<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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お久しぶりです。
四章開始です。



今日は、小説家になろうにてシャンフロが四周年らしいです。
めでたい。


最速へと至らんとす
プロローグ 新天地


 □【猛牛闘士】サンラク

 

 

 黒くて狭い、密閉された空間、【アンダーワールド】。

 その中に俺達二人はいる。

 その空間からは、俺の意思では出られない。

 

 

 俺達を閉じ込める、黒い空間が、ゆっくりと開いていく。

 アンダーワールドは、黒い空間だが、どうにも狭いんだよな。

 ラブホテルと同等か、それ以上に狭いかもしれない。

 なんでそれを知ってるのかって、いやまあ……別にいいだろそんなことは。

 

 

 さて、外は……森だな。

 それも、レジェンダリアのそれとは雰囲気が違う。

 日本の森に雰囲気が近い。

 木々の種類とか、湿度とか。俺にはわかる。

 昔々、母親に散々あちこち連れまわされたからな。

 国内国外問わず幼少期には両親にあちこち連れまわされていたんだよな。

 虫を捕獲した経験が、カブトムシになるクソゲーをプレイするときに活きたりもしたんだが、それはまた別の話。

 人外になるゲームはあまりに特殊過ぎて、自分でも体がわけわからんことになる。

 体を動かす感覚になじむ必要があるのだ。

 デンドロはハイスペックなゲームだが、むしろリアリティがありすぎて……本当に体を動かすのと同じ状態になっている。

 体型の変化にアジャストしてくれるようなシステムがない。

 シャンフロのような、至高のゲームとはまるで違う。

 究極の現実、それがデンドロの本質であり、クソゲーポイントであると俺は考えている。

 ゆえに、体を動かすにも慣れが必要であり……酷いのだと引退直行コースだとか。

 因みに、アバターを後から整形などして変えることは出来るらしいが、デスぺナすると元に戻る。

 まあ、流石にそんなことをわざわざしている奴は見たことがない。

 いるとしたら、そいつは相当の狂人だろう。

 

 

 

『それで、ディプスロ、ここはどこだよ?』

「うーん、今はアンダーマテリアルだよお?」

『……その名前マジで気持ち悪い』

 

 

 何なんだよマジで。

 いや本当に最悪だ。

 (アンダー)ネタ(マテリアル)ってそのまんま過ぎるだろうが。

 言いたくないし、記憶に入れたいと思わない。

 まだディプスロとかナッツクラッカーの方がいくらかましだったんだよなあ。

 下ネタ変態女の集大成になってるじゃねえか。

 

 

『あ』

 

 

 というか、こんな奴に訊かなくてもそもそもメニューでどこかわかるじゃん。

 ミスった。

 ガバでこいつとの会話を増やすだなんて何たる失態。

 恥ずかしい限りである。

 穴があったら入りたい……いや変な意味ではないぞ。

 

 

「ねえ、正直気持ちいいし私をサンドバッグ(慰み者)に使うのはいいんだけど、なんで私今殴られたの?」

『なんとなくだよ』

「DV彼氏だあ。すごおい」

 

 

 脳内ディプスロが暴れだしたので、ついでに本体もぶっ飛ばしておいた。

 分裂するボスモンスターって、本体があってそれを潰せば止まるケースが大半だからな。

 全部潰すまで止まらなかったり、本体が入れ替わったりするパターンもあるけど……つまるところ両方叩けばノープロブレム。

 今は脳内ディプスロを崖から突き落として

 えーと、メインメニューメインメニュー、と。

 天地・<修羅の谷底>って書いてるな。

 なるほどなるほど。

 ……うん?

 天地?

 

 

「【修羅王】は、天地の超級職だからねえ。当然、転職するにも天地にあるクエストを受けなきゃならないわけさ」

「なるほど」

 

 

 天地かあ。

 たしか秋津茜と京ティメットがいたんだったか。

 ログアウトしたら連絡とってみようかな。

 

 

 それにしても、天地か。

 ……随分遠いところまで来たな。

 このゲーム、移動するのにかなり障害が多い。

 原因は一つ、モンスターだ。

 都市部から離れれば離れるほどモンスターは強力になり、数も増える。

 狩りに行くときは、高レベルのものほど都市から遠い狩場に行くのがセオリーだし、マナーとされている。

 実際、近場で狩っても経験値効率悪いからな。

 まあこれは相手がモンスターなら、の話だが。

 人間相手を狩るとなると……これは見極めが難しい。

 何しろ、人気があるところでは狩りが困難であり、しかしてあまり人のいないところでは人がいないのでPKがはかどらないし、モンスターの横やりが入る。

 いやこっちでは何もしていないよ?

 ただ、単純にPKしに来る奴らを返り討ちにしてただけだよ。

 あとまあ、そもそも別ゲーで学んだことだったりする。

 ともかく、デンドロにおいて移動は面倒であり、それを解決してしまえるのが転移スキルだ。

 

 

 

 

 俺も一応転移スキルを習得しているからわかるが、この<Infinite Dendrogram>において転移におけるコストは非常に重い。

 それを解決するにはいくつか方法がある。

 一つ目は、膨大なコスト。

 聞いた話では、転移魔法はごく一部の魔法系超級職のみが使うものらしい。

 すなわち、超級職の膨大な魔力があって初めて実現可能であるということ。

 さらには、超級職のMPと自動回復があってようやく達成できるシルヴィアの【ミーティア】もそうだ。

 二つ目は、条件式。

 複雑な条件を達成した時のみスキルを発動できる。

 条件さえ達成してしまえば、コストは比較的少ない。

 俺の【猛牛闘士】の奥義による背後の転移がそうだ。

 あれは、特定の条件を達成したうえで、なおかつ既定の条件しか飛べないという面倒なスキル。

 三つ目は、制御の撤廃。

 レジェンダリアの<アクシデントサークル>が引き起こす転移がそうだ。

 あれは、膨大なコストとどこに跳ぶのかわからないという制限をもって長距離転移を可能にしている。

 この変態の転移ゲート型<エンブリオ>がどういうギミックで長距離転移を可能にしているのかどうかは知らんけど。

 

 

 

 

 □現実

 

 

 

 【旅狼】

 

 

 

 サンラク:とまあ、そんなこんなで今天地にいます

 

 サンラク:次会う時は超級職になってるんでよろしく

 

 鉛筆騎士王:うーん

 

 オイカッツォ:どこからツッコめばいいのかわからなくなった

 

 

 秋津茜:え、天地にいらっしゃるんですかサンラクさん!

 

 秋津茜:良かったらお会いしませんか!

 

 京極:秋津茜さん、サンラクも大事かもしれないけど、僕たちクエストもあるから……

 

 秋津茜:はっ、そうでした

 

 京極:まあ、多分会えるとは思うけど

 

 ルスト:?

 

 鉛筆騎士王:それにしても、女性と二人旅なんて

 

 鉛筆騎士王:罪な男だね、サンラク君

 

 サンラク:いや

 

 サンラク:アレを女と定義するのはちょっと……

 

 サイガ‐0:サンラク君

 

 サイガ‐0:お話があります

 

 サンラク:あっ

 

 サンラク:いやあの違

 

 サイガ‐0:お話があります

 

 サンラク:あ、はい

 

 オイカッツォ:愉悦

 

 鉛筆騎士王:まあ今回は君が悪いよ

 

 鉛筆騎士王:しっかり怒られなさい

 

 サンラク:それはそう

 

 ルスト:反省しなさい

 

 

 この後めちゃくちゃ怒られました。

 いやまあ、自分で行くことを選択したらそうなるよね。

 過程がどうあれ、超級職に就くためにそうすると決めたのは俺だから。

 

 

 

 □天地・征都

 

 

 天地。

 七大国家唯一の島国であり、戦を続ける修羅の国。

 

 

「断頭台やら、〈兵どもが夢の跡〉もいるらしいからね、楽しみだなあ」

 

 

 

 京極。

 対人戦へのノウハウを、この四人の中で最も持っている人物。

 元々別のゲームでPKをしているだけあって、対人戦の何たるかを理解し、実践できる。

 実力も、状況次第では準<超級>の領域に届きうる逸材である。

 

 

 

 二人目は、無数の目を付けたヘルメットをかぶった男。

 ぎょろぎょろ目は動いており、半数が索敵に向かっている。

 ちなみにもう半分は、京極に向いている。

 見られている当人は、刺すかどうか迷っていた。

 一人欠けた状態だと、リーダーが残念がるかもしれない。

 

 

 三人目は、ピエロフェイスの鎧武者。

 腰からは二丁の拳銃型<エンブリオ>を下げている。

 へらへら笑っている様子は、殺人鬼のように見えるし――実際そうである。

 

 

 そして、最後の一人は。

 

 

「皆さん、おはようございます!今日も頑張りましょうね!」

「あ、おはよう」

「おはよう、リーダー」

「今日もシコい」

 

 

 安芸紅音。

 太ももと二の腕がまぶしい忍者服を着て、頭に黒い狐を付けた少女。

 腰には、四つの動物のお面を付けている。

 このパーティのリーダーであり、曲者揃いのこのメンツの中で最強の人物である。

 〈エンブリオ〉こそ第六形態だが、三人は彼女ならば超級にも勝てる、と考えていた。

 自分たちも準<超級>クラスではあるが、彼女は別格であると。

 

 

 

 今回のクエストは、<修羅の谷底>での調査依頼だ。

 そこでの生態調査が、彼等のクエスト。

 伝説級<UBM>が跋扈しているといううわさもある場所だ。

 実力者であると評判の彼らに依頼が来たのも、逆に言えば彼らほどの実力者でなければ任せられないからだ。

 

 

 さらに言えば、その周辺では指名手配犯の<マスター>の情報がある。

 京極や、ダブルフェイスにとってはある意味クエストより重大である。

 

 

「……そういえば、その指名手配犯の名前なんて言ったっけ?」

 

 

 トーサツは、さほど指名手配犯に興味はない。

 だから名前を把握していない。

 彼の興味が向くのは、性別:女性のみ。

 性別不明の指名手配犯には、これといって興味がなかった。

 

 

「ええと、なんていう方でしたっけ」

「"不定"のアンダーマテリアル」

 

 

 天地という国。

 そこは修羅の国、騒乱の国。

 安全な場所など、安寧を得られる状況など存在しない。

 そんな場所で。

 天地最強クラスのパーティが、サンラクたちにたちはだかろうとしていた。

 

 

 Open Episode【最速に至らんとす】




Q.ディプスロなにしたの?
A.超級職の情報得るために、強盗とか殺人とか。


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