よく、ピアノは小さい頃から始めないといけないという話を聞きます。
ある程度大きくなったお子さんや、大人の人が、ピアノを始めようとすると、「今から始めてもプロになれるわけじゃないんだから、やめればいいのに」などと心無いことを言う人がいるようです。
一方で、小さい頃からお子さんにピアノを習わせている親御さんの中には、「あわよくば、うちの子を将来プロのピアニストにするぞ!」と燃えていらっしゃる方もいらっしゃるようです。
どちらにも共通しているのは、「ピアノを習うなら、プロになるか、プロと同程度に弾けなければ無駄である」という考え方です。
そして、この考え方こそが、ピアノを習う人が劣等感を抱き、練習することを辛いと思ってしまう要因ではないかな、と思います。
教える立場から本音を言わせていただきますと、実におかしな話だと思っています。
例えば、スポーツを大人になって始める人はたくさんいますが、誰も「プロのアスリートになれるわけじゃないんだから、やめればいいのに」なんて言いませんよね?
それは、体育の授業や部活動などで走ったり競技をしてみた経験を通して、アスリートになるような人達は、次元の違う身体能力を持っていて、子供のうちから同じように努力をしても到底及ばない存在であることを、よく知っているからですよね。
だから、凡人は趣味として楽しむのが普通のことであるというのが一般的な認識としてあるのだと思います。
では、なぜ同じ認識を、ピアノを習う人に持てないんでしょうか?
それはおそらく、音楽という分野が、スポーツのように、“誰にでも分かりやすい形”で結果が見えるものではないから、だと思います。
スポーツであれば、勝ったか負けたかは数字で出るので、結果は誰にでも分かります。
音楽はというと、学んだことがない人には、音を間違えずに弾くとか、指が速く動くとか、その程度のことしか分からないわけです。
そこから先の話が分かるためには、耳を澄まして音を聴き、音楽を表現する経験が必要になります。
つまり、音楽が理解できるかどうかは、教養の差だと言えるわけです。
さて、これを踏まえて話を戻しますと「ピアノを習うなら、プロになるか、プロと同程度に弾けなければ無駄である」というのは、音楽を理解していない考え方だとお分かり頂けると思います。
ですから、これから音楽を学ぶ人は、このような無教養な考え方とは決別すべきなのです。
ピアノは、何歳から始めたとしても、引け目を感じる必要はないですし、お子さんにピアノを習わせる親御さん方も、焦る必要は全くありません。
どの年齢で何の曲をやっているかでマウントを取り合うのは、もう、止めにしましょう。
それよりも、今やっている曲を、いかに素敵に弾くかに注力した方が、はるかに得るものは大きいです。
ピアノを習うことは、何にも、間に合わせる必要はありません。
これが今日の結論です。
人生を豊かにする趣味として、誰もがピアノを楽しめるようになれば良いなと心から願っています。
ではまた