内閣府が性別に基づく無意識の思い込みをなくすフリーのイラスト配布
パイロットといえば男性の仕事、保育士といえば女性の仕事。
このような性別による偏った考えや無意識の思い込みをなくそうと、内閣府男女共同参画局は、性別の固定的な役割分担にとらわれないフリーイラストの配布を始めた。
このイラストには、保育士、パイロット、政治家、土木技術者などの職業25種と乳児の世話、炊事、保護者会の参加、介護、庭の草取りなどの生活シーン15種の男女がそれぞれ描かれている。
このイラストは、内閣府男女共同参画局のHPから、名前や使用目的などを登録すればダウンロードして使用することができる。
(ただし、公序良俗に反するもの、特定の個人・団体の政治活動または、宗教活動を著しく助長するおそれがある制作物への使用などは禁止されている。)
では、なぜ今回このようなイラストを無料で配布することにしたのか?内閣府男女共同参画局の担当者に詳しく話を聞いた。
”性別による無意識の思い込み”があるイラストが散見
――男女別のフリーイラスト配布することになったきっかけは?
官民問わず、資料などに使われるイラスト素材を見ると、例えばパイロットなら男性、保育士なら女性という固定的役割分担に捉われたイラストが多く見られました。内閣府男女共同参画局では、性別による固定的役割分担といった無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の解消の一助とするため、性別に捉われない様々な「職業」や「社会生活場面」を想定したイラストを作成しました。
――パイロット、保育士などの職業はどんな基準で選んだ?
現時点において各種資料などに使われているイラストにおいて、性別による固定的役割分担に捉われて描かれているであろうと思われる職業を選びました。例えば、電車の車掌や駅員などは10数年前なら男性というイメージが強かったですが、現在はそういったイメージは解消されつつあるものであるため今回のイラストには入っておりません。
生活シーンにも性別による固定的役割分担意識がある
――性別による無意識の偏見とは?
土木技術者、旋盤工、溶接工、といった職業。こういったものは、職業だけみると男性だと思う方が多いと思います。これが性別による無意識の偏見です。
――職業だけでなく、生活シーンを入れた理由は?
生活の中にも、例えば、妻がご飯を作る、夫が草むしりする、という性別による固定的役割分担意識があると考えてます。しかし、今は「男は外で働き、女は家庭」というのは必ずしも一般的ではなくなったこともあり、各家庭の状況によって、男性がご飯を作ることもあれば、女性が草むしりすることもあります。こういった性別による固定的役割分担の無意識の偏見は生活の中にも多々見受けられると考えられ、職業だけでなく生活シーンも入れています。
特に子供たちが見る機会を増やしたい
――これらのイラスト、どのように利用してほしい?
第5次男女共同参画基本計画の基本的方針の中で、「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が男女どちらかに不利に働かないよう、メディアとも連携しながら幼少期から大人までを対象に広報啓発等に取り組む必要がある。」と書かれています。
幼少期から大人までと記載されているとおり、幅広い年代が目にできるよう、自治体や学校、民間企業なども積極的に利用していただきたいと思っています。特に、小学生のプリントなど教育の場面などに使うことで子供たちの見る機会を増やすことは、成長過程における固定的役割分担意識の醸成に影響を与えることとなると思うので、それが、将来的に社会全体における無意識の偏見の解消につながっていくのではないかと考えております。
――要望があればイラストの種類が増えることはある?
要望があれば増やすことも検討したいと考えています。
――性別による無意識の偏見について、調査したことはある?
まだ国内で本格的な調査をしたことはないと認識していますが、ぜひやっていきたいと考えております。世代や地域によってさまざまな違いが見られるのではないでしょうか。
――内閣府男女共同参画局が目指す社会とはどんなもの?
性別による固定的役割分担意識による無意識の偏見から生み出される様々な問題、また、DV、セクハラなど今ある男女間の問題を1つ1つなくしていき、男女の性差に捉われず活躍できる社会です。
女性議員の割合など世界に比べて遅れていると言われる日本だが、イラストひとつでもこうした取り組みを地道にすることによって、将来的に“無意識の思い込み”のない社会へとつながっていくのかもしれない。