が非常に面白かったです。
●相補性
=電子は「粒」と「波」の両方の性質を持つ。(粒が動いて波になって
いるのではない)
●重ね合わせ
=電子には重ね合わせが起こっている。つまり、電子がA地点にいる
状態とB地点にいる状態が1つの電子で起こっている。
●ミクロの世界では観測に影響が出る
=電子は「波」の性質を持つが、その状態を観測できない。観測する
ためには、光を当てないといけないが、光を当てると電子の状態が
変わり、正確な状態ではなくなる。
●不確定性(原理)
=電子は1つでありながら「波」の性質を持つ。
つまり、位置を決めようとすると速度に無限の可能性がでる。
逆に、速度を決めようとすると位置に無限の可能性がでる。
量子論の概要をつかむには、おすすめの入門書でした。
興味のある方はぜひ一度読んでみてください。
2018年5月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
量子論ってこんなに面白いんだと、びっくりしました。本書の一番いいところは、私が以前からわかっていると思い込んでいて、理解していないようなところには必ず点線が引いてあるところです。みんな間違って理解しているのだと納得してしまいました。
「電子の位置はどこか一カ所に決まっているが、私たちはその場所を確率的にしか推定できない」という意味ではありません。電子の位置は、まるでサイコロを振ってその目に応じて電子の勝っ澗場所が決まるように、確率的(いわば偶然の要素で)決定されるのだ」という部分に感激しました。
不確定性原理のところで、Δx・Δp≧hの式は直感的に私に訴えかけてきておもしろかったです。「たとえば原子の中の電子が、ある時刻において「どこにいてどんな速度で動いている」のかを正確に喜寿的無くなるのです」という記述とこの式を対比して感激しました。「位置と運動量は同時に確定できない」の図は眺めているだけで考えさせられます。
究極の理論に向けてのところは「液体ヘリウムの超流動」に大きな刺激を受けました。真空と反電子の話も面白ですが、トンネル効果の説明も興味深いです。最近量子計算においてもトンネル効果があると聞いておおきな感動を受けました。
「電子の位置はどこか一カ所に決まっているが、私たちはその場所を確率的にしか推定できない」という意味ではありません。電子の位置は、まるでサイコロを振ってその目に応じて電子の勝っ澗場所が決まるように、確率的(いわば偶然の要素で)決定されるのだ」という部分に感激しました。
不確定性原理のところで、Δx・Δp≧hの式は直感的に私に訴えかけてきておもしろかったです。「たとえば原子の中の電子が、ある時刻において「どこにいてどんな速度で動いている」のかを正確に喜寿的無くなるのです」という記述とこの式を対比して感激しました。「位置と運動量は同時に確定できない」の図は眺めているだけで考えさせられます。
究極の理論に向けてのところは「液体ヘリウムの超流動」に大きな刺激を受けました。真空と反電子の話も面白ですが、トンネル効果の説明も興味深いです。最近量子計算においてもトンネル効果があると聞いておおきな感動を受けました。