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いとこのいいなりで殺害 エスカレートする犯罪の謎

2022.06.28 公開

2009年8月、男1人が自分たちの叔父を殺害するため叔父の家に訪れていた。

叔父を殺害しようとしていたのは、高橋隆宏という37歳の男で、 殺害をメールで指示していたのは新井竜太という41歳の男だった。この2人はどんな犯罪にもほとんど躊躇なく手を染めてきた極悪ないとこ同士だった。犯罪は、竜太は悪巧みを考える担当で、隆宏がほぼ疑いなく実行する担当だったという。一体、なぜ、実行役の男は、いとこの言いなりになったのか?そして、なぜ、極悪な犯罪をエスカレートさせていったのか?

そこには幼い頃の環境や、絶望の時に助けてくれたという複雑な感情と、一方で、完全犯罪をやってのけたという、恐ろしい自信が関係していた。

竜太は母親が社長を務める会社で内装工事の仕事をしており、人当たりがよく、誰からも慕われていた。が、その一方でこの男には裏があり、いとこの隆宏を使い、借金の取り立てなど厄介ごとを引き受ける闇の仕事で報酬を得ていたという。さらに金が必要な人を見つけわざと交通事故を起こさせ保険金をだまし取り、分け合うなど、金になることならなんでも行っていた。

どんな時にも悪さをするときは竜太が考え、隆宏が実行するという関係性だった。

今回叔父を殺害しようとしていた経緯は、4ヶ月前、叔父の家の一部が隣家の火災が原因で焼け、その改修工事を請け負ったのが竜太だったという。その際の火災保険の手続きなどを竜太が行い、保険金およそ800万円が振り込まれたのを見た竜太は、叔父に「葬儀屋やらない?」 と提案。提案に乗った叔父は葬儀会社を作るつもりで口座に500万円を入れ、その通帳と印鑑を竜太に渡すことに。

しかし叔父の姉が「あんたさ、どうやって仕事とってくるの? 」と口を出し、叔父は葬儀屋の話を考え直したいため会社の通帳を返すよう求めた。が、 竜太は応じなかったため、叔父が口座を停止させにいくとすでにお金は使い込まれており、残金が2万円しか残っていなかったという。

竜太には妻との間に2人の子どもと、さらに愛人もおり、愛人の家賃や生活費は全て竜太が払っており、多額の滞納金があったという。そのため、叔父から預かった金で滞納金の支払いや生活費など私的に使ったと思われた。

お金を使い込まれて怒った叔父は竜太に「金を返せ!通帳も印鑑もすぐに返せ!返さないと裁判を起こす!」と怒鳴り込んだ。それに怒った竜太は隆宏に「いきなり葬儀屋やらないと言ってきやがって!金返せとか言いやがった!……マジで許せねぇ……やっちゃってくんねぇか? 」と自分が金を使ったことを責められるといとも簡単に殺人を指示。叔父の家の合鍵を渡し、隆宏も「じゃあ、今日行きます」と了承したという。

隆宏が竜太のいいなりになってしまったのには、幼少期の強い孤独感があったという。小さな弟を可愛がる両親に対し孤独感を感じていた隆宏は中学生の頃から素行が悪くなり、高校を卒業後には実家から追い出されるように竜太の家に住み込みで働くようになったという。4歳年上の竜太は親分肌で友達も多く、隆宏は憧れを感じ、また初めてできた家族のようにも感じていたという。

2002年には隆宏は傷害事件を起こし逮捕され4年の実刑判決を受けたが、出所後も竜太は変わらず接してくれ、隆宏は竜太にだけは離れて欲しくないうえに、自分の存在を認めてほしかったと思うようになっていたという。そうした幼少期の孤独感の反動から、どんな犯罪にも躊躇なく行うようないいなりになってしまったのだ。

そして叔父の家に侵入した隆宏は持参した包丁で叔父を殺害した。2日後、近隣住民の通報を受け、駆けつけた警察官が遺体を発見。警察は殺人事件として捜査を進め、金銭トラブルを起こしていたとしてすぐに竜太に行き着いた。こうして2010年6月、竜太と隆宏は交通事故偽装の保険金詐欺の容疑で逮捕・拘留された。

取り調べ中に、隆宏は自分が叔父を殺したと自供。一方で竜太は全ての罪を隆宏にかぶせ、全てを隆宏が一人でやったことだと主張していたという。捜査では父と金銭トラブルがあったのは竜太だったため、刑事は「新井竜太をかばってんのか?」と尋問を続けた。竜太は罪を全て隆宏に被せていると刑事に聞いた隆宏は、たった一人の家族のような存在に裏切られたと感じ、「……新井竜太に指示されました」と自白。叔父殺害の全てを話したという。

そして、その2週間後、「もう一人、人を殺しています」 と隆宏は誰もが想像しなかった供述をする。それは警察すら事件だと思っていない事故死と認定された、完全犯罪だった。

4年前、隆宏は40代の女性と知り合い、その女性に養子縁組を依頼。戸籍上、女性は隆宏の養母になり、その状態で女性に借金をさせたり、生活保護を受給させたりと金を得る道具として利用していたという。さらに詐欺まで行わせ、2007年6月に女性は詐欺の容疑で逮捕・起訴される。

この女性は隆宏については何も喋らなかったが、いつか警察にバレると思った隆宏は竜太に相談。それを聞いた竜太は「保険賭けて殺しちゃえばいいんじゃない?」と提案。そして女性が釈放されたのち、竜太の会社で数日間働かせ、損害保険として3600万円の死亡保険に加入させたという。

そして、指定したホテルでの滞在を指示し、滞在させたのち、そのホテル代を請求する借用書にハンコを押させ、その借金返済を理由に女性を働かせたという。

耐えられなくなった女性は、竜太の母親に相談し、母親が激怒して竜太に電話。「明日やるぞ」 と隆宏に殺害を促したという。

そして翌日、自宅で女性に睡眠薬入りの栄養剤を飲ませ、朝8時ごろ風呂に沈ませ殺害を決行。11時すぎ、風呂に沈む女性を母親が気づき救急隊員に通報するもすでに死亡。

竜太は警察に対し「(彼女は)すごくお酒が好きでして…一升瓶、半分近く飲んでいたと思います。昨夜はそのまま寝てしまって、それで、今朝みんなで朝食を食べに行ったんですが彼女、起こしても全然起きなくて。それで、寝たままにして僕らは家を出ました。11時過ぎに、ごはんを食べて帰ってきたら、あんなことに…」と説明し、警察は、女性が飲酒によって浴槽内で寝込んでしまい溺死した事故死として処理。  事件性はないと判断され、司法解剖は行われなかったという。

翌日、竜太は女性が死亡したことを保険会社に伝えたが、保険会社の社員は被害者が40代と比較的若いことと、息子である受取人が30代と年齢が近いことなどから本当に事故死なのかという問い合わせを警察に行うが、事故死の結論は変わらなかった。その結果、2008年7月に女性の死亡保険金、3600万円が全額支払われたという。そして隆宏が800万円、竜太が残りの2800万円を受け取った。

この事件は隆宏の自白が無ければ闇に埋もれており、もしも、あのとき警察が事件性を疑い司法解剖を行っていれば女性の体内からは睡眠薬が検出され、2人の犯行が明るみに出た可能性は高く、叔父の殺害もなかったはずである。

その後、警察は司法解剖を行わずに事故と処理したことを謝罪し。竜太は取り調べでも裁判でも一貫して否認を続けたが、保険金3600万円のうち2800万円を竜太が受け取っていることや叔父殺害の際のメール内容などから竜太が主犯であることが認定され死刑が言い渡された。

2015年12月4日、最高裁で死刑が確定。新井竜太死刑囚は現在、収監中である。

自分を慕ってくるいとこを思いのままに操り、何のためらいもなく犯行をエスカレートさせていった新井竜太死刑囚が2人の命を奪った罪は到底許されるものではない。

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