奨学金を払えないときの9つの対処方法を解説!滞納時のデメリットもチェック
ファイナンシャルプランナー
大学卒業後、多数のメディア編集業務に従事。その後、ファイナンシャルプランナー2級の資格を取得。FPとしての専門知識を活かし、カードローン、FX、不動産、保険など様々な情報におけるメディアの編集・監修業務を行ない、これまで計2000本以上の担当実績を誇る。ローン審査経験者などのインタビューなども多数行ない、専門知識と事実に基づいた信頼性の高い情報発信を心がけている。
奨学金を払えない人は多い
延滞件数は35万件超
奨学金は卒業してから支払いが始まりますが、就職先の給料や生活費などの家計バランスが上手く取れず奨学金が払えない人が多くいます。
日本学生支援機構によると、第一種と第二種を合わせた奨学金の滞納件数は、約35万5,000件にも及びます。
奨学金の返済は想像よりも新社会人にとってきついものだと指摘する声も多いです。
奨学金を払えない主な理由
奨学金を払えない理由は人によって異なりますが、日本学生支援機構のアンケート調査によると返還が難しい主な理由は次の表の通りです。
払えない理由 | 割合(複数回答あり) |
---|---|
本人が低所得 | 67.20% |
延滞金額の増加 | 53.80% |
本人の借入金返済 | 34.80% |
親の経済困難(本人が親をサポート) | 29.80% |
親の経済困難(親が奨学金を返す約束) | 20.80% |
本人が無職(失業中) | 17.70% |
家族の病気療養 | 13.00% |
多忙(金融機関にいけない) | 9.70% |
配偶者の経済困難 | 9.10% |
本人の病気療養 | 7.10% |
返すべきと思っていない | 1.50% |
本人が学生(留学を含む) | 1.40% |
その他 | 7.30% |
上表から奨学金が払えない理由として一番割合が大きいのは、本人の低所得によるものだと分かります。
売り手市場の就職活動になってきているとは言え、若いころは給料が低い雇用形態も多いです。
また正社員になるのが難しく、派遣社員やアルバイトとして生計を維持している人もいます。
国税庁によると、年代別平均年収は次の表の通りです。
年代 | 平均年収(万円) |
---|---|
20歳~24歳 | 267 |
25歳~29歳 | 370 |
30歳~34歳 | 410 |
35歳~39歳 | 448 |
40歳~44歳 | 476 |
45歳~49歳 | 502 |
50歳~54歳 | 529 |
55歳~59歳 | 520 |
60歳~64歳 | 416 |
上表より、20代は他の年代と比較して平均年収が極めて低いことが分かります。
30代以降は徐々に平均年収が上がっていきますが、若いうちは家計管理をしっかりすることが重要だと言えるでしょう。
親や家族の経済困難や病気療養が原因で奨学金を払えないというケースも少なくありません。
また、奨学金を返したくても払えない人がいる一方、そもそも奨学金を返還する必要はないと考えている人も一定数いるのが現実です。
奨学金を滞納するリスクは大きい
奨学金が払えない状態をそのまま放置して滞納すると、いろいろな対応が取られます。
具体的な流れは以下の通りです。
- 延滞金が発生する|返還期日の翌日から
- 信用情報に傷がつく|延滞期間:3カ月以上
- 一括返済を求められる|督促を放置し、代位弁済後
- 財産が差し押さえられる|一括返済請求を放置し、強制執行の手続き完了後
延滞金が発生する
奨学金を払えないと、延滞している金額に対して延滞金が発生します。
延滞金と翌月の返済金額とを合算した請求書が自宅に送付される仕組みです。
延滞金利は借り入れた奨学金の種類や採用年度によって違いがあります。
奨学金には無利息で借り入れができる第一種奨学金と利息が発生する第二種奨学金がありますが、延滞金利に違いがあるので注意してください。
個人の信用情報に傷がつく
奨学金を払えない期間が3カ月を超えると、信用情報に傷がつきます。
出典:奨学金に関するよくあるご質問|日本学生支援機構Q. 個人信用情報機関に個人情報を登録する条件は何ですか。
A. 個人信用情報の取り扱いに関する同意書を提出していただいている方のうち、現在奨学金を返還されている方は、延滞3ケ月以上の場合に個人信用情報機関に個人情報が登録されます。新たに返還を開始する方は、返還開始後6ケ月経過時点で延滞3ケ月以上の場合に登録されます。
個人の信用情報とは、クレジットカードやローンの申し込み内容や利用履歴など、金融取引に関する記録のことです。
個人信用情報機関と呼ばれる機関で所定の期間管理されることになっており、ローンやクレジットカードの審査時などに使われます。
奨学金が払えないことが原因で信用情報に傷が付くと、完済して5年経過するまで個人信用情報機関に記録が残り続けます。
したがって、ローンやクレジットカードの審査に落ちる原因になるのです。
社会人になると、自動車ローンを借りて車を購入したり、住宅ローンで家を建てたりすることもあります。
経済的理由で奨学金を払えないなら仕方ありませんが、自分の意思で奨学金を延滞すると将来の自分の選択肢を狭めることになるので気を付けてください。
一括返済を求められる
日本学生支援機構からの督促を無視し続けると、未納分の奨学金と延滞金を一括請求されます。
出典:万一、奨学金の返還を延滞した場合は、どうなりますか。|日本学生支援機構Q. 万一、奨学金の返還を延滞した場合は、どうなりますか。
A. (5)督促にも係わらず返還に応じない場合は、返還期日が到来していない分を含めた返還未済額(発生済利息を含む)及び延滞金について、全額一括での返還を請求します。(「期限の利益の喪失」)
この時点で、個人信用情報に金融事故情報として記録が残っているため、銀行や消費者金融などからお金を借り入れるのが難しくなっています。
したがって、「奨学金を一括請求されたら別のとこから借りよう」という考えは実現することができません。
財産が差し押さえられる
奨学金の一括請求に応じず、日本学生支援機構と一切連絡を取りなければ、財産の差し押さえが実行されます。
いわゆる法的処置によって、奨学金の回収が行われるのです。差し押さえの対象は、不動産や高価なもの、給料などです。
財産が差し押さえられると、会社や周囲の人に多大なる迷惑をかける可能性があります。差し押さえによって、自己破産をするケースもあるので注意が必要です。
保証人に迷惑がかかる
奨学金に保証人を設定している場合は、契約者本人と同様の取り立てが保証人にも行われます。
奨学金の契約時に保証制度(有料)を使っていなければ、基本的に親や親族などを保証人にしていることが多いでしょう。
奨学金が払えていないことが親にバレるのはもちろん、家族から信頼を失うことになるので最悪の状況になる前に迅速な対応を取る必要があります。
奨学金を払えないときの対処方法
何らかの理由で奨学金が払えない状況になった場合は、できるだけ早めに対処することが大切です。
延滞金が発生したり信用情報に傷がついたりする前に適切な対処法を実践することをおすすめします。
対処方法1:日本学生支援機構に連絡する
まずは、日本学生支援機構に支払いが難しいことを伝えましょう。
奨学金相談センターの電話番号と営業時間は以下の通りです。
・電話番号:0570-666-301
・営業時間:平日9:00~20:00
相談なしに奨学金を滞納するよりも、きちんと連絡して誠意を見せる方がいいでしょう。
なぜ奨学金が払えないのか、いつなら払えそうなのか、担当者に具体的な状況を伝えることがポイントです。
場合によっては、次に紹介する救済措置の利用が可能で、担当者から勧められるかもしれません。
対処方法2:減額や猶予などの制度を使う
日本学生支援機構の奨学金が払えない場合は、所定の条件を満たすと減額や猶予などの制度を使えます。
制度名 | 特徴 |
---|---|
減額返還制度 | 毎月の返済金額を2分の1か3分の1に減額できる。 ただし、返済期間が延長される。 |
返還制限猶予制度 | 一定期間の支払いを先送りにできる。 |
返還免除制度 | 死亡や精神・身体障害になった場合に返済金額の一部か全額を免除できる。 |
猶予年限特例 | 卒業後の所定の期間に限って支払いが猶予される。 |
減額返還制度
減額返還制度は、月々の支払い額を減額できる制度です。1度制度の利用申請を出すと、12カ月分の適用が受けられます。
減額返還制度の申請条件
- 傷病や災害、経済的理由で奨学金を払えない状況にある
- 願出や審査の時点で延滞していない
- 口座振替の加入者である
- 返還方法が月賦である
- 個人情報の取扱いに関する同意書を提出している
減額返還制度を利用すると月々の返済金額が少なくなりますが、総返済額は変わりません。
返済期間を延長することで減額しているため、返済計画を立ててしっかり奨学金を払っていく必要があります。
返還期限猶予制度
返還期限猶予制度とは、奨学金が払えない正当な理由がある場合に返還期限の猶予を受けられる制度です。
誰でも利用できる制度ではありませんが、審査に通れば返還を最大10年延長してもらえます。
返還期限猶予制度の申請条件
- 傷病
- 災害
- 入学準備中
- 失業中
- 新卒等
- 大学校在学
- 海外居住
- 海外派遣
- 留学
- 経済困難
なお、返還期限猶予制度は奨学金を払えていない状態でも申し込みをする権利があります。
返還免除制度
返還免除制度とは、奨学金の契約者本人が死亡したり、精神・身体障害になったりした場合に利用できる制度のことです。
返還免除制度の申請条件
- 契約者本人が死亡して奨学金が払えない場合
- 精神の身体の障害で労働能力を喪失したり、高度の制限が出たりして奨学金が払えない場合
猶予年限特例
第一種奨学金を利用している人は、猶予年限特例を利用できる可能性があります。
猶予年限制度とは、奨学金の契約者本人が卒業してからの一定期間限って返済猶予がもらえる制度です。
猶予年限特例の申請条件
- 平成24年4月以降の第一種奨学金利用者である
- 家計支持者の所得が所定金額である
猶予年限特例を利用できる家計支持者の所得金額の条件は、次の表の通りです。
世帯の所得種類 | 所得条件 |
---|---|
給与所得のみ | 年間の税込収入金額が300万円以下 |
給与所得以外 | 年間の税込収入金額-必要経費=200万円以下 |
対処方法3:家族にお金を借りる
奨学金を自分で払えないことを家族に伝えて、お金を工面してもらう方法もあります。
家族だからと言って必ずお金を用意してもらえる訳ではありませんが、可能性は十分にあるでしょう。
奨学金が払えない理由や返済目途をきちんと話して、助けを求めてみましょう。
対処方法4:バイトや副業で収入を増やす
収入が少ないことが原因で奨学金が払えない場合は、働いてお金を稼ぎましょう。
休日に日雇いアルバイトに行ったり、本業とは別に副業をしたりして収入を増やす方法があります。
ただし、会社の中には副業を禁止しているところもあるので注意が必要です。
奨学金の返済日とバイトや副業の収入を手にできる日を考慮した上で、賢く働くことがポイントです。
対処方法5:金融機関から借入する
「すぐにでもお金が必要…」そんな状況でも、家族や友人には相談しづらかったり、働いて稼いだりするのが難しい方も多いのではないでしょうか?
そんなときには、銀行や消費者金融などの金融機関から一時的に借入し、奨学金の支払いに充てる手段もあります。
カードローンで奨学金を払うという選択肢
例えば、銀行や消費者金融のカードローンを利用して奨学金の返済に充てるという方法もあります。
カードローンも借り入れになるので返済しなければいけませんが、奨学金を払えない状態を脱却するひとつの手段と言えるでしょう。
資金使途が自由だから奨学金の支払いにも使える
カードローンで借りたお金は事業性資金以外であれば基本的に何に使ってもいいので、奨学金の支払いに充てても問題ありません。
返済計画をしっかり立てて利用すれば信用情報が傷付いたり、差し押さえされたりこともありません。
親や友人、会社に迷惑をかけることなく、自分で対処したい人はカードローンの利用が適していると言えるでしょう。
一部のカードローンは最短即日融資を受けられる
銀行のカードローンでは難しいですが、プロミスやアコムなどの大手消費者金融であれば最短即日で融資が受けられます。
一時的に奨学金が払えない場合でも、カードローンならすぐにお金を準備できるので安心です。
ただし、審査内容によっては即日融資が受けられないこともあるので、申し込みはできるだけ早めに済ませておくことをおすすめします。
無利息サービスを使えることがある
多くの消費者金融では、期間限定で利用できる無利息サービスが提供されています。
借り入れ日から30日間は利息が発生しないケースが多いですが、消費者金融によってサービス内容や利用条件が異なるのであらかじめチェックしておきましょう。
無利息サービスを賢く使えば、利息を払うことなく完済できます。
利息が発生しなければ家計を圧迫することもないので、カードローンを利用する場合は無利息サービスの利用を検討してみるといいでしょう。
では、実際にどのようなカードローンを選べばいいのか?
即日性が高く、無利息期間サービスも利用可能なカードローンは、以下の通りです。
どのカードローンにすべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
奨学金が払えない場合のNG行為
延滞し続ける
奨学金が払えない状態が長く続くと、信用情報が傷つくだけでなく財産の差し押さえにあります。
奨学金が払えない正当な理由があっても、何の連絡もなしに延滞し続けるのは辞めましょう。
督促の電話や郵便を無視し続けても、請求が止まることはありませんし、支払いが免除されるわけでもありません。
闇金でお金を借りる
闇金とは、違法な貸付条件で契約者にお金を貸す悪質な業者です。
銀行や消費者金融の金利と比較すると非常に高い利息が設定されているのはもちろん、恐喝じみた取り立てが行われることもあります。
ヤミ金を利用すると返済金額が雪だるま式に増えていくので、絶対に利用しないでください。
Q&A
奨学金が払えないときに、よくあるQ&Aを2つ紹介します。
奨学金を返したくないときは?
奨学金は進学のために借りたお金なので、借りた人の意思にかかわらず返済しなければいけません。
奨学金を払えない正当な理由があるなら、今回紹介した制度を利用するといいでしょう。
次の奨学金利用者のためにも、借りたお金はきちんと返しましょう。
猶予期間終了後でも払えない場合は?
猶予期間終了後の経済状況が悪く、奨学金が払えない場合は日本学生支援機構に問い合わせてみましょう。
理由によっては、猶予申請ができる可能性があります。
しかし、本来は猶予期間中に経済状況を安定させて、期間終了後に支払いを開始しなければいけません。
必ずしも、追加で猶予してもらえるわけではないので注意してください。
まとめ
奨学金の支払いを延滞することで生じるリスクや、対処法について解説しました。
この記事のポイント
- 収入が少ない等の理由により奨学金の返済ができない人は多い
- 滞納することで信用情報が傷つき、最悪の場合には差し押さえになる
- 支払いができないときはまず、電話相談を!
- 申請条件を確認して、各種制度が利用できないか検討しましょう。
- 誰にも迷惑をかけない方法として、カードローンの利用も検討しましょう。
奨学金の支払いは安いものではなく、負担も大きいとは思いますがぜひお金の工面をして完済をめざしましょう。