既発見の化石からも新発見!名前も姿も変え続ける、5億年前の「奇妙なエビ」

更新し続ける過去の学問・カンブリア編
ブルーバックス編集部 プロフィール

この十数年の新発見による再分類への動き

さて、そのアノマロカリスの仲間をすべて、アノマロカリス類として分類していたのが2010年代の初め頃までのことだった。その後、2010年代の後半から研究が進み、アノマロカリス・カナデンシスの近縁種の発見が相次ぎ、このグループもかなりの大所帯になった。

そのため、2022年現在、「アノマロカリス類」は「アノマロカリス・カナデンシス」を軸とした小規模なグループを指し、他にも近縁のグループがいくつも確認・定義されている。そして、そうしたグループを統合して、「ラディドンタ類」と呼ぶことが多くなってきた。しかし、この呼び方はアルファベット表記のRadiodontaのカタカナ表記に過ぎず、日本の古生物学会の"公式の呼び名"ではない。今後、研究が進んでいけば、公式の呼び名ができることだろう。

呼び方が変わっただけではなく、進化史上の位置づけもすこし変わってきた。2010年代の初めまでは、アノマロカリス類を節足動物だと考える研究者も多かった。しかし、ラディオドンタ類として再分類されるとほぼ同時に、節足動物ではなく、節足動物が誕生する前の特徴をもった動物群とされるようになったのだ。

いうまでもなく、節足動物は、現在の地球上でいちばん成功している動物群である。昆虫類をはじめ、エビ、カニなどの甲殻類など、陸、海、空で栄えている。節足動物がどのように誕生したのかは、生物の進化史上の大きな謎とされている。ラディオドンタ類の研究の進展は、その大きな謎に新たな光を当てたということができるだろう。

さらに、2020年には、ラディオドンタ類の"一歩進化した先"のキリンシア Kylinxiaが発見された。キリンシアはラディオドンタ類と節足動物の間をつなぐ動物とされている。

【イラスト】キリンシアキリンシアの復元図 illustration by  yoshihiro hashizume

この分野では、これからも新たな発見があるだろう。読者のみなさんにも、ぜひ注目していただきたい。

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