<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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竜と鳥、砂の海で漂う 其の十

 □【猛牛闘士】サンラク

 

 

 さてと、どうしてあんなことをしたのか。

 なぜ、こんなことをしているのか。

 なんだろうな。

 俺はゲームというのは、楽しむためにするものだと思っている。

 効率を求めるのは楽しむためだし、勝とうとするのも楽しむためだ。

 効率化も、勝利も、手段であって目的ではない。

 

 

 んで、ここからが本題。

 だから、大勢で寄ってたかって。

 モンスターとはいえ、女の子を守ろうとしているやつなわけで。

 そんなやつを、フルボッコにして安全に特典を得ようとするのは……さ。

 

 

『それが面白いか、って話だよ』

『サンラク、何か言った?』

『いいや何でもない。こっちの話だ』

 

 

 上空でスピーカーを通して語りかけてくるルストの声を適当に流す。

 大したことじゃない。

 俺のちょっとしたこだわりが、漏れ出ただけ。

 俺たちプレイヤーと違い、デンドロにおいてNPCはリスポーンできない。

 それはゲームとしては間違いではない。

 ただ、ただである。

 それで俺個人が納得できるか、といわれればそんなこともなく。

 言ってて何考えてるのかわからなくなってきたが、まあ要するにあれだ。

 

 

『ぶった切る!』

 

 

 わあい!鯨肉だあ!

 おいしそうだなあ!

 

 

 

 おー、遠くから見ると鯨なんだけど、近くから見ると完全に戦艦だな。

 しいて言うなら、上部はほとんど兵器がなくて、下部と側面から砲が生えていることが特徴か。

 ターゲットはほとんど下にいるんだから、当たり前なんだが。

 逆に言えば、それは上部は隙だらけってことで。

 

 

 

 

 【双狼牙剣 ロウファン】をアイテムボックスから取り出す。

 右の黒い刃は、【吸命】。

 左の白い刃は、【恐怖】の状態異常を確率で与える。

 

 

 これで、やつを切り刻む。

 

 

 砲弾が飛んでくる。

 その上に飛び乗って回避。

 さらに砲弾の数が増えて……。

 対応できない。

 躱せない。

 躱せないなら、すり抜ける!

 

 

『《風神乱舞(ケツァルコアトル)》!』

 

 

 【機動戦支 ケツァルコアトル】の必殺スキルを起動。

 文字通り風になったことで、速度がAGIを優に上回り、さらに加速する。

 加えて風のエレメンタルのごとき状態になることで、物理攻撃を無効化する。

 だから、弾幕が当たらない。当たっても意味がない。

 大量の砲を出現させ、

 それは素直に強いと思うんだけどさ。

 

 

『近づかれると、というか上に乗られると何もできないだろ?』

 

 

 【双狼牙剣】を振るう。

 一髪、二発、三発、四発、五発、六発……ねえ、まったく発動しないんだけど。

 確率二割だぞ?

 七十五パーセントで発動するはずなんだけどな。

 乱数はクソ。

 あ、【吸命】引いた!

 はい最高!

 確率の女神マジで最高だわ。

 靴舐めまーす!

 あ、【恐怖】も引いてくれてるわ。

 とはいえ、あんまり意味なさそうだけどな。

 【吸命】のHP減少がほとんど意味ないし、【恐怖】もそもそも動かないやつには関係ないんだよな。

 発動準備には、時間がかかるけど。

 

 

 

 □■<闘争都市>デリラ上空・千メテル

 

 

『使うのは、闘技場以外じゃはじめてか』

 

 

 あまりに代償が大きすぎるために、使ってこなかった最大最強のスキル。

 ――だが、それだけでは足りない、届かない。

 

 

『火力不足、か』

 

 

 それは当然、眼前の<UBM>は、防御と回復に特化したモンスター。

 ましてやサンラクの必殺スキルは、機動力に特化したもの。

強化変身に分類されはするものの、攻撃力を上げるわけではない。

時間が過ぎれば、コストとなるSPも文字通り底をつき、サンラクはまともに戦えなくなるだろう。

 

 

『最後の仕上げと行こうか、ロウファン』

 

 

サンラクが《瞬間装備》したのは、【双狼牙剣 ロウファン】。

だが、それだけでは殺しきれないだろう。

確かに耐性を突破して状態異常を与えられるかもしれないが、決定打にはなりえない。

 

 

『《餓狼顛征(ロウファン)》』

 

 

 【双狼牙剣】で、【吸命】と【恐怖】を与えることが発動条件となる第三のスキル。

 それを使うために、双剣はその形を、在り方を変える。

 右手に持つ黒い刃は、長く、薄く伸びて一本の打刀に。

 左手に持つ白い刃は、分厚く広がり、穴が開き、一つの白い鞘となる。

 

 

 それはもはや双剣ではない。

 【霊骨狼狼 ロウファン】が二体で一つであったかのように、二本で一つの刃となる。

 それこそが、サンラクの切り札。

 

 

 スキルによって形を変える可変武器(・・・・)

 ーー【双狼一刀 ロウファン】。

 

 

 ◇

 

 

 【霊骨狼狼 ロウファン】。

 咆哮による精神系状態異常を与える骨体と、接触による呪怨系状態異常を与える霊体という二つの体が組み合わさった<UBM>。

 しかし、【ロウファン】の特性はその二つだけではない。

 第三の特性はーー双狼一体。

 霊体と骨体が共にあることを条件に無限の再生能力を手にする《双狼一体》。

 お互いがそばにいるからこそ、全力を発揮できる。

 

 

 そして、《餓狼顛征》はその第三の特性に由来するスキル。

 双剣が鞘と打刀に姿を変え、一つになったとき、使用できる抜刀スキル(・・・・・)

 【霊骨狼狼 ロウファン】も、【双狼牙剣 ロウファン】も持つ【呪縛】の状態異常。

 《餓狼顛征》は、【呪縛】の上位互換、あるいはその先。

 斬りつけた相手の、全細胞の機能停止(・・・・・・・・)である。

 再生能力があろうと関係ない。

 心臓が、脳細胞が、【保鯨仙雲 プリュース・モーリ】の肉体を構成する全てが止まる。

 かつて、バリアを抜きにしても強靭な肉体を持つ伝説級<UBM>、【プリズンブレイカー】を打ち破ったスキル。

 それを喰らって。

 

 

「ーーーー」

 

 

 

 最後の断末魔さえ、あげられず。

 【保鯨仙雲 プリュース・モーリ】は光の塵になった。

 それが決着。

 それで決着だった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

『《蛇神の果て(キヨヒメ)》』

 

 

 サイガ‐0が必殺スキルの宣言を行った時。

 【潜回竜 ミーヌス・ドラグーン】には、地上の様子を探るスキルもあった。

 だから、見えていた。

 捉えることができていた。

 パワードスーツに身を包み、蛇柄の銃を構えたサイガー0、ではない。

 人ではない、生物でもない。

 一発の紅い球(・・・)だった。

 小さな球で、銃弾一発程度の大きさしかない。

 巨体を持つ彼にとっては、それこそ芥子粒程度のものだ。

 しかし、わかる。

 彼にはわかる。

 ーーあれを侮ってはいけない。

 あれはまずい。

 逃げなくてはいけない。

 スキルによるものではない。直感による判断。

 逃げようとして、

 どういう理屈なのか、弾丸は地面を何もないかのようにすり抜けて【潜回竜】に迫ってくる。

  

 

 着弾。

 

 《蛇神の果て》は、単なる弾丸ではない。

 実体のない熱量を運ぶ(・・・・・)弾丸。

 しかして、《蛇神の果て》の恐ろしさはそこではない。

 弾速は、標的の速度(AGI)を元の速度に足しこみ。

 標的に当たるまで、永遠に追尾し続ける(・・・・・・・・・)ことだ。

 絶対に逃がさない、逃げられない。

 追尾と追撃を能力特性とするキヨヒメの集大成それが、《蛇神の果て》である。

 もちろん、欠点はある。

 まず第一に、必殺スキルの対象になるのは《追い焦がれる想い(フレア・ストーカー)》の標的だけである。

 先ほど、レイは【潜回竜】にはね飛ばされた際に、《追い焦がれる想い》のターゲットをサンラクから【潜回竜】に変更。

 だから、この欠点に関しては問題ない。

 二つ目は、チャージ時間。

 スキル使用には、五分間のチャージを要する。

 その間は、他のスキルも使えない。

 これも、<マスター>を一掃したことで余裕ができた。

 そして三つ目のデメリットもスキルを使用した後のものであり、彼女は、彼女も既に覚悟も決めている。

 

 

 

 【潜回竜】は、伝説級<UBM>の耐久力で耐えられ……ない。

 制限やデメリット、そしてコストをふんだんに積んだ<エンブリオ>の必殺スキル。

 その威力は、超級職の奥義にも匹敵する。

 ましてや、《蛇神の果て》は対象者の体内で(・・・)起動する。

 耐えられる道理がない。

 

 

「GUA……」

 

 

 

 【潜回竜】は、光の塵になる。

 

 

 

『……っ』

 

 

 

 同時に、キヨヒメが崩壊する。

 メイデン体に戻るために、光の塵になるのではなく、スキル使用の反動だ。

 第三のデメリットは、キヨヒメの完全破壊。

 当然修復されるまでキヨヒメのスキルは二度と使えない。

 まるで、清姫が安珍を殺した後に死ぬかのように自壊する。

 それでも、彼女たちはこのスキルを切った。

 

 

 ーーこうして、<闘争都市>デリラを襲った<UBM>は二体とも討伐された。

 

 

 

 

 To be continued




次回エピローグです。

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