昨年元号が「平成」から「令和」に変わった。「令和」の出典は万葉集において大伴旅人が西暦730年に開いた宴での「梅花の歌三十二首」の序文から採ったものであり、万葉集では「初春の令月にして、気淑よく風和やわらぎ」と表記され、「和」は風のやわらかさを示す言葉として使われているとの説明があった。その際、多くの方は「和」の文字から聖徳太子の十七条憲法第一条の「和をもって貴し」という言葉を思い浮かべたのではないかと思う。
そこで、改めて十七条憲法について考えてみたい。十七条憲法は憲法の名を冠してはいるが、政府と国民の関係を規律する現代の憲法とは異なり、聖徳太子が推古12年(西暦604年)に制定した日本が天皇を中心とした律令国家を建設するにあたり、貴族や官僚など政治に関わる人々に道徳や心がけを説いたものである。
その中で、最初の第一条と最期の第十七条の内容は、「和」がなによりも大事だということを重ねて注意している。「争うことをせず、とことん話し合っていけば物事はうまく運ぶ」ということである。
十七条憲法の原文は日本書紀に漢文体で記載されているが、今回いろいろな訳文の中から、現代言葉でまとめたわかりやすい文章を見つけたので以下に記載する。改めてこれらの文を読み取り、その内容を味わってみたい。
第一条
・人と争わずに和を大切にしなさい
第二条
・三宝を深く尊敬し、尊び、礼をつくしなさい
(三宝:釈迦、その教え、僧)
第三条
・天皇の命令は反発せずにかしこまって聞きなさい
第四条
・役人達はつねに礼儀ただしくありなさい
第五条
・道にはずれた心を捨てて、公平な態度で裁きを行いなさい
第六条
・悪い事はこらしめ、良いことはどんどんしなさい
第七条
・仕事はその役目に合った人にさせなさい
第八条
・役人はサボることなく早朝から夜遅くまで一生懸命働きなさい
第九条
・お互いを疑うことなく信じ合いなさい
第十条
・他人と意見が異なっても腹を立てないようにしなさい
第十一条
・優れた働きや成果、または過ちを明確にして、必ず賞罰を与えなさい
第十二条
・役人は勝手に民衆から税をとってはいけない
第十三条
・役人は自分だけではなく、他の役人の仕事も知っておきなさい
第十四条
・役人は嫉妬の心をお互いにもってはいけない
第十五条
・国のことを大事に思い、私利私欲に走ってはいけない
第十六条
・民衆を使うときは、その時期を見計らって使いなさい
第十七条
・大事なことは一人で決めずに、必ず皆と相談しなさい
これらの文章を読み取り、各自いろいろな感想を持たれたと思うが、1400年も前の時代に、既に古代日本が現代の民主主義の根本的精神を示している考え方を持っていたことは驚異的である。むしろ、現代の社会が逆の方向に進んでいるのではないかと危惧するものである。
十七条憲法は、我々日本民族のDNAに深く刻まれ、現代に通ずる我々の行動規範に通じる基本的な考え方である。改めて十七条憲法について考え、これらを参考にしながら自分の行動を見つめ直してみたい。
[K.Takagi記]