<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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先にこっちからやります。

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前話を若干修正してます。


骨喰と不定

 □■征都周辺・狩場

 

 

『おおお!』

「っ」

 

 

 

 アンダーマテリアルと、【伏姫】狼桜の戦い。

 それを端的に言えば、片方の防戦一方の一言に尽きる。

 その片方とは、言うまでもなく。

 アンダーマテリアルの方であった。

 

 

 

『はっはああ!』

「やっば」

「「《ダーク・ブレード》」」

 

 

 アンダーマテリアルは、両手の口ーー【生命王】のスキルで自らに改造を施した結果ーーによって耐久力を無視して攻撃する魔法スキルを宣言。

 同時、MPが魔法という現象へと変換され、黒い大剣が二本、狼桜へと射出される。

 それは、速度型ビルドである狼桜のHPを大幅に削り、致命傷を与えるだろう。

 ただしそれは。

 

 

『だからどうしたあ!』

「これも普通に、避けられるかあ」

 

 

 あくまで当たればこその話である。

 漆黒の刃は超音速機動で動く狼桜に躱される。

 さらに、その隙をついてアンダーマテリアルお手製のキメラが突貫する。

 一体一体が純竜クラス。

 それが、五体。

 たやすく超級職ですら押しつぶせるはずの戦力で、狼桜を囲み。

 

 

 

『はああああ!』

 

 

 

 それらが、狼桜によって文字通り吹き飛ばされる。

 それもスキルの類ではない。

 シンプルなステータス差、力の差で押し負けている。

 本来、ジョブとしての【伏姫】のSTRは決して高くない。

 奇襲時の火力は高く六桁のダメージをたたき出すが……逆に言えば初撃限りの奥義でも六桁の域を出ない。

 そしてそれ以上に、攻撃に比重を置いたジョブであるがゆえに耐久力が低い。

 だが、それはティアンの【伏姫】の話。

 <マスター>である今代の【伏姫】、今の彼女のSTRやENDは五桁に達する。

 それは、彼女の<エンブリオ>の必殺スキル、《兵どもが夢の跡(ガシャドクロ)》によるもの。

 耐久型の純竜クラスの髑髏を使用し、STRやENDは五桁、HPは六桁に達する。

 一見、ジョブと<エンブリオ>がシナジーしていなように思われるが、それは誤りだ。

 ジョブも<エンブリオ>も、純粋な強さを求めた結果。

 相手がどれほどいようとも、瞬間火力とステータスで道を切り開く。

 それが、”骨喰”。

 数多の生者を骨に変えてきた者の在り方である。

 ゆえに、そんな圧倒的強者に対して、アンダーマテリアルは攻め手を欠く。

 

 

 

(粘ればすぐに勝てるって思ってたんだけど、厳しいな)

 

 

 アンダーマテリアルの今の戦法は、魔法スキルでけん制しながら、キメラモンスターで押しつぶすというもの。

 それ自体は間違っていない。

 生産職である彼女のステータスは低く、それは彼女のジョブスキルで強化してもなお、前衛職の<マスター>に比べれば高いとは言えない。

 ゆえに、純竜クラス以上のモンスターを前に出す戦術こそが、最も彼女に適したものである。

 それが、成立していない。

 彼女の速度でも当てられるような光属性魔法は、彼女の防御力を抜けない。

 かといって、防御を突破できる闇属性魔法は超音速機動で回避され、牽制程度でしかない。

 さらにいえば、純竜クラスのキメラモンスターたちも彼女の前にはサンドバッグ以上になりえない。

 今の彼女はステータスだけ見れば古代伝説級の怪物。 

 《魔物強化》で強化されているとはいえ、純竜クラス程度では勝負にならない。

 

 

(さて、どうしたものか)

 

 

 アンダーマテリアルにとって、この場で生き残ること自体は容易だ。

 彼女本来の戦い方である個人生存型としての立ち回りをすれば、確実に勝てる。

 狼桜の必殺スキルには時間制限があり、テイムモンスターが通じずとも<エンブリオ>がある。

 自身はアンダーマテリアルの異空間に逃げ込んで粘ればそこまでひたすら粘り続ければ後はモンスターの波状攻撃で押し勝てる。

 

 

 しかし、今その戦法は取れない。

 その戦法ができるのはあくまで彼女が一人の時だけ、生き残るために戦う時だけだ。

 今この瞬間はできない。

 普段やっている個人生存型の立ち回りは彼女だけが生き残ることに特化しており、それでは狼桜の進撃を止められない。

 時間を稼ぐことができない。

 

 

 (おそらく、今頃は”断頭台”と鉢合わせているころだね)

 

 

 <兵どもが夢の跡>が武装しているこの状況。

 十中八九標的は”断頭台”カシミヤ。

 彼女たちが、自分達を打ち負かしたカシミヤに粘着しているのは有名な話。

 この場所は、”断頭台”がよく出没する場所であり、彼女たち以外にも彼と戦いたい<マスター>が出没する場所だ。

 最も、アンダーマテリアルたちもその目的で訪れたのだが。

 

 

(どれくらいかなあ、状況が動けば撤退するけど)

 

 

 アンダーマテリアルが狼桜を足止めしているのは、サンラクを守るためではない。

いや、

 カシミヤを消耗させないためだ。

 カシミヤは天地でも指折りの実力者ではあるが、唯一欠点がある。

 彼は、準<超級>の中でも指折りにスタミナがない(・・・・・・・)

 【抜刀神】というジョブはステータスがほとんど上昇しないため、彼のSPは低く、長時間の戦闘はできない。

 いかにカシミヤといえど、耐久型の外骨格を纏った今の狼桜は簡単には突破できない。

 SPの消耗を強いられてしまうのは目に見えている。

 

 

(消耗したカシミヤでは、サンラクくんにとって恐らく練習台にはならない)

 

 

 道中、先代【修羅王】についての情報はサンラクから聞いている。

 だからわかる。

 サンラクは、【修羅王】はカシミヤより強い(・・・・・・・・)と考えている。

 そして、彼がそう思っている以上、それは事実だ。

 それならば、万全のカシミヤで練習したいはずだ。

 だから何があっても、絶対にこの邪魔者の介入は阻止しなくてはならない。

 つまるところ、彼女の目標は狼桜の必殺スキルが切れるまでの時間稼ぎではなく――戦闘による障害物の排除である。

 

 

「これでいいかな」

 

 

 アンダーマテリアルが取り出したのは、一本の杖。

 白銀色であり、先端以外には特に装飾はない。

 先端には、手足の生えた卵のようなオブジェがついていた。

 基本的に、彼女は杖を使わない。

 彼女のスタイルの都合上、使う意味が少ないからだ。

 しかし、使わなくてはならないときがある。

 この杖を使わなくては、叶わない願望がある時。

 例えば、今がその時である。

 

 

「さあて、切り札切っちゃおうねえーー《進撃の守護者(ベビードール)》」

 

 

 彼女の手の中の、銀色の杖ーー【機杖威 ベビードール】が、ぼんやりと鈍く輝いて。

 それと同時。

 戦闘開始直後に、【ジョブクリスタル】を【生命王】からサブジョブへと切り替えていた【賢者(・・)】アンダーマテリアルによる、スキル宣言がもう一つ。

 

 

 

「ーー《モデル・チェンジ》」

 

 

 

 そのスキルの効果は――。

 

 

 To be continued




・《生体改造》
 命術師系統の基本スキル。
 生物を素材を用いて改造するスキル。
 ディプスロさんは口を増やしてます。
 あと、体全体も改造してるのでステータスもかなり高いです。


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