<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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今回短めです。

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竜と鳥、砂の海で漂う 其の四・五

□■【偽竜王 ドラグライ】について

 

 

 【偽竜王】がまだ【偽竜王】ではなく、ただのドラゴンの子供であった時。

 彼の母と、父は死んだ。

 

 

 そして、その抗争の発端は彼だった。

 彼が――地竜と怪鳥のハーフであったがゆえに。

 地竜と怪鳥種は敵対関係にある。

 かつて、怪鳥種が飢餓に耐えかねて地竜の子供を食料にしたことが原因とされているが、怪鳥種の方は歴史の継承もしていないのでさほど理由は重要ではないかもしれない。

 とにもかくにも、地竜と怪鳥は仲が悪い。

 それこそ、テイムしてもなお、お互いに言い争いを止めないほどだ。

 しかしながら、地竜や怪鳥の中でも、そういった嫌悪感を持っていない変わり者が全くいないではなく、【偽竜王】の両親もそうだった。

 【ファントム・イーグル】の父と、【クロウ・ドラゴン】の母。

 <マスター>がその話を聞けば、「ロミオとジュリエット」を連想したかもしれない。

 もっとも、彼等の場合は自殺ではなく、地竜たちによって粛清されてしまったのだが。

 普通ならば、そこまでの事態には至らない。

 天竜種とは違い、地竜種や海竜種は魔獣や怪魚などとのハーフも多く、異種族と交わったところで問題にはされない。

 ただ、怪鳥種だけは話が別だ。

 特に、長い時を生き、未だ恨みを忘れていない、発言力の強い【竜王】の意志もあって、特に関係のない地竜までもが粛清に加わった。

 

 

 そこで、彼の命は終わるはずだった。

 

 

「GI?」

 

 

 しかし、死の間際、彼は奇妙なモノを見つけた。

 ソレが何なのか、彼にはよくわからない。

 いや、ソレの形を視認することさえできない。

 そんなものでありながらソレーー■■■■■――から目が離せず、口に含み嚥下した。

 

 

 そして、彼は【偽竜王 ドラグライ】になった。

 偽りの竜王、彼以外の同族を持たない、小さな王として。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 <UBM>になってから三日、彼は当てもなくさまよっていた。

 なお、さまようといっても本来の竜の姿でではなく、人の姿で――グライ・ドーラとして、である。

 本来の姿で地竜に見つかれば、まず間違いなく殺されるし、怪鳥種に出くわしても同じことだ。

 既に、並の地竜や怪鳥なら恐れるに足りないほどの力量を持っていたが、三日前まで無力な、それこそレベルアップのための器さえない子供だったので、自己評価が低かった。

 

 

『あ……』

 

 

 気づいてしまった。理解した。

 聞いたことがあった、知っていた。

 彼らの住処、その近くに村がある。

 小さなオアシスに根差すその村には……ある風習があった。

 それは、【ファントム・イーグル】への信仰。

 土地神のように祀っており、【ファントム・イーグル】を土地神のように扱い、酒や料理を貢ぎ、舞をささげる。

 彼等もまた、それにこたえて周辺のモンスターを間引いたりする。

 

 

 そして、どういう経緯か知らないが……それを知ったものがいるのだろう。

 つまり。

 この村は……自分たちを殺すついで(・・・)に襲われているのだと。

 

 

「――」

 

 

 何を言っていたのかは、わからない。

 

 

 ただ、両親に取りすがっている彼女が。

 どこかの小さなモンスターに重なってしまったから。

 彼女を、放っておけなかったから。

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオ!」

「GYA?」

 

 

 幻影で作った分身を大量展開。

 竜をかく乱したまま、少女を抱えて走る。

 戦闘よりも、少女の救出が優先だ。

 そのまま、逃げだした。

 

 ◇

 

 

 そうして、逃げおおせた後。

 

 

「お前、名前は?」

「シオン、です」

「そうか……。俺は、グライ・ドーラだ」

「<マスター>なんですか?」

 

 

 <マスター>。

 それは異界からくる強い人間のこと。

 そう思ってもらった方が、いいかもしれない。

 だって、自分の正体もまた、彼女たちを襲った「竜」と同じなのだから。

 とっさに、左手の甲に紋章を偽装して、彼女に見せる。

 

 

「俺は……<マスター>グライ・ドーラだ」

 

 

 とりあえず、彼は少女を都市まで送っていくと決めた。

 だって、――見ていられなかったから。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 道中、モンスター、鳥頭の<マスター>、<超級職>などいろいろとアクシデントはあったものの、何とか一人の少女を都市まで送っていくことには成功した。

 金の国カルディナではあったが、村から持ち出した物資を使えば彼女一人はなんとかできるだろう。

 そう思っていたのに。

 そう思っていた時に。

 奴らが来た。

 このままでは、約束を、そして彼女を守れない。

 だから。

 彼は、「竜」の姿をさらした。

 

 

 To be continued




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