大学生と畳の可能性探る 神戸の田宮製畳が三重のVISONでイベント

中日新聞Web2022年06月30日05時05分

大学生と畳の可能性探る 神戸の田宮製畳が三重のVISONでイベント

畳で組み立てた椅子で遊ぶ子どもたち=三重県多気町の「VISON」で

 神戸町丈六道の畳製造販売「田宮製畳」が、大学生の発想を取り入れ、畳の新たな可能性を探っている。五月には三重県多気町の民間複合レジャー施設「VISON(ヴィソン)」の催しに出展し、畳を組み立てた椅子ややぐらで新たな和空間を提案した。洋式の間取りの住宅が増える中、田宮恒司社長(54)は「学生の斬新な発想で畳の概念を変えられたら」と期待する。(成田はな)

 約五百平方メートルあるヴィソンの会場の一画には、五十センチ角の畳を組み立てたキューブ形の椅子が何個も積み上がった。一つ三キロほどで、子どもでも簡単に持ち運びできる。畳を活用した高さ三メートルのやぐらも登場した。解体して再利用でき、いずれも名城大(名古屋市)で建築を学ぶサークルの学生十五人らが手掛けた。

 田宮製畳は明治時代の一九〇七年創業で、住宅の畳やふすまを主力商品にしてきた。ただ住宅の洋室化が進む中、畳の需要は年々減少。農林水産省によると、畳の原料のイグサの二〇一九年の作付面積は、前年比12%減の四百七十六ヘクタール。田宮さんは「洋室化がさらに加速することを見据え、業界全体で屋外で使う畳の在り方を考える必要があった」と話す。

 学生とは、昨年八月に田宮製畳の工場見学に訪れたのを機に交流が始まった。意見交換会では、学生から「模型は多く制作しているが、学外に見てもらう機会が少ない」との意見が多く出た。田宮さんは「学生の活動を応援しつつ、畳の可能性が広がれば」とヴィソンへの出展を提案した。

 学生たちは、畳を敷くだけではなく「自分たちで好きなように動かして居場所をつくってほしい」という発想でアイデアを提案。名城大四年の内田翔太さん(21)は「本来の畳の使い方に縛られそうになったが、アイデアを持ち寄って仕上げた。来場者が使う段階まで見られたのが貴重だった」と振り返る。

 催しでは畳のマットを制作するワークショップや和傘を使ったイルミネーションなどもあり、十日間の会期中に十万人以上が来場した。田宮製畳はコロナ収束後に向け、屋外でのイベントや外国人観光客向けにキューブ形の椅子を使った新たな空間を提案することも視野に入れる。田宮さんは「学生の発想は斬新だった。畳も角度を変えれば自由自在に姿を変えられるはず」と力を込める。

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