<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
後、今回で25万字突破です。
ここまで読んでくださった方ありがとうございます。
今後とも感想、評価、お気に入り登録、ここ好き、誤字報告、ご愛読よろしくお願いします。
□■【■■■】???
「さーて、そろそろだねえ。いいものも撮れたし」
「タイミングを見誤らないようにしないと」
「絶対に、逃がすわけにはいかない。チャンスは一度しかないからねえ」
□【猛牛闘士】サンラク
『…………』
《
俺は、高度千メテルの高さから落下していた。
別に突然紐なしバンジージャンプがしたくなったわけではない。
ぶっちゃけもう別ゲーでやったから飽きてるまである。
そんな心理的な理由ではなく、シンプルにシステムの問題だ。
今の俺のステータスウィンドウには、【呪縛】の状態異常が表示されている。
《餓狼顛征》のスキル使用後の反動だ。
しかも、耐性スキルによるレジストや回復魔法での回復も不可能ときた。
たしか【プリズンブレイカー】に使った時は、落下したところにたまたま岩があって死んだんだよな。
乱数はクソとしか言いようがない。
まあ、今回は硬度を鑑みて確定で死ねるからまだ悔いは残らないかな……いや残るわ。
【ブローチ】が無事ならワンチャンあったし。
まあ、もうどうしようもない。
このまま落下死するほかない。
……ん?
なんか落下が止まったような。
気のせい、じゃないな。
誰かが俺を抱えている。
体が重くて、目を開けていなかったが、触覚でわかる。
「へ―イ、
『あ、おう』
お前か全一。
目を開けてみれば、先ほども視界の端に移っていた
しっかしあれか。
こいつらでも【プリュース・モーリ】は倒せなかったのか。
本当に【ロウファン】があってよかった。
それから数分間かけて、俺は地上へと帰還した。
◇
『楽郎君、大丈夫ですか?』
『あ、レイ』
地上に戻って三十分は経っただろうか。
俺はレイと合流していた。
何だろう、すごい圧を感じる。
あ、全一から抱っこ担当がレイに移った。
まるで、母親が赤子を父親から取り上げるようだ。
俺とレイにも、子供ができたらこんな風になるんだろうか。
いや、流石にそうはならないだろうと信じたい。
まあとりあえずは就職して、結婚しないとね。
プロゲーマー?
いや、まあそれは色々制約があるから……。
あ、三十分経った。
とりあえず、地面に降りる。
久しぶりだな大地君。
元気だったかい?俺は元気じゃなかったよ。
『サンラク君も?』
『ああ、倒したよ。特典武具もゲットした』
キヨヒメがいないあたり、おそらく必殺スキルを使ったのかな。
たしかに、あれはヤバい。
一度試し打ちで闘技場で喰らったことはあるが、正直あれはどうしようもない。
本人を倒すか当たって耐えきるしかいないんだよな。
《製複人形》の隠蔽も貫通して追ってくるしどうにもならない。
『そう言えば、グライたちはどうなった?』
<UBM>は倒したのはいいが、あいつらは無事だろうか。
レイやステラに任せたから大丈夫だとは思うが。
『大丈夫だったみたいですよ。さっき一緒に挨拶に来ました。二人で、どこか村に行くそうです』
『そっか』
それならよかった。
シャンフロみたいに、後味の悪い思いをせずに済んだ。
まあ、どう考えてもあの二人(?)はくっつくフラグ立ててる感じだったし、良かったんじゃないかと思う。
幾多の(クソ)ゲーで学んできたことは無駄ではなかったということだ。
現実の恋愛にも適用できる、ラブクロック型の恋愛チャートは今も俺の脳内にある。
ちなみにこの話をしたら、カッツォには鼻で笑われ、鉛筆には憐みの目を向けられた。
解せぬ。
◇
さてと、そろそろログアウトして寝るか。
そう思っていた。
そんな時だった。
「ーー捕まえた」
--声がした。
その声は、ねっとりとした熱を含んだ声。
脳が焼ける、溶ける、爛れる、そんな声。
そして何より、別ゲーで
『……っ!』
そして、聞いた時にはもう遅かった。
いつの間にか、本当にいつの間にかだ。
俺たちの足元には、黒い影の穴が開いていた。
そして、
『楽郎君!』
レイが阻もうとするが、止められない。
黒い穴のもたらす法則が、俺だけを飲み込んでいく。
それからほどなく、俺の体は沈んだ。
□【猛牛闘士】サンラク
『ここは……』
「お久しぶりだねえ」
真っ黒くて狭い一つの部屋。
そこには、俺と
魔法職のような風貌。
赤く長い髪。
そして恐ろしいほど、それこそ俺程度の洞察力をもってしても簡単に看破できるほどに熱のこもった視線。
いや、わかっているのだ。
そんな情報がなくたって、嫌なくらいわかり切っている。
こいつの声を聞いた時点でわかっている。
知っている。
「久しぶりだねえ、サンラクくうん」
『二度と会いたくなかったよ、
いや、なんでホントいるのおまえ。
マジでふざけんなよ。
二度と会いたくねえってスぺクリでいったのに二度あることは三度ある状態になってるじゃねえか。
『というか、ここは……?』
「ここはねえ、私と君の愛の巣ってところかな?別名ヤリ部」
『いや、今からお前の墓場にするから安心しろ』
こいつ倒せばここから出れるし、一石二鳥だな。
「わああああああ待って待って!私を倒しても出れないから!」
『え?』
マジで?
どう考えてもこれこいつの<エンブリオ>だし、ぶっ殺せば解除されると思ったんだが。
《真偽判定》とっとけば良かったかな。
レイやステラが持ってるからいいかなと思っちゃったんだよな。
まあ、この変態とデンドロでもかかわることになるとは思ってなかったんだが。
「私の<エンブリオ>――アンダーワールドの仕様でねえ、わたしが死んでも維持できるんだよねえ。ついでに言うとログアウトはできないし、君が死んでもまたこの場所に戻ってくるだけだよ」
「クソかよ」
悪意と変態性に満ちすぎだろこいつの<エンブリオ>。
名前まできわどいラインとか嫌がらせの極みなんだよなあ。
「ふと思ったんだが」
「何かな?」
「その説明だと、お前をキルしてもデメリットは無くないか?」
「…………」
よし、やろうか!
「待てよサンラク君。ちゃんと<エンブリオ>とは別に俺っちがいることのメリットは用意してるんだぜえ?」
『キルしても心は痛まない存在、とか?』
「都合のいい女扱いッスかあ、まあそれもいいッスけど、もっといい話ッスよ」
『?』
「【闘牛士】、【闘士】、【猛牛闘士】、【大闘士】、【狂戦士】……そしてえ【殿兵】」
こいつが言ったのは、すべて俺がついているジョブだ。
サブジョブを見るスキルでもあるのか。
あるいはずいぶん前から俺のことを監視していたのか、あるいはその両方か。
「超級職、なかなかつけなくて苦労してるんだよねえ、知ってるよお、ずっと見てたからねえ」
『通報していいか?』
なるほど監視してたかこのディープストーカー。
「別にいいけどここの放置プレイ運営、ゲーム内のことでは動かないよ?ま、それはそうとして闘士系統はもちろん、狂戦士系統の超級職も埋まっている現状、サンラク君的にはなかなか厳しい」
『……そうだな』
ていうか何?え、もう狂戦士系統取られてるの?
マジかよ掲示板見た感じ未だに難航してるっぽかったんだが。
しかしとなると、どの超級職を取ればいいのか……。
「実はネ、君が条件の大半を満たしている超級職がある。モチロン空位の、ネ」
「…………は?」
いやいや嘘だろ?
そんな超級職があるのか?
狂戦士系統、闘士系統はすでに埋まっている。
いろいろ節操なしに使ってるから武器系の【神】ではないだろうし。
いや、一つだけまだ試してない系統が……。
「殿兵系統にして、複合系統超級職」
『…………!』
「【
俺を連れ去った、変態悪魔からの提案。
それは俺にとって、新たなる強化イベントの幕開けだった。
To be next episode
次回は、いくつか閑話を上げてから四章になります。
四章については気長にお待ちください。
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