<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
遅れて大変申し訳ありません。
週に二回投稿を目指していきたいと思います。
今後ともシャンドロをよろしくお願いします。
■【鎧巨人】フリーザ
カルディナにある<闘争都市>デリラで行われるトーナメント。
このトーナメントだが、当然予選と本戦がある。
俺も含め、ある程度のラインそれこそレベルカンストを達成しているような奴らにとってはカルディナに移籍できるだけでもありがたいイベントである。
加えて、上位者には報酬まで出るとなってくれば出たいと思わない方が珍しいだろう。
本戦に出場するには、予選で五連勝する必要がある。
ここまで既に四勝。あと一戦で、本戦に出場できる。
本戦で勝ち上がれるかどうかはわからない。
<超級>や準<超級>には勝てないだろう。
さらに言えば、同格……俺以外の<上級>だって決して楽な相手ではない。
俺は戦闘特化のビルドだが、相手も同じはずだからだ。
油断はしないし、過剰におびえることもしない。俺の必殺を相手に何かされる前にぶつけてしまえば、必ず勝てる。
……王国では、俺の力は通用しなかった。
圧倒的な力をもった<超級>や準<超級>に加え、相性の悪い上級がいたこともあり決闘ランカーには成れなかったのだ。
だが、ここカルディナでは話が別だ。
この国では決闘はさほど盛んではない。
決闘設備がギデオンと比べると貧弱であることや、元々ティアンが弱すぎて決闘が盛り上がらなかったというのもあるのだろう。
そこまで無理に世界観を作りこまなくてもよいと思うのだが、まあそれ故にリアリティの高さが生まれているので文句は言うまい。
だが、準<超級>や<超級>は、手厚く扱われているはず。
であれば当然、わざわざカルディナに移籍する意味は薄い。
【闘神】、【殲滅王】を始めとした元々いるカルディナの<マスター>も参加しない。
だから、勝ち目はある。
やってみせる。今度こそ、王国ではかなわなかった目標を成し遂げてみせる。俺は決闘ランカーになってみせる。
いや、今は目の前の試合に集中だな。
さて、次の試合の相手は……え?
「なんだあれは?」
対戦相手の姿を見た瞬間、驚愕した。
そいつを、いやそれを端的に言ってしまえば、
腰蓑を巻き、両手には短剣を一本ずつ手にしている。
首には、試験管のようなものが取り付けられた首輪をはめ、腕に金属製のリングを付けている。
足は「どんな趣味してるんだ?」、といいたくなる不気味な面をかぶっている。
極めつけに蛇のような不気味な目をした鳥の面をかぶっている。
結論を言おう、こいつは変質者、変態の類だ。
そして……よく見ているうちに俺は気づいてしまった。
この半裸の変態のことを俺はよく
対策として調べた情報の中には七大国家の国の二つ名持ち<マスター>の情報もあるから。
王国での<這いよる混沌>及び【擬混沌神 エンネア】討伐事件、そしてレジェンダリアの【霊骨狼狼
ロウファン】事件など様々なトラブルの渦中にいた存在であり、解決における最大の功労者。
「“怪鳥”サンラク……」
未だ上級の身でありながら、複数体<UBM>を討伐した、MVP特典を手にしたレジェンダリアの猛者の一人。
<UBM>の存在は、この<Infinite Dendrogram>においては非常に大きい。
得られる特典武具というオンリーワンのアイテム、それによって得られる名誉。
さらに従来のモンスターとは大きく異なり、
<超級>や準<超級>でさえ、一体も討伐していない者もいると聞く。
一介の上級がそれを為している、というのは大きい。
奴が持っている双剣、あれが《鑑定眼》によれば特典武具であるらしい。
では、俺はこいつに勝てないのだろうか?
答えは――否だ。
特典武具?二つ名持ち?それがどうした。
俺とて条件がそろっていれば<UBM>を討伐することは出来る。
そもそも特典武具の性能がどうであれ、当たらなければどうということはない。
あてられる前に――俺の必殺で潰す。
「試合、開始!」
「領域――展開」
試合開始とともに、闘技場に俺の<エンブリオ>を同時に展開する。
そしてそれと同時に――奴が消失する。
何だこいつは、早すぎる。
まるで見えない。
俺は耐久型だが、【斥候】や【盾士】などのサブジョブでAGIがそこそこ上がっているから亜音速の純竜の動きにだって追いつけないにしても目で追えるし、対応はできる。
つまりこいつはそれよりも……上級職の限界よりも速いということ。
(……超音速機動)
ごく一部……あの【超闘士】や【猫神】と同程度かあるいはそれ以上の速さ。
<超級>や準<超級>といったごく一部しかたどり着けない、ステータス五桁の至高の領域。
俺自身、耐久特化の構成だが<エンブリオ>の補正込みでも未だにENDが五桁に達していない。
だが例外も存在する。それは、圧倒的な速度に至ったもの。
特典武具などの装備による補正か、あるいは<エンブリオ>のスキルか。
二つ名持ちでありながら、”怪鳥”はさほど情報がない。
しいて言うなら、速度特化の前衛であるということだったが……ここまで速いのは想定外だ。
「いや、それがどうした!」
たとえ相手が俺より速くても関係ない!
速度に特化しているなら、なおさら耐久が死んでいるということ。
それこそ一撃でもあてればこいつは死ぬだろう。
何でもありならいざ知らず、この闘技場の結界から出れないという条件なら、俺でも
俺と、俺の<エンブリオ>の必殺スキルを組み合わせれば、確実に勝てる。
すでに俺のテリトリーに入っているのだから。
「《
出し惜しみはせず、俺の<エンブリオ>の必殺スキルを宣言する。
俺の<エンブリオ>【白銀展界 キオネ】の能力特性は、氷結。
それに特化した<エンブリオ>の必殺スキル。この闘技場の内部……半径百メートル程度なら、簡単に凍結させられる。
欠点はクールタイムが二十四時間と長いことに加え、使用中はAGIが半減してしまうこと。
さらにいえば、自分以外を対象外に指定することもできない。
しかし、だ。いずれも一対一の決闘においては問題にもならない。
耐久型の構成にしているのは発動まで耐えるのが目的。自分を中心に発動する仕様上、動き回る速度型とは合わないというのもある。
後は、凍り付いた変態を粉砕して……。
「え?」
凍り付いた氷像はない。
いや、ある。奴は凍り付いている。
空中で、凍っている。
凍っているのに、凍ったままなお動いている。
何かの特典武具か、あるいは〈エンブリオ〉のスキルか。
敗北の二文字が頭をよぎるが。
「まだだ!」
近距離でカウンターを当てればまだ勝機はある。
両手に持った盾を構えて。
直後、幾多の攻撃が俺を襲った。
奴の手によるものではない、奴の腰からいつの間にか生えた触手と、それが掴む武器によって、だ。
「化け物だ……」
それが、HPを全損する直前の、俺の最後の言葉だった。
◇◆◇
『いやー、危なかった。《暴徒の血潮》と触手がなかったら負けてたな』
トーナメント予選。
【猛牛闘士】サンラクの戦績、五戦五勝。
サンラク、予選通過決定。
◇
「お疲れさま、ルスト」
「全然疲れてない。雑魚ばっかり」
「え、えっと周りに人がいるからそういういい方は……」
「突破できない程度の連中なら気にするだけ無駄」
【疾風操縦士】ルスト、予選通過。
◇
「フー、何とか勝てたな」
体高五メテル程度の、黄色の体色をした四つ目の機械巨人。
そこからハッチを開けて、一人の幼女が姿を現している。
ピンク色の髪に銀のフレームの眼鏡をかけている。
彼女――否、彼の名はソウダカッツォ。
『それにしても苦戦したな。メグのキュクロプスがなかったら負けてたかも』
『まあ、なんにせよ。今度こそぶっ飛ばしてやる。首を洗って待ってなよサンラク』
【装甲操縦士】ソウダカッツォ、予選通過。
◇
『AGI型が多かったですが、むしろ助かりましたね。手の内を多くさらさずに駒を進められました』
『確認。私は、役に立ちましたか?』
『ええ、もちろんです。キヨヒメと、
『納得。良かった』
得意げに喜ぶキヨヒメを腕に抱きながら、鎧の巨人は一人の男のことを考える。
【狙撃魔手】サイガ‐0、予選通過。
◇
次々と狼は決勝へとその足を進める。
されど。忘れることなかれ。
何も強者は……旅する狼のみにあらず。
「予選突破は出来たわ」
「フフフ、戦えるのが楽しみだわ!」
「ケイに、名前隠しに、そしてーー
【■■■】
To be continued
ちなみに自信満々だったのに予選落ちした人がいるらしいっすよ。
一体、どこの何ーサ―・ペンシルゴンなんだ……。
???「いや、あの私のビルドだと近接戦がきつくてさあ。そもそも私ってどちらかと言うと魔法職なわけで決闘だと本領が(略」