ロングたちは2008年に、オーストラリアの地層から、体内に胚を確認できた板皮類マテルピスキス Materpiscisを報告している。なんと、マテルピシキスの母体と胚の間には細いチューブ状の構造が見られた。ロングたちによると、その構造は「へその緒(臍帯)」だという。
へその緒は、母体の中で、胚へ栄養を送る通り道である。つまり、へその緒が確認できたということは、母体の体内で胚を育てていたということになる。そなわち、マテルピスキスは「胎生」だったということだ。これも、脊椎動物の進化史における、最古の胎生の証拠である。
いま見てきたように、板皮類の化石から、進化史上の重要な発見が相次いでいる。もちろん、ミクロブラキウスの交尾もマテルピスキスの胎生も、板皮類全体の共通の特徴であったかどうかはわからない。それは、今後の発見や研究しだいで明らかになっていくことだろう。いずれにしても、板皮類は、現在注目が集まり、集中的に研究されている分野なのだ。