”クレカ現金化”が減らない理由をカード会社関係者「遅延されるよりマシ」
クレジットカードのショッピング枠(以下、S枠)を現金化しようという人が後を絶たない。S枠の現金化を業としてやるのはれっきとした犯罪だ。2011年8月、初めて現金化業者が警視庁に逮捕された。罪状は出資法違反。高利でカネを貸したというのがその理由である。
だが現在のところ、この現金化のスキームを利用してカネを手にした者、つまり顧客の側が逮捕されたという話は聞かない。もっともカード会社側は「もし顧客がクレジットカードの現金化を行なったならば、退会などの措置を取り残債全てを即回収する」と厳しい姿勢をみせる。
現金化は誰も傷つかないWin‐Winのスキーム
先に紹介した2011年の現金化業者の逮捕以降、今日まで「年に数件程度」(警察庁関係者)、現金化業者が逮捕されているという。ところがその後の音沙汰は聞こえてこない。警察庁関係者によると、「社会問題化される案件ではないから」というのがその理由だ。
金融の所管官庁である金融庁も、このクレジットカード現金化には厳しい姿勢をみせているものの、どこか「笛吹けど踊らず」(前出・警察庁関係者)の状態が今日まで続いている。
「本気で金融庁はこの問題に取り組んでいないのでしょう。本気で取り組めば、銀行や金融機関の首を絞めることになる。警察もそう。金融機関への天下りがなくなるので。取り締まっているとのポーズはみせるが、ほどほどに押さえている。それが現実」(前出・同)
利用客のみならず、当のクレジットカード会社側にとっても現金化は、誰もが傷つかない「Win-Win」(銀行系カード会社関係者)のスキームである。
「消費者金融や銀行カードローンで借りられない人が最後に行き着くのがこのスキーム。これを認めなければクレジットカード業界や消費者金融業界は、この先、先細りが目に見えている。ひいては親会社である銀行業界への打撃が大きい」(銀行系カード会社関係者)
このように銀行をはじめとする金融機関では、暗にクレジットカードS枠の現金化を黙認する姿勢を示す。クレジットカードS枠の現金化が増えたのは、2006年8月に実施された消費者金融の総量規制以降のことだ。
消費者金融機関では、借り手は総収入の3分の1までしか貸付けられなくなった。例えば年収300万円の者が、消費者金融機関に融資を申し込めば、貸付枠は年収の3分の1、100万円となる。だが、既に他の消費者金融機関から100万円借りていれば、他の消費者金融機関ではもう借り入れはできない。
「総収入が年収300万円の借り手側が、もし消費者金融での限度枠いっぱいを借りていた場合、どこから借りるとなると銀行のフリーローン。しかしこれは手続きが煩雑。クレジットカードの現金化なら、商品を買い、それを現金化するだけなので非常に楽。カード会社側も遅延があるよりはマシと考えている」(前出・同)
自己破産されるよりは現金化して返してほしい
カード会社によっては現金化を一切認めていないところもある。例えばAMEXがそうだ。しかし、多くのカード会社では、新幹線の回数券やamazonのギフトカードなどを購入を認めている。
もっとも最近では、現金化への批判の高まりを受けて、こうした換金性高い商品を購入したら1か月は同じ商品の購入を認めていないカード会社もある。JCBなどがそうだ。
「1か月の猶予を認めても、結局はクレジットカードで換金性高い商品の購入を認めているわけです。それで全てを察して欲しい。遅延が重なり自己破産でもされて回収不能となること、それさえ避けられれば問題ない」(同)
換金を行なった業者への摘発は行なわれても、顧客側への摘発が行なわれていない理由が上記の銀行系カード会社のコメントに集約されているように思えるのは気のせいだろうか。
(取材・文/秋山謙一郎)