<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
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8月9日 修正
□某月某日・地球
【旅狼】
鉛筆騎士王:さっきカッツォ君と合流できました。
鉛筆騎士王:というわけで、あらためてぶっ潰しに行きます
鉛筆騎士王:まあ資料とかはすでに送ってあるので
鉛筆騎士王:特にいうことはないけどね
鉛筆騎士王:とりあえず集合時間に遅れないこと
サイガ‐0:はい
オイカッツォ:了解
サンラク:わかってる
□【猛牛闘士】サンラク
レイと一緒にログイン。
とりあえず、ペンシルゴンと合流しなきゃならん。
さっきペンシルゴンからカッツォと合流したという連絡も受けているので、全員で合流して<這いよる混沌>にカチコミかけることになるのだろう。
俺とカッツォを前衛として特攻させたうえで、俺たちごとあの外道の自爆ガードナーで爆破するつもりだろうか。
やっぱり先にあいつを始末するべきでは?と思ってしまうが、流石に一度協力するといった手前、何もなしで裏切るのもな。
やるなら、あいつが明確にこっちをはめた後だな。
そのうえで、どう対処すべきか……。
あ、そうか。能力の関係上、レイも後衛に回るからいざとなったら銃殺してもらえばいいだけの話か。
「……父上、母上」
「どうかしましたか、キヨヒメ?」
「あれらは何?」
それら奇妙なものだった。
端的に言えば、三匹の獣。
どうやら足早に移動しようとしているみたいだ。
しかもそのうちの二匹には見覚えがある。
見覚えのあるのは犬とライオン、まあフィガロとシュウだな。
そして見覚えがない方の獣は、
それもシュウやフィガロのような着ぐるみではない。
むしろステラをはじめとした、レジェンダリアで見てきた獣人に近い。
モグラ人族?
ていうか紋章がないからティアンっぽいな。
「……質問。シュウとフィガロ、どうしたの?」
『うん?ああ、キヨヒメとサンラクとレイか』
だいぶ慌ててるみたいだけど、ひょっとしてクエストかな?
だとすると邪魔になりかねないが。
ライオン着ぐるみ、もといフィガロも俺達に気付いて話しかけてくる。
「どうもついさっき、妹さんを拉致されたそうだよ。<這いよる混沌>とかいう野盗クランにね」
『それマ?』
ちょうど狙ってるクランの名前が出てきてびっくりなんだが。
え、マジで?
ティアンを拉致することもあるとは聞いてたけど、こんな偶然ある?
『マジだぞ』
「あいつら、妹を!さらったんですモグ!」
『んで、今から俺達で奪還しに行くワン。サッサとしねえと取り返しがつかないしな』
つまり、NPCを護衛しつつ別のNPCを奪還するクエストか。
正直面倒な類のクエストだ。
この世界は妙にリアルだし、報酬も期待できないだろう。
というか。
『フィガロ、シュウ、お前ら<這いよる混沌>の居場所分かってるのか?』
「実は知らないんだ、何しろ僕は初めて聞いていたからね……シュウは?」
「一応知ってはいるし、情報も買ってきて、目星はついてるよ……能力はリーダー格のやつしか知らねえけどな」
『そうか……なら、<這いよる混沌>の情報教えようか?』
『いいのか?』
『条件はあるけどな』
「『条件?』」
「じょ、条件ってなんですモグ?何でもしますモグ!」
難易度の高いクエスト。
俺はそういうのは嫌いじゃないんだよ。
外道に連れまわされて、野党クランを潰すよりも。
『フィガロ、シュウ。俺にもクエスト手伝わせてくれ』
こう言うシチュエーションのほうが、俺は断然
「僕たちは構わないけど、いいのかい?」
『ああ、そっちの方が楽しそうなんでな』
どうせ後々<這いよる混沌>とはぶつかる予定だったんだ。
早いか遅いかの違いでしかないなら、今やったほうがいい。。
後ぶっちゃけ戦車乗せてくれたシュウと、いきなり爆破してきた鉛筆と、どっちを手伝いたいかって言われたら、ね?
「サンラク君。私もやります」
「……同意。私も父上と母上についていきます」
『レイ、ありがとう』
毎度自分のやることに巻き込んでしまっているのに、そうやって付き合ってくれる、支えてくれるのが本当にありがたくて、嬉しい。
今度デートでもして埋め合わせしようかな。
【クエスト【救出――エリーゼ・モール 難易度:九】が発生しました】
【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】
お、クエスト発生のアナウンスが……レイのほうを見ると、彼女にも来てるみたいだな。
なんにせよ、クエストが発生してるんならなおさら手伝わない理由はない。
難易度九……あの【ロウファン】討伐以上の難易度なのは気になるが、それでビビってたら多分デンドロはできない。
何ならゲーマーもやってられない。
『じゃ、このメンツで行くワン』
「うん」
「……ご協力、感謝しますモグ」
「やりましょう」
「よし、行こうぜ」
さあ、クエストの始まりだ!
◇
さて、行くことが決まったので具体的にどうしようかという話になる。
『とりあえず、アジトまで行くための移動手段は俺に任せろワン』
『あー、バルドルか』
シュウの<エンブリオ>、喋る戦車のバルドルだ。
詳細は知らないが、TYPE:チャリオッツ系列の<エンブリオ>だと思われる。
その移動速度はかなりのものであり、俺とレイを乗せてもかなりはやかったと記憶している。
しかし、そもそもなんでバルドルなのに戦車なんだ、と思わないでもない。
せめて同じチャリオッツにしてもフリングホルニーー船じゃないかと思うんだが。
光の神らしく、戦車の砲から光弾でも撃つのだろうか。
「五人も乗って大丈夫なのかい?」
『問題ないワン。そもそも普通の戦車でもそれくらいの数なら乗れるはずワン。バルドル、第四形態』
「READY」
シュウの言葉にこたえ、彼の<エンブリオ>が呼び出される。
俺たちを乗せて、戦車は動き出した。
<這いよる混沌>の本拠地を目指して、獣たちは向かう。
■<這いよる混沌>本拠地
「オーナー」
「何だ?」
「なんか人がアジトに近づいてきます。数は五名。近づき方からして、アジトが割れてるみたいです」
<這いよる混沌>のクランメンバーの一人ーーレーダー型の<エンブリオ>をもつーーはオーナーであるオルスロットに対して、シュウたちの接近を知らせた。
その場には数名の<マスター>がいたが、その多くが動揺した。
今まで一度もこの本拠地を襲撃されたことはなかったので無理もないが。
しかし、動じない者もいる。
「わかった。迎撃しよう、俺も出る。にも連絡しておけ」
「了解です。けど、大丈夫ですかね?アジトの位置割り出してるし、少数とはいえ結構ヤバい相手なんじゃ」
「問題はない」
心配する部下とは裏腹に、オルスロットは落ち着き払っている。
それは、虚勢ではなく彼なりの根拠あってのものだ。
オルスロットは不敵な笑みを浮かべ、座っていた椅子から立ち上がる。
「俺がこのゲームの中で、誰かに負けたことがあったか?」
いまだこの<Infinite Dendrogram>での対人戦で無敗を誇る男は、自信に満ちた顔でそういった。
<這いよる混沌>は、獣たちを迎える準備を始めた。
□同時刻・地球
【旅狼】
サンラク: というわけで先に行ってきます
サンラク: そういうことでよろしく
モルド:もしかしてめちゃくちゃ言ってない?
ルスト:ペンシルゴンが見ていない可能性は考慮していないのか
鉛筆騎士王:サンラク君!
鉛筆騎士王:あー、書き込んだ時間的にさてはもう間に合わんな?
To be continued
あ、このモグラ兄弟はあれです。
ブローチの妹ちゃんとその兄です。