<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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間に合いました。
クマニーサン、誕生日おめでとうございます!
(全くデンドロキャラが出ていない事実から目を背けながら)


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休息を喫するもの、すなわち戦に備えるもの

□【猛牛闘士】サンラク

 

 

「すまんな、店に入って早々トイレに入っちまって……なんで俺の方を見ながらニヤニヤしてるんだあんたら?」

「……否定。ほほえましい目で見ているだけ」

「別にアンタ一人を見てるわけでもないわよ」

「…………」

「ええ……何を話してたんだ?シオン?」

「え、あ、いえ!なんでもありません!」

 

 

 うーん、これは確定だ。

 完全に恋する乙女のムーブだ。

 もはやテンプレが過ぎるぞ。ギャルゲーの主人公になりつつあるんじゃないか?

 ああ懐かしきピザ留学、どうして初対面でぐいぐい迫ってきたキャラクターまでもが約束の時間より十五秒早く来ただけでピザ留学するんだよ。許せねえよ。

 理不尽な理由でギャルゲーには苦手意識があったりする。

 

 

『あー、あれだ、あんたらの馴れ初めってやつだな』

「なれそめ?」

「鳥の人さん!」

「あ、あのシオンさん、サンラクさん、ですよ?」

 

 

 いや、レイ。気持ちはありがたいけど大丈夫だよ、今更気にしてないから。

 身内に鉄砲玉だの悪食だの露出狂だの変態だの言われたい放題だからね。いまさら感がある。

 別ゲーでもツチノコだの、バニーの変態だの、サイレント・キル・幼女だのとあれな通りにで呼ばれた俺だ、今更何も言うまい。

 大半は俺自身に非があるのがつらいところだ。

 いやまあ、デンドロ半裸なのは<エンブリオ>のせいなんだけどな。

 街中では<エンブリオ>をしまってもいいじゃないかって?

 デンドロでは街でのPKが禁止されてないんですよ。どこにPKやモンスターがいるかわからない以上、気は抜けないんだよな。

 

 

 

「……なるほどなあ」

『そう言えば、お前らは今後どうするんだ?』

 

 

 

 こいつらは別に、トーナメントに参加するためにここに来たわけでもない。

 実際出てなかったみたいだしな。

 だからこの後もデリラにとどまるつもりなのかな、と思ったりもしたのだが。

 

 

「いや、シオンをドラグノマドの孤児院に送り届ける。そこでお別れだな」

「え?」

「「え?」」

 

 

 あ、そうなの?

 というかなんでシオンはともかく、レイやキヨヒメもがっかりしてるのはなぜなのか。

 やっぱり二人そろって恋愛脳らしい。

 まあ気持ちはわかるけども。

 さっきまでのシオンを見てれば、ね。

 

 

「あ、あのグライさん」

「何度も言ってるはずだぞ、シオン。あそこは間違いなく、カルディナで一番安全だ。おまけに今は比較的近い」

 

 

 それはともかく、マジで気づいてないのかこの男。

 

 

「まあ、お前の気持ちはわかってる」

「え」

 

 

 お?

 

 

「お前が、あの街をよく思っていないのはわかっているが、そこは割り切ってくれ」

「……はい」

『ええ……』

 

 

 いや全然違うんだよなあ、どう解釈すればそうなる。

 うっそだろお前。

 まあいいけどね。

 さすがに人のプレイスタイルに口出しする気はないからまあいいけど。

 

  

 ◇

 

 

 しばらくして、二人は勘定を払って出ていった。

 というか、俺たちの分まで出してくれてる。

 いい奴ではあるんだよな、グライ。いろいろアレではあるけど。

 

 

「あの二人、大丈夫ですかね?」

『さあなー』

 

 

 正直、あくまでNPCとプレイヤーだから、しょうがない気はするんだよね。

 ただ。

 さっきまで一緒にいた二人。

 少し気まずい雰囲気ではあったものの、その後は楽しそうで。

 あの後、空気を変えるためかレイとキヨヒメが話を振って、シオンが今までに旅路について語って。

 そうしてグライがほほえましいものを見るような目で、相槌を打つ。

 俺の目から見ても、あの二人はどうにもお似合いに見えて。

 あいつがどう(・・)であれ、幸せな結末にたどり着くのは難しいかもしれないけど。

 できれば、バッドエンドにはならないことを願いたいものだ。

 

 

「おや、サンラク君じゃないか」

『何でお前らまでここにきてるの?ストーカーか何か?』

「いやいやあ、私()そんなことしな、あ、待って妹ちゃん落ち着いて、引っ張らないで!」

「このカフェしゃれてるね、『バーサーク・バザール』にもこんなのがあったかな」

『何それ』

「最近話題の格ゲーなんだけどなあ……」

「悪くはないけど、やっぱりGH:Cには及ばないよ!」

「ま、まあシャンフロシステムが搭載されてないから、多少はね?」

 

 

 おいおいおいおい、夏目氏と全一もいるのかよ。

 両手とケツに花がぶっ刺さってるじゃないかカッツォ。

 ケツに刺さってるのは彼岸花だろうけど。

 

 

 ◇◆◇

 

 

『あの三人さあ、はたから見ると幼女に迫る二人の女って構図なんだよな』

「実態はただのフラグたてまくり鈍感野郎だけどね」

『……あいつデスぺナする?』

 

 

 善悪ではない。

 正しいとか間違っているとか、そんなことは問題ではない。

 とりあえずこいつをボコさねばならないと、俺の魂が俺に告げているんだよ。

 

 

 

「いいねえ。街中なら<エンブリオ>に搭乗する前にサンラク君ごと爆殺できそうだし」

『しれっと俺含めるのやめてもらえません?』

「リア充爆発しろっていうじゃん?」

『あれ、鉛筆って去年のクリスマス予定あった?』

「……仕事だったけど?」

『あ、そっすか(笑)』

「…………」

 

 

 いやー独身女性の嫉妬は見苦しいものがありますなあ。

 まあ、しょうがないかなああああ?

 

 

 

「……鎮静。落ち着いてペンシルゴン」

「あ、あの落ち着いてください、ね?」

 

 

 レイが止めても逆効果な気はするが……。

 あ、普通に鎮静化してるわ。

 自分は俺の方にだけキレるの理不尽じゃない?キレるならカッツォだけにしとけよな。

 理不尽が過ぎるんだよなあ。

 

 

「はあ、疲れた」

『あーわかるよカッツォ、負けた時って精神的にキツいもんな』

「なるほど……そういえばサンラクの試合は見たけど、結構いいアイテム持ってたよね」

『いやいやそれほどでも……お前の装備もいいもの使ってたじゃねえか。売ればいい額になりそうだな』

『「…………」』

 

 

「アンタ達、友達なんじゃないの?」

『いやいや、わかってないなステラ。これは一般人が外道と付き合うための由緒正しきコミュニケーション方なんだぜ』

「そうだね、俺みたいな一般人にとってはこういう対応が外道に対する最適解なんだよね」

「『あっはっはっは』」

 

 

 六割削れた。PKのペナルティがないからってえげつなすぎる。

 店内だと避けられないんだよなあ。

 

 

 To be continued


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