<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
もちろんそれ以外の感想もありがたく思っています。
これからも頑張ります。
八話
□【猛牛闘士】サンラク
とりあえず予選突破かあ。
正直どいつも楽な相手ではなかったけどね。
カンストした廃人プレイヤーも決して珍しくはないし、もうすでにそのまま超級職についてその倍のレベルに達してる奴も<Infinite Dendrogram>にはいるのだからさもありなんといった感じではある。
超級職とは当たらなかったからまだラッキーかもしれんけどな。
レベルキャップ解放の手段が、オンリーワンのユニークジョブのみって結構きついと思うんだよなあ。
せめてアプデとかで増やしてくれればいいけど、放置運営として有名な運営がそんな気の利いたことをしてくれるわけがないし。
大体何を聞いても仕様です、としか返ってこないらしいからな。
許せねえよ……。
頼むからデスぺナに関しては修正して短縮してほしい。
後ほら、<アクシデントサークル>はマジで勘弁してほしいんだけど。
俺一回それが原因でデスぺナってるからな?本当にふざけるのはやめていただきたい次第である。
「おーい」
というかあの後気になって調べたら、<アクシデントサークル>でひどい死に方した例が結構な数出てきたんだよな。
やれ「海底に転移して溺死した」だの、「気づいたらモンスターの口の中にいた。興奮した」だの、「【妖精女王】の部屋の中に飛ばされて、ティーカップを盗んだら他の<マスター>に討伐された」だの……いや、最後のは全面的にプレイヤー側の問題だわ。
ただの変態じゃねえか。
まあ正直レジェンダリアって俺やレイみたいなまともな奴はほとんどいないからな。
そういえば、そんなことを言ったらカッツォには鼻で笑われ、ペンシルゴンには大げさな身振り手振りとともにため息を吐かれたあと、「いや、そもそも妹ちゃんも大概……ごめんやっぱ何でもない」とか意味不明なことを言われた。
とりあえず腹が立ったので、魔境スレ最新版のリンクと婚活サイトへのリンクをそれぞれに送り付けたのはいい思い出だな。
「ちょっとー」
カップねえ。
そういえば、レイって俺が飲んだ後のカップをじっと見てることがあるんだよな。
まあ、洗い物してくれるのは助かるんだけど、なんか気恥ずかしいんだよね。
いや、違うんだよ。俺も家事やったほうがいいのはわかってるんだけどさ。
なんか俺がやろうとする前に、いつの間にか終わってるというか。
うん、ホントに手際がやばすぎて入り込む余地がないといいますか。完璧人間だといわれるだけのことはありますよ。
「話聞けや鳥頭」
『おっと』
いやなんかペンシルゴンが槍突き出してきてるんだけど。
ちょっとー、酷くなーい、刺そうとするのやめてもらえますー?
危ない危ない、殺気感知――スキルではなく直感の方――が発動しなかったらマジで死んでたかもしれん。
いくら魔法職メインだからって槍で刺されたら俺の耐久力じゃ普通に死にかねないんだよ。
『で、何だよ予選敗退女』
「今ここで君が私にデスぺナされたら、君も実質予選落ちってことになるけど」
そう、そうなのである。
このアーサー・ペンシルゴンとかいう女、元【旅狼】面子の出場者の中でもた・だ・ひ・と・り予選落ちした人でーす!
はー、予選開始前はあんなに自信満々だったのになあ!
「本戦で燃料にしてあげるよ」とか言ってた癖になあ!
『いやいやそんな、やる前から結果が明示されてる勝負なんて、面白みに欠けますぜ姐さん?』
「うーん、そっかあ、鳥頭には高度な勝敗予測は不可能だよね」
『へいカッツォ、高度な予測とやらを駆使する、二つ名持ちのPKがいるらしいぜ?しかもこの<闘争都市>デリラにいるらしい』
「おいおい、それはまずいよサンラク。そんな奴とトーナメントで当たったら、一体俺たちどうなっちまうんだ?」
『そうだよなあ、もしトーナメントで当たることになったらと思うと震えが止まらなくて、フフフ腹筋がねじれそうだぜ』
「よーし分かったお姉さんが張り切って全部吹っ飛ばしちゃうぞお?」
「『お姉さん?』」
「……………………は?」
『「…………」』
…………。
うん、あのごめんなさい。
その後普通にレイ(とキヨヒメ)にも怒られた。
カッツォも……夏目氏、かなあれ?に怒られてた。
いやあのね、違うんですよ。つい口が滑ったといいますか、ほら予選突破が嬉しくってはいすいません女性に言っちゃダメな奴でしたね申し訳ありませんでした。
◇
鉛筆が予約を取ったレストラン。
カルディナの特色として価格が高価である代わりに、どの国の特産品も得られるというものがある。
で、このレストランも例にもれず割高ではあるがどの国の料理も食べられるらしい。
俺はグランバロアの海鮮を使ったパスタを注文しているし、レイは天地の和風定食を選んだようだ。
いずれグランバロアにもいってみたいんだよな。
海しかない国ってのも生態系が独特で面白そうだし。
ティックからもいろいろ聴いてるしな。
【海竜王】とかいうのをはじめ、とにかく強いモンスターがポンポン出てくるらしい。
いずれは海上の<UBM>とも戦ってみたいものだ。
あと、天地もいいな。
いつ行けるか分からんけど。
「え―では、諸君らの予選突破を祝って、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
『ペンシルゴンにも乾ぱ……おっと失礼』
「悪いねえペンシルゴン、自分だけ暇になったから音頭取ってもらっちゃってねえ」
「まだいうかなー君たち。あんまり言うと、顔隠し×魚臣慧の同人誌を手が滑ってグループに貼っちゃうぞ?」
『「それはやめて」』
秋津茜やレイにそんな魔境の暗黒面を見せたくねえよ。勘弁してくれ。
せめて外道だけのグループにして
書かれること自体は俺としてはノーダメージなんだよな。
お、カッツォくーんどうした?目が死んでるぞ?
周囲に悟られないようにアイコンタクトのみで煽ると、なぜか掴みかかってきた。
全く、はしたないことはやめなさいよカッツォちゃん。
「ケ、カッツォ、この鳥頭と天音……女が?」
「あ、うん。お察しの通りだよ。あ、それと武器ありがとうね、メグのおかげで勝てたよ」
「そ、そう私のおかげ、なんだ」
ほーん。カッツォ未だにあの二人とあんな感じなのか。けっ。
いや違うんだよ。
彼女がいるだろとかそういう話じゃないんだ。
今の俺の境遇に関わらず、内なる俺がカッツォをボコせとささやいているんだよ。
決勝トーナメント楽しみにしておけよ!
「お、ようやく来たようだね」
「あら、こんにちは」
「「え」」
『あっ』
それは、長身の男性だった。
そいつは、星を象ったようなゴーグルをつけており、金色のベルトを腰に巻いている。
それは、ぴっちりと体に張り付くようなラバースーツを着て、マントを羽織り、どこか金属質な瑠璃色のブーツを履いている。
容姿も相まってそいつは、
……。
さて、ログアウトの処理をっと。
「サンラク君?何をしているのかな?」
『いや、ちょっとアレがアレで……』
「逃げようとするのはよくないなあ、俺たち、親友だろ?」
ええい放せ!肩を組んでくるなバカヤロー共、ログアウトできねーだろが。
何が親友だよ。
地獄に引きずり込もうとするんじゃない!
全くこれだから外道は。
「なんだか、随分と楽しそうね?ケイ達」
「……いや、君が原因で楽しいことになっているんだけどね」
「ほらほらサンラク君、あんまり暴れるとまた憲兵が来ちゃうよ?」
「……質問。こいつは誰?父上たちの知り合いなのはわかっているけど」
『ん、まあ別ゲーの知り合いかな?』
「……?」
「あの、もしかしてサンラク君、この人は」
『うん、レイの想像通りだと思うよ』
最近また日本の番組で共演したからなあ。
大学もあるし、そんなポンポン呼び出さないでほしいんだけどね。
レポートとクソゲーとクソゲーとクソゲーで忙しいんですよこっちは。
《看破》で見えるそいつのこの世界での名は、
しかし、その名は、そいつの本質ではない。
「久しぶりね。会えてうれしいわ、
『久しぶりだな、
世界最強のプロゲーマー、シルヴィア・ゴールドバーグがそこにいた。
To be continued