Vol.8 女性に母性本能は、ない!【クラーク志織のハロー!フェミニズム】

“女性だけの母なる本能”という神話にNO! プレッシャーにもNO!
>これまでの「ハロー!フェミニズム」

クラーク志織 フェミニズム
Shiori Clark

みなさん、いかがお過ごしですか?

イギリスはロックダウンの規制が段々と緩くなってきましたが、まだまだウイルスとの厳しい戦いは続いています。

そんな中、英王室のウィリアム王子が、戦いの最前線にいるNHSスタッフ(医療従事者)をヒーローと称賛することへの危険性を呼びかけました。
王子は、彼らをヒーローとタグ付し、過剰に特別視する事で彼らに常に強く頼もしい存在であり続けるプレッシャーを与え、メンタルヘルスのサポートを求めづらくさせていると述べています。

確かに私もどこかで「特別な人たちだから過酷な医療現場にも耐えられている」と、自分ではなく彼らが危険と隣合わせで戦ってくれている状況を正当化していたかもしれません。反省です。

それと同時に、「あれ?この崇められているようで実はプレッシャーになっている感覚、母親になってから私も体験しているかも?」とふと思い、今回のエピソードを書くことにしました。

クラーク志織 elle
Shiori Clark

 

私は昔から「親になってみたいな」と思う事はあっても、「母親になりたい」と思った事はありませんでした。世間一般に考えられている「母親」という言葉の持つイメージが自分の性格とはかけ離れている気がしていたからです。

私は世話好きでもないし、料理にも興味がないし、針に糸すら通せません。けれど出産をしたとたん、世間からあれよあれよという間に「母親」というカテゴリに分類され、本来の性格ではなく「子ども好きで」「お世話上手で」「家庭内の料理や掃除も担当」などなど母親のもつ一般的なイメージが投影され始めた事にとても戸惑いました。

私と夫の間では子育ても仕事も家事もどちらかがメインで担当という事はせずに、平等に分担して行っているし、むしろ料理も掃除も夜泣きの対応すらも夫の方が得意なのに、「母親」と「父親」というカテゴリに分けられた私と夫は、お互いの本来の性格からはわりとかけ離れたレッテルを貼られてしまった気がしたのです。

2017年に、イギリスの非営利団体 National Childbirth Trust が、2歳以下の子どもをもつ1012人の母親への調査を元に、「The Hidden Half」という母親のメンタルヘルスに関する報告書を発表しました。

報告書によると、母親の体調とメンタルヘルスの状態をチェックするはずの生後6週間検診にて、実際にメンタルの不調を感じていた約半数はその事を相談できていなかったと答えました。

その理由として、「子育てに辛さを感じるなんて母親として失格と思われるかもしれないから、打ち明けることができなかった」「子どもを育てる能力が足りていないと思われるのが怖かった」「赤ちゃんの様子ばかりに重きが置かれ、自分にはあまり注意が払われなかった」などが挙げられています。

更に同報告書では、産後のメンタルへのケアが見逃されやすいこの状況は、長期に渡る深刻なメンタルヘルスの問題を生み出しており、母親が子どもを育てる事が時に困難になったり、パートナーや社会との関係性に大きく支障をきたす原因になったりすることもあると懸念されています。

世の中には「母性本能(英語ではMaternal Instinct)」などの言葉を筆頭として、子どもを産んだ女性を特別視する風潮に溢れかえっています。

「母親になれば皆、母性本能が芽生えるのだから、多少辛くったって大きな愛で乗り越えられるはず」「父親には到底できない」などなど。

こういった過剰な特別視は母親たちを勇気づけるどころか、子育てへの弱音を吐く事を躊躇させる雰囲気を作り出し、孤立させ、苦しめてしまう可能性のある危険なものだと私は思います。

冒頭での、医療従事者をヒーローと呼ぶことによって逆に彼らを苦しめていることと同じ構図ではないでしょうか?


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Shiori Clark


 

そもそも、「母性本能」って具体的にはなんでしょうか?

女性のみに備わったスーパーパワー?

男性にはない本能?

本当にそんなもの、あるのかな?

米国科学アカデミー紀要に掲載されたイスラエルで行われた実験では、「メインで育児を担当している母親」「サポート的な立場で育児を担当している父親」「メインで育児を担当している男性同性愛者の父親」の3つのタイプの保護者たち89人の脳とホルモンの活動をMRIで測定した結果、母親と父親の間では違いが測定されましたが、母親と母親に育児を任せる観念がない男性同性愛者カップルの父親の測定結果はとても似ている事がわかりました。

この実験結果は「母性」と呼ばれるような脳やホルモンの変化は、妊娠や出産ではなく、子供を世話する行為で引き起こされる可能性がある事を示唆しています

他にも、『Nature Communications』に掲載された実験によると、フランスとコンゴの2つの国の29人の赤ちゃんを対象に、両親がどれだけ泣き声を聞き分けられるかを実験したところ、母親は98%の確率で正解し、赤ちゃんと過ごす時間の多い父親の正解率は90%、子どもと過ごす時間が1日4時間以下の父親の正解率は75%でした。

この実験を率いた研究者はこの結果をうけて、「母性本能が子どもの泣き声を聞き分けるのではなく、一緒に過ごす時間が泣き声を聞き分ける能力を培うのだ」と述べています。

うむ、どうやら女性だけに備わっていると信じられてきた「母性本能」と呼ばれる魔法の力は、子どものお世話をする事によって生まれる後天的な能力だったみたいです。

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Shiori Clark

時々、古びたジェンダー感を引きずったままの男性などが「女性は子どもを産むと変わる生き物」などと言っているのを目にしますが、それは本能というよりもただ単に状況に適応するために変化したのであって、むしろ子どもをもった男性がさほど変わらなくてもよかった今までの社会構造が、いかに育児の負担を女性だけに押し付けていたかを端的に表したセリフだなと思います。

そして、「母性本能」や「母性愛」という言葉は、楽しいだけでは済まされない子育てという重労働を女性だけに押し付けるとても良い口実になってきただけではなく、育児を頑張ろうとしている男性を育児の世界から追い出してしまう原因の一つにもなってきたのではないでしょうか?

「母親だから育児が得意なはず」「父親は子どものお世話はいまいちだよね」などなど、性別でその人の中身を判断するような、そんな大雑把で適当なタグ付は、もうとっぱらってしまおう!

【出典】

Daily Mail「Maternal instinct myth」
BBC NEWS「Coronavirus: Prince William fears mental health impact of NHS 'hero tag'」

The Grapevine「Maternal instinct found in dads, too」

NCT 「The Hidden Half」


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