第2回 数と式
数学Iの時間です!
MCはみみずくのアイク、みなさんといっしょに学習するのは、藤本ばんびさん、酒井蒼澄(あすみ)さんの2人です。
そして数学をわかりやすく教えてくれるのは、湯浅弘一先生です。
今回は「式の展開」から始めていきましょう!
(x+3)2=x2+6x+9
上の式の左辺と右辺を見比べて気づくことはありませんか?
ばんび「数が増えたかな?」
あすみ「かっこが外れたからそれぞれの数字のまとまりになって、数字としてイメ-ジしやすい感じがするかな」
簡単に言うと、「式の展開」は かっこを外した形にすることです。
展開の「展」の字には、「広げる」とか「並べる」という意味があります。
湯浅先生によると「数学はイメ-ジすることが大事」。そこで、イメージするところから始めます。
上の式を展開してみましょう。
かっこを外すには どうしたらいいでしょうか?
2(a+3) は、
2×(a+3) ということですよね。
図でイメ-ジするために、右図のような長方形を思い浮かべてください。
縦の長さが2、横の長さは、(a+3)。
2(a+3)は、図中の2つの長方形の面積の合計ということです。
左の部分の面積は、
2×a=2a
右の部分の面積は、
2×3=6
です。
2つの長方形を合わせた面積は2a+6なので、
2(a+3)=2a+6
かっこが外れて展開できました。
式を展開するには、まず"項"に区切るのがル-ルです。
まずは2人にクイズに答えてもらいます。
上の文字式を正しく項に区切っている点線をすべて選びましょう!
あすみ「”すべて”って言ってたよね」
ばんび「1つじゃないってことかな?」
ばんび「項だから、2とa+3かなって思って、その塊で分けてみました」
あすみ「2とかっこの間は絶対切れるって自信があったんですけど、かっこの中はちょっと自信がない。でも”すべて”って言ってたからつけちゃお、みたいな(笑)」
2人は2の後ろに区切りを入れましたが、2は(a+3)の係数です。
実は、項は+とーの符号の前で区切り、かけ算の場所では区切りません。
そのため、この問題ではaと+の間で区切るのが正解です。
「すべて選びましょう」という問題でしたが、実は正解はこの1つだけでした。
項を区切ることができたら、次はどうやって計算したらいいのでしょうか?
先ほど面積でイメージしたときのように、かっこの前の2をかっこの中へ、ひとつひとつ左から右へ、かけていきます。
2×a=2a
2×3=6
この2つを合わせると、
2a+6
となり、先ほどの大きな長方形の面積と同じになっています。
いま行った計算のように、かっこの前の係数を、かっこ内の項にそれぞれかけることを「分配」といいます。
実際に次の式を展開してみましょう!
-2(x-1)
あすみさんは、かっこの中の項の符号に注意して、上の画像のように式を展開しました。
湯浅先生は「いいですね!」と言ってから、赤いペンで式を区切りました。
湯浅先生「一つだけ!最初に項に区切ってからやって欲しかったかな。あとは正解ですね」
(a+b)(x+y)
上の式は、どのようにイメ-ジしたらいいのでしょうか。
かっこの中は2つとも、多項式です。
多項式と多項式のかけ算をイメ-ジすると、上の図のようになります。
これは縦の長さがa+b、横の長さがx+yの長方形です。
4つの長方形の面積はそれぞれ、ax ay bx byになりますね。
実際に計算するときはどうやって展開したら良いでしょう?
湯浅先生「まず最初に項に区切ります。それから左から右へ、左から右へと……」
このようにaとbをそれぞれ分配して計算すると
(a+b)(x+y)
=a×x+a×y+b×x+b×y
=ax+ay+bx+by
となります。
湯浅先生「この4つの面積の合計とイメ-ジがつながってきますよね」
(x-2)(x+3)を展開しましょう!
ばんび「さっきは+だったのに-になっちゃった。面積で考えてみると?」
ばんびさん、マイナスをイメ-ジするのは難しかったようですが、次のように答えを出しました。
(x-2)(x+3)
=x2+(-2)×x+3×x+3×(-2)
=x2+-2x+3x-6
湯浅先生「考え方はすごい!だけど……。ここちょっと気にならない?プラスとマイナスがいっしょに書いてある。」
ばんびさんの計算結果の「x2+-」の部分には かっこが必要です。
湯浅先生「ここも気になるんだな。-2x+3xこういうのを同類項っていうんだよね。だから-2xと+3xを合わせたら何になるかな?」
ばんびさんの解答にかっこを加え、同類項をまとめたら
(x-2)(x+3)
=x2+(-2x)+3x-6
=x2+x-6
となりました。
乗法公式は、式の展開を簡単にできる公式です。
それぞれの公式の左辺を展開すると、右辺になります。
一つずつ見ていきましょう!
乗法公式「平方タイプ」
ひとつの多項式の2乗、つまり平方の形になっている場合です。
覚え方は「前2乗、かけて2倍、後ろ2乗」!
「前2乗」の「前」は項に区切ったときの「前」、つまりaの部分です。
これを2乗するので、aの2乗。
「かけて2倍」は、前の項と後ろの項をかけて2倍。つまり2abです。
後ろ2乗はbを2乗。
「前2乗、かけて2倍、後ろ2乗」で
(a+b)2=a2+2ab+b2
となります。
乗法公式「和と差の積のタイプ」
2つのかっこの中が、
a+b…和
a-b…差
となっている、多項式どうしの積を展開する場合の公式です。
「2乗の差」は、
(前の項の2乗)-( 後ろの項の2乗)
になるということです。
「和と差の積は2乗の差」で、
(a+b)(a-b)=a2-b2
乗法公式「(x+a)(x+b)のタイプ」
それぞれのかっこの中の、左の項が同じで右が異なる場合です。
まずxを2乗、次に右側の項どうしを足して左の項とかける。
最後に右側の項どうしをかける。それらすべてを足して、
(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab
となります。
上の問題を例に、乗法公式の使い方を見ていきましょう。
この式はかっこの右側に2乗があるので、平方タイプです。
(a+b)2=a2+2ab+b2
公式と見比べると、aがxにあたり、bが3にあたります。
よって、
(x+3)2=x2+6x+9
となります。
次は、違う公式の問題!
(x+5)(x-5)を、乗法公式を使って展開しなさい。
ばんび「和と差だから、真ん中の公式かな?」
(a+b)(a-b)=a2-b2
の乗法公式に当てはめ、aをx、bを5として計算します。
(x+5)(x-5)
=x2-52
=x2-25
ばんびさん、正解です!
和と差の積は 二乗の差
二乗の差は 和と差の積
を言えるようになるといいですね!
次の問題です!
(x-2)2 を乗法公式を使って展開しなさい。
あすみ「(x+2)2は乗法公式の平方タイプで展開できるけど、(x-2)2はできるのかな?」
湯浅先生「平方タイプの符号が-(マイナス)のときは、おまけの乗法公式ってのがあるんです!」
先ほど見た乗法公式の平方タイプと、「おまけ」の平方タイプのマイナスバ-ジョンを比べてみましょう。
どうして「おまけ」かというと、マイナスバージョンは上の画像のように、2箇所マイナスになっているだけなんです。
この公式を使って、(x-2)2を展開します。
aにx、bに2を代入して…
(x-2)2
=x2-2x・2+22
=x2-4x+4
となります。
乗法公式の平方タイプの符号が変わるだけですね。
アイク「式の展開どうだった?」
ばんび「最初わからなかった問題も解けたから楽しかった!」
あすみ「ばんびとがんばって解いたし、乗法公式もバッチリです!」
湯浅先生「これから勉強していく上で、式の展開は色々なところで出てきます。しっかり使いこなしましょう」
それでは、次回もお楽しみに!!
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