今回は、同人誌「ひとり情シス列伝」の中で「カイゼン型ひとり情シス」として登場している現役スーパーひとり情シスである増山大輔氏に、自身の反省を踏まえて対話力をどのように高めていったかをお話していただきました。試行錯誤しながら体得した対話力は多くのひとり情シスの参考になるはずです。
伝わらないジレンマ
ひとり情シスは、社内で起きるさまざまな事象を短期的にも長期的にもどうにかこうにか処理していかなくてはなりません。ITに関わる身として必要な知識・技術は色々とありますが、実務においては無言で黙々と進める作業よりも相談・問い合わせの対応やこちらからの調査・確認など会話を必要とする業務が多く、ご承知のとおりコミュニケーションスキルがとても重要になります。
しかし一口にコミュニケーションといっても非常に奥深く悩ましく難しいものです。私自身も、「なぜシステムを使ってもらえないのか」「どうすれば伝わるのか?」「どんな言い方なら良いのか?」「事の真因に辿り着くにはどうすれば良いか?」ということに頭を悩ませてきました。
これらの悩みを解決するために良質なコミュニケーションを取りたいと願っても、一定の信頼を得て立ち位置が確立できるまでは当たり障りのない会話になってしまうことが多く、悩み解決のポイントが見えず苦戦することもあります。しかしそこを乗り越えたあとは、雑談レベルの日常的なコミュニケーションからも情報やノウハウが得られて良い循環が起こると思いますし、たくさんの人と会話できるようになることで会社全体を広く知ることができ業務改善のヒントが見えてきて、情シスの仕事も守りの態勢から攻めの態勢へと移れるようになります。
良質なコミュニケーションを取るにはどうすれば良いのか、特効薬のようなものが提示できれば良かったのですが生憎私にはわかりません。ただ今までの経験では、喜怒哀楽を繰り返しながら日々の出来事一つ一つに向き合って数か月数年と経った頃、ふと気づくと社内の色々な人とコミュニケーションが取れるようになっていることが多かったです。
ここからは私の実体験を交えながら、情シスの仕事をうまく回すためにはどのようなコミュニケーションを心掛けると良いかについて、考えを述べさせていただきます。
怒りそうになったらアクティブ・リスニングを思い出せ!
まず必要なことは、相手の話をよく聞くことです。相手からの相談事は、相手の説明がたどたどしくても途中で口を挟まないようにしましょう。黙って話を聞きながら、何に困っているのかをイメージしてください。またトラブルの連絡であれば、相手は目先の対応に追われ困り果てていて、自身の仕事への責任感から攻撃的になってしまっていることもあります。時には、感情をあらわにすることもあるでしょう。あなたが責任感と自信をもって構築したシステムにクレームをつけられると憤りを感じることもあるでしょうが、このような場面でも、まずは冷静に話を聞くことが肝要です。
上記のような対応ができる情シスは、アクティブ・リスニングのスキルを持っているといえます。アクティブ・リスニングとは、日本語では「積極的傾聴」と言われ、相手の話を受動的ではなく意識的に能動的に聴く態度とスキルです。アクティブ・リスニングで重要とされるのは、「相手が話しやすい態度の実行」と「相手の発言を繰り返し聞きながら、掘り下げていき、共感していくこと」、そして「相手が言いたいことが伝わったと安心してくれる」ことの3点です。具体的なトークスクリプトは以下になります。