<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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前話のあとがきに、サンラクに関する補足を加えております。
良ければご覧ください。


40万PV達成していました。
後、今回で20万文字突破しています。
今まで支えてくれた方々には感謝しています。

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本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。







その者、【■■■】

 □【猛牛闘士】サンラク

 

 

 ルストとの決闘で勝利した後、ルストとはいくらか話した。

 いろいろ負け惜しみ言ってたけど、無言で顔をカクカクさせて返した。

 顔真っ赤にしてたの面白かったなあ。

 

 

『サンラク君、お疲れさまです』

『ありがとう』

 

 

 んで、今はレイやキヨヒメと、合流して客席に向かっている。

 ちなみにレイの試合はまだ始まっていない。

 ていうか、だいぶ後だな。

 

 

『あ、見てましたよサンラク君の試合、その、すごかったです』

「……同意、流石父上」

『いや、割とぎりぎりだったけどね』

 

 

 何とか勝てたなって感じ。

 正直、危なかった。

 完全に舐めプだろうと思って油断があったのかもしれないが、ぶっちゃけ相当追い込まれていた。

 ケツァルコアトルの必殺スキル(・・・・・)を使ってもよかったが……正直あれはまだ制御が不完全だったから、少しでもレーザーに当たれば死ぬ状況であれは切れなかった。

 というか……【蛇眼鳥面】がない状態で使えるのかあれ?

 検証したことないから何とも言えねえ。

 さて、と。

 

 

『確かこの後は、カッツォとシルヴィアの試合があるんだっけ』

『あ、そうですね』

「質問、父上はどちらが勝つと思いますか?」

『わからん』

 

 

 どっちが勝つのかはわからん。

 カッツォのビルドはよく知っているが、逆にAGAUの情報はまるで分らん。

 しいて言うなら、<エンブリオ>はあの青いブーツ、TYPE:アームズ系列であるということぐらいか。

 後多分徒手空拳でやるスタイルだとは思う。

 ミーティアスのコスプレ(あんな恰好)している奴が武器や飛び道具を使っているとは考えづらい。

 

 

『ひとつ……気になることがあってさ』

『?』

『昨日会った時、全米一の装備は《鑑定眼》で見たんだけど、本人のステータスは見えなかったんだよな』

 

 

 考えられるのは、二つ。

 一つ、何かしらの強力な《隠蔽》効果のある装備を持っていた、しかし、それでは《鑑定眼》が通じているのが理屈に合わない。

 二つ目は……単純にレベルが違う(・・・・・・)可能性。

 レベル差があるから、ステータスに差があるから、《看破》が十全に機能しない可能性。

 もし、そうだとしたら。

 この試合の勝敗は。

 

 

『おいおい……』

「これは」

 

 

 俺はもちろん、レイにも試合の内容は見ることができる。

 闘技場の結界には低速化して見れる効果もあるため、AGIが多少低い者でも安心して試合を観戦し、楽しむことができる。

 俺やレイ(・・・・)には、関係ない話かもしれないが。

 

 

 閑話休題。

 ゆえに、誰もがはっきりと試合の状況を理解できる。

 ーーそれは、あまりに一方的な試合だった。

 カッツォの駆る黄色のロボットーーTYPE:ギアの<エンブリオ>は、ソウダカッツォという名の<マスター>は、決して弱いわけではない。

 同格であるはずの上級<マスター>を次々と葬って、本戦に出ているのだから。

 砲弾、魔法攻撃、バトルナイフによる斬撃等々、今も巨大な武器兵器を運用して、あるいは<エンブリオ>の固有スキルで多種多様な攻撃を仕掛けている。

 そして、それらが一度もAGAUに対して、まともに当たっていない。

 理由は二つ。

 一つ、両者のプレイヤースキルに差があるから。

 カッツォの<エンブリオ>はロボではあるものの、思考入力で動くラグがない仕様らしくその動きはなめらかだ。

 相手の動きを読んで、炸裂弾をランチャーから発射している。

 超音速機動が可能であっても、避けられるものではない。

 そもそも弾頭もまた超音速で動いているのだから。

 

 

 だが、やつ(・・)はそれを回避している。

 

 

 やっていること自体は単純だ。

 ブレーキをかけることによって自身の勢いを殺し、更にそのブレーキによる反動を利用して軌道を変えることでカッツォの攻撃にとらえられないように動き続けている。

 そのうえで、彼女はカッツォに接近してダメージを確実に与えている。

 既に装甲は半ば脱落しており、AGAUの優勢、いや勝勢は揺るがないようにも思える。

 が、それでもカッツォはまだ別の兵装を出そうとして。

 

 

『うん?』

 

 

 あれ?今消えた?

 あ、結界が解除されてる。

 ってことは。

 

 

「あーとっ、これは一体何がどうなっているでしょうかあ?見えない、見えないまるで何が起こっているのかわかりません!でした!しかしこれだけはわかる、勝者は、【神壊僧(ゴッドブレイク)】AGAUウウウウウウウ!」

 

『ええ……』

 

 

 解説になってないじゃんそれ。

 いやあこれはさすがにカッツォを煽れんわ。まあ煽るけど。

 

 

 ◇

 

 

 あ、あの眼鏡ロリのアバターは確か。

 カッツォだな。

 発見発見。

 あ、こっち向いた。

 向こうもこちらに気付いたようでこちらに歩いてくる。

 

 

「いやー、残念ながら負けちゃっ」

『おーす、本戦の一回戦負け、どうもお疲れさまでーす!』

「即落ち二(コマ)だったねえ、流石カッツォ君(同人受け)

「君たちは、本当に腹立つことばっかり言ってくれるねえ!」

 

 

「サンラク」

『なんだよ?』

「シルヴィアの動き見たか?」

『ああ、なんとか速度型だから目では追えてるよ。基本的には』

「だよね、見えない瞬間があったよね」

 

 

 十中八九俺の《逃非行》と同じ、短距離転移のスキル。

 ただ俺より射程が長いっぽい。

 ジョブスキルじゃないし、<エンブリオ>のスキルでもないだろうから……たぶん特典武具かな。

 俺の方の転移は条件が複雑だから、それに対応できるがどうかわからん、いや多分無理だな。

 使われる前に近づいて、大火力の攻撃で仕留めるしかないか。いやでも接近戦が得意なのは向こうもなんだよな。

 

 

『カッツォ、お前がシルヴィアにリベンジするとしたらどうする?負けた雪辱を果たすためにリベンジするとしたら』

「何でリベンジって二回言うかな……。まあなんとか距離を取って中遠距離で戦うことにするかな、原則接近戦だと不利だろうからね」

 

 

 まあ、普通はそうなる。

 転移にしても射程より遠い距離から戦えばどうとでもなるからな。

 それも一つの方法ではあるが……それでカッツォ(プロゲーマー)が倒せなかった以上、それが絶対的に正しい解というわけでもないのだ。

 

 

『【神壊僧】ってどういうジョブなんだ?』

「聖職者よりのジョブだね。僧兵系統派生上級職の【破戒僧】ってジョブがあるんだけど、それの超級職みたいだ。特性としては、他者の回復ができなくなる代わりに、自分の回復やMP、SPの自動回復スキルを得る。ステータスは耐久よりの魔法職って感じかな」

『……壊れ職業かな?』

 

 

 ラスボスに回復機能を持たせるんじゃねえよ。

 クソゲーと化すだろ。

 ああ、バグでボスが無限リスポンするゲームを思い出した。

 もしかしてそれで転移のコスト賄ってるのか?だとしたらどうしようもない気はするが。

 

 

「【破戒僧】への転職条件がそもそも厳しいんだよね。何しろ「生涯に一度も他者やモンスターを回復しない」って知らないとどうにもならない条件があるからね」

『それ良くクリアできたなあいつ』

 

 

 元々がちがちのソロプレイだったってことなんかね。

 あ、でもシャンフロでもそんな感じのビルドだったけか。

 戒律を破る通り越してゴッドをブレイクする(破る)のマジでやばすぎないか?

 全ての元凶たるギャラクセウスぶっ殺してそうだなヒーロー。巡り巡って全部神に原因があるっていう世界設定よくよく考えるとクソ過ぎるんだよなあ。

 神の一存ですべてがどうにかなってしまう世界観は、神ゲーじゃねえんだ、邪神ゲーなんだ。

 俺達クソゲーハンターが挑まんとするタイプのやつなんだ。

 

 

「訊きたいんだけど、さ」

『うん?』

「サンラクは、勝てるの?」

『勝つさ』

 

 

 相手は世界最強の人力TASなプレイヤースキルを持った人間。

 おまけにこの世界(デンドロ)では、レベルやステータスも格上、実質無尽蔵のHPとMPを持っている。

 正直文字通り、ラスボスといっても差し支えない。

 だが、それがどうした?

 死ぬまで殴れば死ぬし、死ぬまで避け続ければ、俺の勝ちなんだよ!

 

 

「…………なるほど、サンラクらしいね」

『だろ?』

「……カクカクさせるのやめてくれない?腹立つから」

(カクカクカクカク)

 

 

 無言でアサルトライフル取り出すのやめ―や。

 

 

 To be continued




本日、AT-Xにて<Infinite Dendrogram>のアニメが6:30より再放送されます。

観たことがないという方が、もしいらっしゃいましたらこれを機会に見ていただけると嬉しく思います。


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