<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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4章は週二投稿目標で行きます。

日間ランキング32位いってたらしいです。

ありがとうございます。



ゲームの条件って、知らぬ間にクリアしてることそれなりにあるよね

 □【猛牛闘士】サンラク

 

 

 

「さあて、とりあえず【修羅王】になるまでのルートを説明しておくね」

『その情報ってそもそも確かなのか?』

「大丈夫だよお。全力であらゆる手を使ってこの私が調べた情報だからさ」

『お前の発言の八割は聞くにも値しないけどな』

「ひどおい!」

 

 

 

 お前の話す内容の二割に価値を見出してるだけ温情と思ってくれ。

 まあ実際、こいつの話は基本的に聞くに値しないんだが……こういう情報では手を抜かないのがこの変態の厄介なところだ。

 人間としては最悪なのに、プレイヤーとしては最高レベルに有能なのだ。

 ともかく、話をきかなければ始まらないか。

 

 

『まあいい。さっさと話せ』

「まったく、しょうがないなあ。サンラク君だけ、特別DA・ZO?」

『…………』

「待ってサンラク君、首はまずい。傷痍系状態異常で死ぬから」

 

 

 大丈夫だ問題ない。

 骨に当たる前に止めたからな。

 出血してるけどまあ大丈夫だろ。

 

 

「さてと、【修羅王】への転職には、大きく分けてツーステップあります。サンラク君、何かわかるかな?」

『転職条件のクリアと、転職クエストの達成、だろ?超級職はたいていそうだって聞いてる』

「正解。前戯を済ませないと、本番には入れないんだよねえ。マナーは大事」

『よし、喉を潰すか』

「なるほどディープスロートってことあぶふっ」

 

 

 ビンタ一発!

何でもかんでも下ネタに結び付けるんじゃないんよ。

 こいつほんとに大丈夫か?

 大丈夫じゃないな。

 もはや心配になってきた。

 

 

「【修羅王】の条件は三つ。一つ目は、ステータスの合計値が自身の三倍以上ある生物のソロ討伐数が百体以上。これは満たしているね」

『……そうだな』

 

 

 俺のステータス合計値は、低い。

 AGIこそ五桁だが、他のステータスは高くて四桁。

 低い火力をティック謹製の装備で補いながら、機動力であちこち動き回って蹂躙するのが俺の<Infinite Dendrogram>における基本的なスタイルとなっている。

 合計値で言えば、二万程度しかない。

 対して、モンスターなどは純竜級でも耐久型ならHPだけで六桁に達するものもいる。

 だからこの条件自体はさほど難しいものでもない。

 

 

「その二、三十種類以上の武技系スキルの熟練度が一定以上に達する」

『あー』

 

 

 そういえばそうかもしれない。

 何しろいろいろ使ってきてるからな。

 メインウェポンである双剣をはじめ、両手剣、弓矢、盾、斧、銃、打刀、槍、ガンランス、ショットランス、鎌、爪etc……。

 闘士系統がオールラウンダーなジョブであることや、腕のいい職人のつてがあることも手伝って、扱ってきた武器は数知れない。

 というか、なんで俺が把握していない俺のことをお前が把握してるんだ?

 やっぱり通報システムが存在してないのクソだと思うんだが。

 

 

 

「その三、ステータス合計値が自身の百倍以上(・・・・・・・)ある生物のソロ討伐」

『ええ……?』

 

 

 あ、これは満たしてないわ。

 というか、今後も達成できるか?

 今まで<UBM>も含めていろんなモンスターを相手にしてきた記憶がある。

 その中には、結局耐久が高すぎて削り切れなかったモンスターもいる。

 それでも、そんなやつ見たことない、と思うんだが。

 俺の百倍だから、ステータスの合計値が二百万以上。

 耐久特化の<UBM>でも、いるかどうかは怪しい。桁が違う。

 そして最大の問題は、仮にそんなモンスターがいたとして、俺の独力でどうにかなるのかということだ。

 

 

「そうだねえ、普通に考えれば、そんなモンスターはいないよねえ」

『……何か心当たりがあるのか?』

 

 

 ひょっとして、これから狩りに行くということだろうか。

 ここは天地。

 ひょっとするとそういうモンスターもいるのかもしれない。

 

 

「そうだねえ、まあサンラクがどうしても知りたいって言うのなら、お姉さんが優しく教えて」

『いいからさっさと話せ』

 

 

 お前はいちいち前置きが長いんだよ。

 下ネタを入れればいいってものではないのである。

 

 

「つれないなあ。まあ、それはともかく、《喚起》」

 

 

 ジュエルから呼び出されたのは、一体のモンスター。

 クリーム色の肌をしており、骨格は判然としない。

 眼球が1ダースほどあちこちに点在している。

 外見は、なんというかあれだな。

 でかい、馬鹿でかいツミレって感じだ。

 多分クジラよりでかい、超巨大眼球入り異形ツミレ。

 

『でっか』

「私の作ったキメラモンスターでねえ、HPに特化して造ったやつさ。ステータスの合計は三百万ってところかな」

『そんなの作れるのか、すごいな超級職』

「これでも、生物製造特化の超級職、【生命王】だからね。ほらほらもっと褒めてもいいんだよ、ワンワンハッハ」

『お座り!』

「キャイン!」

 

 

 ちょっと評価した直後に気持ち悪いこと言うことでマイナスに振り切れるのやめろ。

 後、変に犬の鳴き真似上手いのが腹立つ。

 いやほんとに座るのやめ―や。

 しゃがむな。土で汚れるだろ。

 デンドロって普通に汚れとかもつくんだよな。

 なぜかログアウトすると全部落ちるんだけど。

 

 

「うーん、できれば早く倒して欲しいかな」

『え、何?暴走するギミックでもあるの?』

 

 

 <Infinite Dendrogram>、時間経過で強くなる奴が多いイメージ。

 俺の《回遊する蛇神》の速度強化もそうだし、何ならフィガロの《生命の舞踏》は戦闘時間に比例して装備の性能を上げる。

 一回それで負けたんだよな。

 まあ、俺にとっては《武の選定》の方がきつかったりする。

半裸になられて、急激にAGI増加されて俺より速く動かれたらもうどうにもならんのよ。

 多機能と出力両立しているのは、普通にズルいよな。

 俺も大概ではあるんだけど、あくまで機動力に特化してるだけだからな。

 

 

「いやあ、とにかくステータスの合計値だけを意識して無茶な作り方しちゃったから……ただでさえキメラは脆くなりがちだし、ENDとか100切ってるんだよね」

『……それで?』

「だからたぶん後五分くらいほっとくと自壊が始まって十分ぐらいで死ぬ……」

『それを先に言え――!』

 

 

 《豊穣なる伝い手(アイビー・アームズ)》起動!

 武装展開!

 タイムアタックするときは心の準備が必要なんだよ!

 これ本当に削り切れるか?

 

 

『ツミレの処理はトラウマ案件ー!』

「何があったの?」

 

 

 簡潔に言うと全部父親が悪い。

 タイムアタックの結果、四分五十八秒。

 ティックの武具をあらかた使いまくってこれだよ。

 本当に危なかった。

 そして。

 

 

 

【ステータス合計値が自身の百倍のモンスターを単独で撃破しました】

【条件開放により【修羅王】への転職クエストが解放されました】

【詳細は、【修羅王】への転職可能なクリスタルでご確認ください】

 

 

 

 マジだったのか。

 いや、九分九厘マジだと思っていた。

 わずかに疑いはないでもなかったが。

 シャンフロでもそうだが、こいつは味方にすると強力極まりない。

 遺憾だが、大変遺憾だが、大変助けになる。

 とにもかくにもとりあえず、行ってみなければ始まらんな。

 

 

 ◇

 

 

『結構近いところにあるんだな』

「まあすぐ近くになるように、アンダーワールドの出口を調整したからね」

『……じゃあ、行って来るわ』

「はあい、行ってらっしゃいあ・な・たあああああああ待って死んじゃう、死んじゃうからあ!」

 

 

 うーん、HPが高いせいで全然削れない。

 別にいいけど。

 試し斬りも終わったことだし、そろそろ突入しますか。

 

 

 

【転職の試練に挑みますか?Yes or No】

 

 

 もちろん、イエスだ。

 目指すは、超級職、【修羅王】への転職。

 試練(クエスト)開始(スタート)ってな!

 というわけで、ボタンを押して、と。

 

 

 ◇

 

 

 

 あれ?

 ここ、どこだ?

 

 

 To be continued


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