<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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お久しぶりです。
何とか更新していきます。
よろしくお願いします。

今回は短めです。


暁 其の一

 □【猛牛闘士】サンラク

 

 

 敗れた。

 負けた。

 また負けた。

 ……【ブローチ】があれば、などというのは言い訳にすらならない。

 あれは、あくまで野試合。

 本来なら闘技場などで

 いつどこから横やりが入ったとしてもおかしくない状況であり、実際【伏姫】の奇襲を受けた。

 そして、【ブローチ】を失い、カシミヤに遭遇した。

 そのうえで、一騎打ちを行い、俺は負けた。

 俺の牙はカシミヤを殺すには至らなかったし、奴の刃は俺の首を刎ねた。

 それは紛れもない事実だ。

 

 

 しかし。

 それでも。

 俺が得たものは、確かにあった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

『――というわけで、今日は【修羅王】に挑む』

「任せてえ、君がビンビンになるように手取り足取りナニ取りでサポートするからさあ」

 

 

 とりあえず、顔面に右フック一発。

 お、いいのが入った。

 ちなみにストレートはダメだ。

 鼻に当たると、鼻血で手が汚れるから。

 さらにこの変態から「あなたのテクすごおい、君の右手が私の体液でぐしょぐしょだねえ」などと最低の下ネタを聞かされるおまけ付きだ。

 いつだってこいつは俺の中の最低ラインを更新し続ける……!

 なぜか恍惚とした表情でゴロゴロとアンダーワールドの中を動いているが無視。

 あ、壁にぶつかった。

 いや本当に何してるんだよ。

 幼稚園児かな?あれくらいの年の子は下ネタ好きと聞くし、納得ではあるかもしれない。

 いや納得できねえよ。

 ふざけんなよ。

 そんなディープな下ネタ言う幼稚園児がいるか。

 

 

『じゃあ、行って来るわ』

 

 

 

 そんなことを言って、ウィンドウを操作してから眼を開けると、なるほど、前回と同じ蒼い世界だ。

 同じ場所、俺の正面に【修羅王】イオリ・アキツキがいるのも同じ。

 違うのは、俺の方。

 手段を選ばず、こいつに勝つための対策を立てた。

 そう、だから、もう一つ前回と違えるべきものがある。

 

 

 

『決着といこうぜイオリ・アキツキ!《風神乱舞(ケツァルコアトル)》!』

「ーー《朧月夜》」

 

 

 結果は前回と同じではない。

 さっさとぶっ飛ばして、【修羅王(キング・オブ・バトル)】の座を襲名させてもらうぜ!道場破りじゃー!

 

 

 

 

 □■天地・<修羅の谷底>

 

 

「さあて、サンラク君は試練に挑む頃かあ」

 

 

 試練に挑み、異空間に消えていったサンラクを見送った後、アンダーマテリアルはポーションを飲みながらひとりごちる。

「行ってらっしゃいあなた、帰ってきたらご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?」という発言を試練開始直前にしたことで殴られた傷をポーションで直していた。

 

 

 

「ダメだった場合は、まだ放置しておくとして……問題は無事サンラク君が突破した場合だねえ」

 

 

 【生命王】アンダーマテリアルは、基本的にはサンラクの味方である。

 サンラクが彼女をどう思っているかはさておき、全力で彼が超級職に就くことをサポートするつもりである。

 今までの行動だけを見れば、転職できるクリスタルまでの案内、条件達成の協力、その他のサポートなどなど、彼女が尽くす女だと言えた。

 ただしそれは。

 

 

 

「できれば早く、アレ(・・)とサンラク君をぶつけてしまいたい」

 

 

 彼女が、彼のために行動していることを意味しない。

 彼の都合のいい存在になりたい、彼に尽くしたいという想いも、それはあくまで彼女自身の願い(エゴ)でしかないから。

 

 

 アンダーマテリアルの左手には、紙の束が握られている。

 それは、【修羅王】について調べる過程で、彼女が手にした情報。

 【修羅王】とは全く関係のない情報。

 

 

「闘技場の結界と違って、【修羅王】の転職クエストでは死んだらそのままデスペナルティになる。当然、生き残ってもダメージを負えばそれもそのまま残るわけだ」

 

 

 熱のこもった声で、独り自分の思考を垂れ流している。

 

 

 彼女は、杖を取り上げる。

 それは、【機杖威 ベビードール】という名の特典武具。

 ここ、<修羅の谷底>にて、守護者として君臨していた<UBM>。

 それは、《進撃の守護者》という名のスキルにも表れている。

 では。

 であるならば、その守護者は。

 一体何を守っているというのか。

 

 

 

 アンダーマテリアルの左手にある古い書類。

 【修羅王】への転職条件を探すたまにあちこち駆けずり回った挙句、

 それには、とあるモンスターの情報が書かれている。

書かれているのはソレのカタログスペックと、黄金の龍(・・・・)のような見た目。

 そしてーー所在。

 場所は、<修羅の谷底>。

 

 

 

神話の災厄(・・・・・)、さあて、サンラク君はこれを見たときどうするのかな、何を私に見せてくれるかなあ?」

 

 

 

 独りよがりの怪人は、笑って、嗤って、わらって、笑う。

 彼女の願いが成就するかどうかは、未だわからない。

 

 

 ◇

 

 

 そして、もう一つ。

 全く別の勢力によって、サンラクも、アンダーマテリアルにも予想できない事態が、起ころうとしていた。

 

 

 ◇

 

 

 

「もうすぐ着きますね!<修羅の谷底>!」

「そうだなあ。トーサツ、見つかりそうか?」

「敵性生物は確認できず。太腿、よし」

「後半は訊いてないんだよねえ」

 

 

 To be continued




次回は明日です。
基本的にはまた週二に戻していきます。

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