社会
NTTドコモ 先月の大規模通信障害 延べ1290万人に影響
これで通信障害の影響は、延べ1290万人に及んだ形となります。
また、当時、NTTドコモは通信障害が起きてからおよそ3時間後にいったん「回復した」と公表しましたが、その後も通話などがつながりにくい状況が続いたことについて「顧客目線で情報発信ができていなかったことは問題があった」としています。
これを受けて今後は障害の原因となったネットワーク設備の工事手順をより明確にするなど、再発防止策を講じていくとしています。
また、井伊基之社長をはじめ、合わせて8人の役員が今回の通信障害を受け、役員報酬の一部を自主的に返上することを明らかにしました。
通信障害の経緯
タクシーの決済端末や自動販売機など、通信でつながっているIoT端末の位置情報を管理するサーバーを新しいものに切り替えようとした際に不具合が生じたことが発端です。
不具合を受けて、NTTドコモは古いサーバーにいったん戻そうとしましたが、この過程で、通信でつながっているIoT端末から大量の情報が一斉に寄せられる事態になり、ネットワークの大混雑が生じました。
復旧にあたっては、私たちの携帯電話の音声通話やデータ通信の利用を抑え、ネットワークの混雑を一時的に解消する必要がありました。
そこでNTTドコモは、午後5時37分から2時間20分にわたって道路の通行止めのように通信規制をかけました。
このうち18分間は一部の県を除いて全国に規制が広がり、およそ100万人がまったく通信を利用できない状態となりました。
さらにこの規制を解除したあとも、大勢の人がいっせいに通話やデータ通信を再開しようとしたため、今度は道路の車線規制のようにネットワーク利用の制限措置をとり、通信が利用しづらい状況が続きました。
完全に復旧したのは、29時間後の翌15日、午後10時でした。
通信障害の影響は、携帯電話の通話だけでなく、スマートフォンを使ったSNSでのやりとりやキャッシュレス決済のほか、タクシー料金の支払い、シェアバイクの利用など広範囲におよび、通信が暮らしを支える重要な生活インフラとなっていることを改めて示す形となりました。
一方、今回の通信障害で「回復した」と公表したあともつながりにくい状態が長時間続いたことを受けて、NTTドコモは、技術的なトラブルが解消したタイミングではなく、元どおりに利用できるようになった時点で「回復した」と公表するなど、情報発信のあり方も見直すことにしています。
井伊社長「大変な責任を感じている」
そのうえで井伊社長は、音声通話でおよそ460万人、データ通信で830万人以上に影響が及んだことについて、「決して少なくない、大きい数字だと認識していて、責任を重く受け止めている。社会基盤として通信の安定性が求められる中、自分たちが実施した工事が通信障害の引き金となったことに大変な責任を感じている」と述べ、再発防止を徹底する考えを示しました。
また、親会社のNTTの澤田純社長も「障害はあってはならない。工事を行ううえで、何が想定されるか、細かく丁寧に議論し意識をあわせて実施するという基本に戻らないといけない」と述べました。
金子総務相「再発防止に万全を」
そのうえで「再発防止に万全を期すとともに、同じような障害がほかの事業者でも発生しないよう、今回の事故の教訓を業界全体で共有してもらいたい」と述べ、再発の防止を要請しました。
総務省は、報告書の内容を精査し、行政指導を行うことも含め対応を検討することにしています。
過去の大規模通信障害
影響を受けた利用者が多かったのは、2018年12月のソフトバンクの通信障害で、4時間半にわたっておよそ3060万人が通話とデータ通信を利用できなくなりました。
総務省は、ソフトバンクがこの年に、あわせて3回、通信障害を発生させたことを重くみて、再発防止の徹底を求める行政指導を行いました。
KDDIも、2013年4月に最大288万人がメールを送受信できなくなる通信障害を起こし、その後もトラブルが続いて行政指導を受けたことがあります。
今回、全国規模の通信障害を引き起こしたNTTドコモも、去年5月、西日本の一部の地域で最大220万人がデータ通信が利用できなくなるという障害があったばかりです。