<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
励みになるので本当にありがたいです。
□七月一六日
【旅狼】
鉛筆騎士王:さーて皆さん、<Infinite Dendrogram>は、もう買ったかな?
サンラク:購入して、チュートリアル終わったところ
サンラク:あ、レジェンダリアな
サイガ‐0:同じく、です
秋津茜:私は天地にしました!これから楽しみです!
オイカッツォ:何とかオークションでゲットしたよ。これから始めるとこ
サンラク:オークションですか!すごいですね!何万円使ったんでしょう!俺の何倍使ったんですかああああああ!
オイカッツォ:オッケー便秘で待ってる
サンラク:当分このゲームに注力するって決めてるし、もうチュートリアル終わってるんで
ルスト:これだから外道は
モルド:あ、ぼくたちはまだ買えてない、少し遅れることになると思うよ
鉛筆騎士王:あ、カッツォ君。今から始めるんなら、アルター王国にしてよ。
鉛筆騎士王:私もそこにするつもりだし
オイカッツォ:別にいいけど、なにするつもり?王国乗っ取り?
鉛筆騎士王:んー、まだ始めてすらいないからね。まだまだこれからだよ。
サンラク:それ暗に肯定してるんだよなあ
京極:それもいいかもね、僕が聞いた話だと、天地では内乱しょっちゅうらしいからね
サンラク:お、京ティメット先週はどうも
京極:君ほんと覚えてなよ……
オイカッツォ:また囮にしたのか
秋津茜:ひょっとして、京極さんも天地ですか!よかったら、一緒にパーティー組みませんか?
京極:え、あ、うん、いいけど
秋津茜:わあ!ありがとうございます!
サンラク:ああ、また外道が浄化されてしまう
ルスト:仲間が減るのはさみしいよね、サンラク
鉛筆騎士王:ルストちゃん何気に容赦ないよね!そういえば、サンラク君と、妹ちゃんはレジェンダリアだよね?
サンラク:そうだけど
鉛筆騎士王:別にい、ただこっちが遠慮してわざわざ面白政治体系国家避けてあげたんだから、二人で楽しんできたらいいよ、と思ってるだけだよ
鉛筆騎士王:善意善意
サンラク:おい、まさかおま
オイカッツォ:悪意しか感じられないんだけど
サンラク:だれから期待?
ルスト:察した
京極:知ってた
鉛筆騎士王:誰から期待、もとい聞いたと思う?
モルド:誤字まで煽りに使うんだ……
秋津茜:?
□陽務楽郎
「まじかあ」
え、なに、ばれてるの。やばいどうしようめっちゃ恥ずかしい。
これ文字通り一生ネタにされるやつじゃん。
これはアカン。
いや、もう親同士の顔合わせも済んでるからもう後戻りできないし、するつもりもないんだが、生涯同じネタでいじられるのはさすがに無様すぎる。
「楽郎君」
「うおおおお!」
「ふひゃああ!」
急に声をかけられたので、びっくりして変な声が出てしまった。
俺に声をかけたのは、同居人だ。
ダブルベッドの上に寝転がって、端末をいじっていた俺のすぐ隣に座っている。
「ああ、びっくりした。叫んじゃってごめんね、
「い、いえ、急に話しかけてすいません、楽郎君」
いや、同居人という言い方は不適切だな。
他人行儀が過ぎる。
彼女、斎賀玲はーー俺の恋人なんだから。
◇◇◇
俺がこのゲームを購入し、本物のVRゲームであると理解した時、真っ先に考えたことは二つ。
一つには、言うまでもなくこのゲームをプレイすること。
あのシャングリラ・フロンティアと同等か、それ以上というオーバーテクノロジーの代物であることが、
正直、当初の目的からすれば想定外の方向で期待外れではあるものの、やってみたいという気持ちにさせられるゲームだった。
まあ、今熱中しているクソゲーがちょうどなかったというのもあるが。
そして二つ目は、玲のことだった。
もとよりゲームをきっかけに付き合うようになったのが俺たちだ。
このリアリティあふれるゲームを、彼女と一緒に楽しんでみたかった。
チュートリアルを中断してまでしてログアウトしたのは、専用のハードをもう一台買うためだ。
玲は用事があって外出していていつ帰ってくるかわからない状況だし、彼女に任せるより、サクッと買ったほうがいいと思ったのだ。
たぶん、これが
オークションになっても、彼女の実家の財力ならあっさり買えるのかもしれんが、安く買えるに越したことはない。
というか、転売屋から買ったのばれたらマジで岩巻さんに刺されかねない。
何というか、こう、あの人たまに闇を発してくるからな。
で、すぐさまロックロールへと向かい、二台目のハードを購入。
彼女がたまたまハマってる乙女ゲーがなかったのは幸いだったな。
意気揚々とマンションの俺たちの部屋に戻った俺は、気づいてしまった。
すでに玲が帰宅していることに。
彼女の傍に見覚えのあるハードの入った、新品の箱が二つ置いてあることに。
「ははっ」
「ふふふっ」
どうやら、ネットニュースでデンドロが本物であると知り、二人でプレイするためにロックロールとは別のゲームショップで購入したらしい。
二人とも同じことを考えて、同じことをしたのが嬉しくて。
どうしようもなく幸せすぎて、二人とも笑ってしまった。
そのあとお互いチュートリアルを進行させた。
所属国家は、事前に話し合ってレジェンダリアにした。
理由?ちょっと最近メルヘン系のクソゲーやりこんでたからな。
リベンジだリベンジ。
ちなみに、玲のチュートリアル担当はクイーンというとても親切丁寧な管理AIだったらしい。
玲は普通に<エンブリオ>の説明もしてもらったようで、管理AIによってチュートリアルの内容も違いがあるらしい。
何でも、他人とは思えないレベルで波長があったのだとか。
……何か共通点でもあったのか?
◇◇◇
「それで玲、どうしたの?」
「あ、すいません。折角ですし、今からしようかと思ったのですが」
「え」
「え?」
どうしよう。これ、どっちの意味と捉えるべきなんだろうか。
俺的にはどっちもありなんだけど。
「あー、その、ゲーム、だよね?」
「あ、はい、<Infinite Dendrogram>のことです、が」
どうやら、俺がナニを考えていたか、向こうも察したらしい。
トマトもかくやというレベルで赤面している。
ああ、そういえば昔は常時赤面してたっけ。今思い返すと照れるな、何か。
というか、そんなこと考えてる場合じゃねえ、何とかしねえと。
ええい、黙れ脳内ディプスロ!
「やっちゃえ!サンラク!」じゃねえよ!とりあえず脳内ディプスロを縛っておこう。
「あ、う、その、したいですか?」
「ん?」
「あ、あの、楽郎君が望むなら、私今しゅぐでも」
あ、噛んだ。
もともと赤い顔が、さらに赤くなってる。
というか、え、いいの?
いやまあ、一応行くところまで行ってるんですけど。
でも、その、昼間っからっていうのは未経験ですよ?奥さん。
いやいや待て待て落ち着け落ち着け。
げ、脳内ディプスロが縛られたまま「脳内に私がいるから、緊縛3Pだねえ。お姉さん、張り切っちゃうぞお!」とかぬかしやがった。
こいつほんと燃やし……ても無駄だな。
悦ぶだけだ。
「……楽郎君?他の女の人のこと、考えてませんでしたか?」
「ははは、なにを言ってるんだそんなわけないじゃないか。俺は玲一筋だぞ」
後半が嘘じゃないからね、言いやすいよね。
というか、照れ顔してたのに、今氷みたいな表情になってるんだけど。
怖い。
「と、とにかく、早くやろうか、デンドロ」
「あ、はい、そうですね!」
そう、とりあえず大体のことはゲームしてみれば解決するし、乗り越えられる気がしてくる。
大学の課題やバイトだって、クソゲーに比べれば、余裕すぎて、へそで茶を沸かせられるレベルだ。
本当に、ちゃんと真面目に講義受けてれば、ちゃんと働いていれば、平時なら単位なり給料なりが入ってくるからね。
ユナイトラウンズとか、デフォルトでクソ乱数に左右されて、結果的にあんな外道王朝が誕生したわけだし。
水分補給を済ませてから、二人とも同じハードを持って、ベッドに横たわる。
「楽郎君」
「うん?」
こちらのほうを向いて話しかけてくる玲。どうかしたのだろうか。
彼女は、俺の手を取って。
「なんかいいですね、こういうの」
「……そうだね」
そんな真っ赤になった笑顔で言われたら、それしか言えないでしょ。
俺は、何かを隠すようにハードを頭にセットする。
ああもう、現実逃避現実逃避!
物音で、全く同じタイミングで、彼女もハードを装着して、スイッチを入れたのが分かった。
ゲーム、スタート。
To be continued
補足説明
楽郎と玲は大学に進学、同棲してます。
余談
鉛筆:まだキャラクリ終わってない。いつもよりパーツ多いな。
ルスモル:誰からとは言わないけど、余ったから送ってもらえる。
ケッツォ:今からチュートリアル。
京ティメット:リアルと耳以外ほとんど変わらんから、キャラクリはすぐ終わった。
秋津茜:専用ハード1万円は安いですよね。今度は髪と瞳の色変えたから大丈夫です!