アノマロカリスの新たな復元
分類群の呼び方が変わり、進化上の位置づけが変わり、さらには外見も、1990年代に発表された"基本形"からすこしずつ変わってきた。
基本形では、ナマコのように平たく細長い体をもち、その左右にそれぞれひれが11枚と後端ちかくに3枚の尾びれがある。頭部の先端付近には2本の触手があり、その触手は細かな節に分かれていて、内側には細かなトゲが並んでいる。頭部の上面からは2本の柄が伸びていて、その先には大きな複眼がついていた。頭部の底には細いプレートが放射状に並び、プレートの内側に向かって鋭い突起が伸びていた。
さらに変化を遂げる。しかし真実は?
2014年に大英自然史博物館のアリソン・C・ダレイとグレゴリー・G・エッジコムが発表した新しい復元では、基本形との大きな違いとして、頭部に楕円形の甲皮が、背中とひれには鰓が追加された。
その後もいくつかの新たな指摘がなされている。
例えば、2017年には甲皮は長軸を横方向に向けた楕円形であるとの指摘があり、2019年には甲皮は頭部の上面だけでなく側面にもあった可能性が指摘された。
とはいえ、これらの指摘が正しいとは限らない。新しい復元が認められるかどうかは、これからの議論と検証しだいということになる。まだ、研究は続いていくのだ——。
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多様な生物が出現する「エディカラ紀」から、動物たちが本格的な生存競争を始める「カンブリア紀」は、彼らが化石となって、今にその存在を伝えはじめる時代でもありました。
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いずれも『カラー図説 生命の大進化40億年史 古生代編』より。本書では、ご紹介したような、リアルで臨場感あふれるイラストレーションを多数掲載しています。
この時代、生命史の舞台は、まだ海域だけでしたが、やがて時の経過とともに、生命はさらに進化を重ね、多様化し、陸域への進出を志すものが現れてきます。また、次代を残すという生命の一大事業についても、"交尾"という大きな変化が生じます。次回は、この変革の時代である「シリル紀」から「デボン紀」までの生物を見ていきたいと思います。
次回は〈【古生物学ミステリー】化石の突起が意味するのは、最古の"交尾"!?〉は、7月4日公開です。
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