pixivは2021年5月31日付けでプライバシーポリシーを改定しました。

ネギトロねぎとろ
ネギトロねぎとろ
うたうたう魔神は夜叉と在る - ネギトロねぎとろの小説 - pixiv
うたうたう魔神は夜叉と在る - ネギトロねぎとろの小説 - pixiv
15,763文字
げんしん!
うたうたう魔神は夜叉と在る
novel/17812705の続きです。
捏造注意。微クロスオーバー。ゲーム本編の時系列ガバガバ。ゲーム本編、ストーリーを含め様々なネタバレを含みます。ご都合主義、己の本能に従いました。続き正座タグありがとう。

もしもの話はめっちゃ、“癖”です。にゃんにゃんは見せられない(苦手)よ。全年齢だ、安心してくれ、大丈夫だ、問題ない。必殺、にゃんにゃん割愛。心の目で見てください。スクロールバーはもうないです。

すてきなうたがこの世界には溢れているんだなぁ。どれもやさしい、大好きな歌たちです。造語の歌はすごく素敵で、一度聴いてほしい、惹き込まれます。星霜もすごく好きです子守唄にいい。うたうたいのねこもめっちゃおすすめ、楽しい。知ってる方は握手してください。ある映画のものだったり、たまたま見つけたものだったり。恥ずかしくなってきたらマイピク投げ込みます。

実は、ずっとしまっちゃう魈くんが見たかったんです(開幕でベショベショに泣く)
どんなシチュエーションでも良いんですけど魈くんがお相手をしまっちゃうのが見たくてたまらないんですいのち たすけてほしい。
クソッ浴びるほど欲しい。書かなきゃ見られないお手軽な絶望。
いや魈くんはそんなことしない!ってキレる私とヤダヤダしまっちゃう魈くんが見たいってジタバタしてる私がいてもう解釈の渋滞っていうか醜態を晒しとるんです。

誤字脱字気づいたら直します
続きを読む
3513654653
2022年6月21日 14:54

天から転がり落ちる虹の娘、理から外れしまつろわぬ神。 うたうたう彼女は、いったいどこへ。 契約と妖魔、瘴気に満ちた地は彼女の目にどう映る。大地は歌わず、沈黙してばかりだ。けれど彼女はこの地がひだまりに溢るるさまを見たいと歌った。大地は芽吹きの歌に震え────大地とともに生きる者はある契約を望んだ。





獣の耳と尾を持つ、うたうたう魔神。 民を必要とせず、国を望むこともなく、ただどこかを目指し、足を止めることもなく。それが、リビカだった。

『お前はいったい、どこから来て、どこへ行くのか』

俺は彼女に尋ねると、うたうたう彼女は足を止め、こう答えた。

『わたしは先ほど天から転がり落ちたばかりですが、わたしはこれから、わたしの”つい“を探しにいくのです。』

璃月を通り過ぎようとする彼女の歩いた道に花が咲いていた。瘴気に負けず、力強く。枯れゆく運命すら些細なことだと言うように。俺はそれを見てこの地に彼女の力が必要だと思い、彼女の望みを聞くことにした。

『力を貸してくれないか』

岩柱は彼女の進行方向に現れるが、うたうたう魔神は沈黙で答えた。

『命あるものを奮い立たせ、芽吹きをもたらすうたうたう魔神よ、俺にはお前の力が必要だ。俺はお前に“つい“を与えることはできないが、何か欲しいものがあれば、それを与えよう。』

彼女が本当に欲しいものは与えられない。”つがい“を探しに行く本能と並ぶものを果たして、俺が差し出せるだろうか。暫く悩んでいた彼女は首を傾げた、瘴気に満ちる璃月を眺めては言葉を紡ぐ。歌を歌ったのかと思うほど、柔く穏やかな声で。

『ではひだまりを、どうかわたしに。わたしが安らげる地を。そしてその地で眠ることをお許しください』 『約束する。この地を安らげるものとし、お前には穏やかな眠りを。いっとう素晴らしいひだまりを与えよう。』

こうして彼女のうたが、璃月の地に響き渡る事になった。



『俺の護る民にもお前のことを知らせておきたい。俺の名はモラクスという。お前の名を聞かせてくれ。』 『モラクス様、わたしのことはリビカとお呼びください』

対等の関係を望んでいたのだが、敬称をつけて俺を呼ぶ彼女の声がひどく安らいでいたのでそのままにした。どのような関係になるかは当事者たちの心の持ちようで如何様にもなる。名前の呼び方だけで決まることはないからだ。



うたうたう魔神





「どんなうたがいい?」 「貴様が好む歌を歌えばいいだろう……吾は歌に詳しくない。モラクスに聞いてくるか」 「ううん、もうちょっと考えてみる。」

若陀にもたれかかり、弦を手慰みで無意味に弾く。ごろごろと喉を鳴らす。尻尾をひんやりした体に擦り付けても若陀は何も言わない。こころやさしい友だ。モラクス様を通じて出会った彼は龍だった。龍、そうだ、若陀に、聞かせてあげたいうたがある。彼が恋を理解するかは分からないが、リビカにとって大切なもので、それを大事な友である彼には知って欲しかった。

「ちゃんと、きいていてね」 「貴様のうたはいつも聴いている」

うん、と頷いて、弦をつま弾く。

「────Win tain A rotica(ウィン・タイン ア・ロティカ)En vai twli Swi routa(エン・ヴァイ・トゥリ スィ・ロウタ) Fsin tai A rolnuca(フィン・タイ ア・ロルカ) En dzaquwa Swe lein(エン・ダクゥワ スェ・レイン) Vi fa lnu Esta iya En di-karinto(ヴィ・ファ・ル エスタ・イヤ エン・ディカリント)

あなたは最初の竜だった わたしの愛するひと ファーリーの刈り株の上から わたしはあなたを見ていた

龍である若陀はともかく、人間が、どこまでわたしのうたに耐えられるのか。魔神や夜叉ならまだしも、効きすぎてもよくないだろう。癒しすぎるのも、よくない。悩みながらも、そよ風のような、うたをうたう。これは竜に恋した少女の歌。きっと、この世界では誰も知らないことばのうた。長く生きているモラクス様もその友である若陀も、知るはずがない。

どうしてわたしはたくさんの歌を知っているの、どうして、歌わずにはいられないの。うたうたう魔神だから、の一言で終わらせてしまっても、いいものなのだろうか。 わたしはまだ生まれたばかりで力をうまく扱えないようだから、何度も歌うべきだ、とモラクス様が。それに、モラクス様に、人々に歌ってやってくれ、と言われたものだから。

璃月に訪れた時から持っていた楽器を奏でる。戦いの場では普段から手に出すこともない。ここは戦場でもないから、つめたてて掻き鳴らす真似はせず、人よりは鋭い爪でつま弾き、鳴らす。

Win chant A rotica(ウィン・チャント ア・ロティカ)En vai twli Swi routa(エン・ヴァイ・トゥリ スィ・ロウタ) Fsin tain A rolnuca(フィン・タイン ア・ロルカ) Swi katycla Nuverl(スィ・カティクラ ヌヴェール) Lu reria Rochesty Swi entina(ル・レリア ロチェスティ スィ・エンティナ)

いかに美しく、水がその唇に触れたことか いかにあなたが、戦いの穂先にきらめいたことか

若陀が目を閉じ聞き入っている気配を感じる。少しでも、彼の安らぎになれば良い。青い花が咲き始める。うたを喜んでいる草花が必死に生きていた。体から溢れるいろんな色の光が、地に染み込んでいく。向かうべき相手はいない、わたしはこの力の使い方を本能的に知っているけど、わたしを守ろうとしているモラクス様も、なにかと世話を焼いてくる魈も、他の夜叉に人間だってそこまで、心を許せるものじゃなくて。

賛えるものと闘うもの。 賛牙と闘牙。歌い手と戦い手。 闘牙はいわゆる戦闘能力のある猫のことを指し、賛牙は歌うことで戦い手を支援する先天的な能力を持つ猫を指す。 賛牙の役割は、特殊な『歌』で闘牙を強力に支援すること。歌といっても実際に声に出して歌うもの、楽器を奏でるもの、歌わずに体から旋律を発するもの、と様々。その能力は闘牙にとって非常に強力であるのとないのとでは雲泥の差がある。

でも、ここに、わたしの“つい”になる猫はいない。 獣の形をした魔神がいたとしても相性が良いかなんて、分からない。

「Lalala...」

ららら、らららら、音を紡いでは微笑む。

Fondina Fuo shen De sravi esca retis qo(フォンディナ フォ・シェン デ・スラヴィ・エスカ・レティス・クォ)

あなたが飛び去ってから わたしには空が見えない。

わたしのうたをささげるリビカは、いない。 今宵はこうして、最後につめたてて、おしまい。 戦のあとの宴。賑やかな時間を邪魔しないよう、酒を交わし武勇を讃えるものたちから離れたわたしたちに駆け寄るのは、軽い足音。頭の上についている獣の耳がピクリと揺れる。若陀は眠っているフリをしている。彼も子どもの扱いに困っているようだった。若陀の体はおおきい、人間の子どもはずいぶんと小さいからしょうがない。

「わぁ、めがみさまみたい」 「────わたしは、魔神です。」

いとけない子どもが手を伸ばす、それに眉を寄せ、ぴん、と人差し指で真実を伝えるも「ねこのめがみさま!」と重ねられる。人間の子どもはほんと、わたしの言葉を聞いてくれない。

「や、尻尾は握らないで、オモチャじゃない。あなたも髪を引っ張られるのはイヤでしょう。」 「……うん、いたいもん」 「わたしも同じ。」 「もうさわらない!」 「……ありがとう」 「ねえ、ねえ、うたって、めがみさま。どんなうたがあるの?」 「うたってくれんの?」 「たのしいうたがいい!」 「わたしもリビカさまのおうた、ききたいです!」

いつの間にか囲まれていたようで、モラクス様に視線を向け助けを求めるが人間たちと笑って、こちらに来てくれない。モラクス様が、人間にこそ、うたってやってほしい、そう言っていた。慰めてやってほしい、そうで。慰め方なんてわたしはこれしか知らない。でもこれで良いんだって。あなたが、そう言ってくれたから。

「……うたってあげる、あなたたちのために。」

聞かせてあげる、女神の歌を。幾星霜、紡いであげる。気恥ずかしく、楽器は膝においたまま、息を吸う。星が綺麗だから、ちょうどいい。若陀も眠っているフリをして聞いているし、賑やかなところが苦手な魈の耳にも、届いては、いるのだろう。彼はこっそり人のうたを聴くのが上手い。

わくわくとしている子どもたちと目を合わせ、さあ、座りなさい、立っていては足が辛いでしょう、と地面を指差す。子どもたちが全員、きちんと座ってから、大きく息を吸う。文字を知らなくても、学ぶ機会が今はなくても、うたを知っていれば世界は広がるのだ。それをあなたたちに教えてあげる。

「こおりのつぶを よぞらにちりばめて────あなたのためのほしずくよ、きらめく世界」

とおくながいほしのまたたきは くりかえしてる いのちのらせん うたう

星はめぐり、花は咲く。

子どもの笑い声、人間たちの嬉しそうな声、夜通し騒いで、友の安らぐ顔、訪れた束の間の平穏。

こんなふうな、穏やかさが好きだった。 これは、わたしがすきなもの。たくさんあった、すきなもの。 これらは、わたしが、あいしたかったもの。愛することすら、放棄した遺物。死体は、魔神にとっては遺品に違いない。 瞬きの間だ、この宴の数日後に子どもが、たくさん死んでいた。この地は平和じゃない、妖魔も多く、瘴気に満ち溢れている璃月では弱いものから死んでいく。

人々を眺めては、民が平和であれ、と、戦がなければいい、と。あなたが、モラクス様が、仰っていて。

決してこんなふうに踏み躙られ、忘れ去られていいものじゃない。

人々が集まっていたところが一つ、妖魔に丸ごと。モラクス様の腕の中で人間が申し訳ないと、何度もモラクス様に謝っている、息絶えるまで。モラクス様はそれを聞き届け、人間に感謝の言葉を捧げている。

わたしがうたわずに、弓に爪立てて。妖魔が全て死ねば、世界は変わるのだろうか。

ほら、きいて、まだわたしのうたをきいて、こんなうたが、あるよ。

死なないで。いなくならないで。わたしとずっといっしょにいて。

血に濡れる獣めいた魔神を、めがみさま、と呼んでくれた。

弓を、弦を、掻き鳴らす。絶弦と呼ばれるそれを。意図して放つ。

おまえたちが、しぬことを、わたし、ゆるしていない。

体から溢れる虹色の光が、人間の体を動かす。骸を。中身が既にない器を、無理矢理に。

こんな歌もあるの、だから動いて。

「やめろ」

目を覆われる、少年の手だ。

「眠らせてやれ」

どうしてひとは、こんな簡単にしんでしまうの。どうしてわたしを置いていっちゃうの。

「泣くな、リビカ。」

戦いに強い夜叉のくせに、魈だって、こっそり泣くんでしょう。わたしがいま泣いたって、良いじゃない。





懐かしい魔神時代の記憶を、たまに夢に見る。このあと私はバーサーカーリビカにクラスチェンジしました。そうだ、京都に行こう、のノリで、そうだ、妖魔を滅ぼそう。そういう事になった。妖魔の首を弓をフルスイングして千切るのは獣のすることなんよ。残念だったな妖魔よ、私はどう足掻いても獣ですのでごめんあそばせ。首置いてけ。

甘雨がいない? 心が清らかなものにしか彼女は見えないんだけど、と言うのは嘘で、実はあの宴で私のうたを最前列で聴いてくれていた子どもの中に、角を生やした麒麟の子どもがいてですね。

すまない、諸君。わたしはあの頃は人間の記憶がない正真正銘マジの魔神なので、子どもと表現していても自分より若いと判断しただけで、見た目年齢おおきいちいさいの認識がガバガバである。だがしかし大きかろうと小さかろうと、おうたを聞かせてとおねだりしてくれる甘雨がめちゃくちゃ可愛かったのは事実です。



───────────────────

めぶきのかぜ





「我は、傷つけることしかできない。」 「わたしは傷つけられたことがないのに?」

ああ言えば、こう言う。満足に人の忠告を聞かない魔神がいた。どんなときであろうとうたをうたう、大切なものを喪おうと。あまりに見ていられない時とてあった。そうまでして歌う意味が分からない、言い放ってしまったことがある。歌う暇があれば弓の腕でも磨け、そして長く生きろ、そう思っていた。

「うたは、どこにでもあるよ。言葉がないうたもある。」 「我が言いたいのは、違う。歌そのものの意味ではなく、歌うことに何の意味があるか、だ。」 「うたは、表現で、思い出で、楽しみで、どこまでも自由だ。でも、こうだ、と決めつけていいものでもないんだと思う。」

璃月が平穏であれば、ただ琴をつま弾いていれば良い指が弓を引き絞る。的確に敵の急所を射抜く実力は背を預けるに値したが、それでもまだ神の領域には達しておらず、我の目から見ても帝君から見ても、いつ死んでもおかしくないものだった。

「うたはうたでも、わたしのうたは、ちょっと普通の歌と違うの。人間のものとも違う、意味なんてあってないようなもの、言葉を持たない旋律の時もある、でも、そうだね。」

背を伸ばした彼女の尻尾が揺れている。

「わたしはうたう、故に、在る。」

彼女の横顔に魔神の風格を見る。

「魈の……夜叉の眠りも守ってあげる」

散っていった同胞の眠りを妨げない、断言したうたうたう魔神、ものいう獣が矢をつがえることをやめ、弓そのものをぐ、と構える。距離が近づいていた敵を殴り捨てた。だからお前は、弓で殴ることをやめろとあれほど。

「そんな目でわたしをみないで」

敵の目が気に障ったのか、魔神の力で弓そのものの形を変え、大鎌とする。獣の目が獲物を見据え、爛々と輝いている。璃月に訪れたうたうたう獣はもはや、命を刈り取る形をしている。

殺生が好きではありません。嫌いでもないだけで。でもわたし、好きなものはたくさんありますよ。今、それらを愛せないだけで。 できないことでもありません。

帝君と話していた声がよぎる。彼女の好きなもの。彼女が、愛したいもの。うたうたう獣が、微笑むとき。妖魔の命を奪うときにこそ、その獣はようやく、笑ってくれる。

壊れてしまったのだろうか、そう言う夜叉もいたが、我は違うと信じている。 帝君に差し出したあの言葉は、正気であった、と。

『モラクス様、わたしは約束をいたします。 わたしが死したあとも、 わたしの歌は、あなたさまがお守りしたいものをおまもりいたします。』

嘘つきめ。それとも、死ぬつもりだったのか。死ぬと分かっていたから、あんな約束を帝君と交わしたというのか。

「しょう、きょうは、あなたのゆめをみるよ」

憎まれ口はどうした。もう喧嘩はしないのか。我は喧嘩をした覚えはないが、帝君はあまり虐めてやるな、喧嘩をするなと仰っていた。我とお前は、対等であったのだろう。我を見て忙しなく動く耳と尾は自慢ではなかったのか、丁寧にしていた毛繕いはどうした、こんなにも、血と土で汚れて。

「逝くな」

絶望がそこにいる。地獄が息をしている。お前がいない。

「お前まで、我を置いて逝くな」

立ち尽くす、触れていた指先から零れ落ちる。彼女が花に変わる。世界が暗くなる。彼女は何も、のこってなどくれない。かきあつめた花で腹が満たされるのは甘雨ぐらいだ。

甘雨が泣いている。人間が嘆いている。帝君を悲しませるなど、不敬だぞ。 何も敷かず地べたに寝るな。我はいいがお前は駄目だ。体を壊すだろう。魔神だろうと駄目だ。何度言ってもお前は言うことを聞かない。

我をおいていくなど、許した覚えはない。 お前のうたが、聞こえない。 夜叉も満足に眠ることが叶わない。 むせかえる花のにおいが、この手にこびりついている。花は風に攫われ、この地に二度と帰らない。





◇ ◇ ◇



私の行動が不敬だ、耳と尻尾が見苦しい、と魈に言われたのはモラクス様と一緒にいるところを見られた後だ。

「モラクス様」 「どうした。」 「どこにいかれるのですか?」 「ああ、気になっている村があるので見てくるだけだ。あまり大勢で行くのも気を使わせるだろう。」 「……そう、なのですね。」 「……と思ったが、道中、お前の歌を供にしたくなった。着いてきてくれるだろうか。」 「はい、よろこんで!」

張り切ってうたうたい、モラクス様の心を慰めながら村を見て回り、拠点としているところに戻る。彼はどこで見ていたのか。魈のことだから見えるところにはいないのだろうけど、モラクス様がいなくなってから、わざわざ真横に現れて、腕を組み、私を睨みつける。何なの。姑なの。

「不敬だ。その耳と尻尾も見苦しい。」

本当は鳥であるらしいが、人間の形をとっている魈に鳥の気配はどこにもない。私の耳と尻尾をジロリと見ながら、お前はきちんと変化はできないのか、そのような弱点を晒して、そんなことを彼は言いたいのだろう。ムッとして、先ほどまでゆったりと動いていた尻尾や耳が苛々と暴れてしまう。

「だれにも迷惑はかけていません」 「我にはかかっている。」 「見なきゃ良いでしょ。」

ふん、と背を向けて、わざと尻尾をぶつけて離れる。

「帝君が気にされる。我の目の届くところにいろ」 「自分の身は自分で守れる!見苦しい獣は遠くに行きます!」

なぜわたしが怒っているのかわからない顔でついてくる少年仙人から離れ、親愛なる魔神の元に。モラクス様は尻尾が腕に絡んでしまっても、くっつけても、そんな風に怒らない。 わたし、あなたの起こす風が好きなのに、あなたはいじわるばかり言う。



あなたはわたしのことがきらいなくせに、ずっとそばにいるから、つい、あなたにつめをたてた。“あなたのゆめをみるよ”なんて、人々の夢を飲み込んだことがある彼にしていい台詞じゃなかったのかも。でも不思議なことに、この体が朽ちていくとき、ほんとに、あなたの夢を見た気がした。



また思い出している。推しとの記憶。璃月に行ってから、懐かしい思い出が良く過るようになった。歳かな。私の魂、いま何歳なんだろう、考えたくない。気持ちまで老いるわ。ここぞとばかりにあれこれをつついてくる魈がリビカは苦手で、けど気になっていた。仲良くはしたかったんだ、彼女は猫で、心地よい風が好きだったから。 人間時代の私の記憶としても彼は推しなので苦手な気持ちを消したいものだが、魂に染み付いたあれこれは、なかなか難しい。

バーバラと璃月で買ってきたアクセサリーを二人で分けていた。このリボンは、彼が璃月の港、早朝の屋根の上とはいえ町中で拾ってくれたものだ。あの寂しそうな姿が過ぎった。急に顔を見たくなって、声を聞きたくなる。

「そのリボン誰かにもらったの?」 「何で?」 「だって、恋する乙女の顔してる」 「違うよ」 「ならもらっちゃおうかな〜!」 「だめ!」 「ほら」

恋ではない。推しなだけで。リビカにとっても、失えない戦友なだけだ。ライラにとって魈は歌を聴きに来てくれた一人でしかない、落とし物を拾ってくれた親切なファンだ。手に入ってしまったリボンを握り締めて、璃月の港に行かずとも、攻めてみようかな、なんて。

たまに会いにきては風の噂を届けにくる吟遊詩人が、もし璃月に遊びに行くならあそこがいいよ、そう教えてくれた場所。

荻花洲。

使い慣れすぎた弓で静かな空間を作り、敵が来ても気付きやすい場所をとり、軽くストレッチをする。

さあ、さあ。仁愛をあなたに。璃月のために戦った我が同胞よ。わたしは賛えよう、あなたの生き様を。自由に、鳥を、呼ぼう。

「────うたうたう、めぶきのうた」

風の神の目が光を放つ、風神に与えられた祝福のせいで、私の髪の毛も僅かに光り輝く。すごく目立つんだよこれ。あの吟遊詩人野郎、次あったら猫をけしかけよう。

体から光が溢れるさまが懐かしくて、どうして、リビカの力を使えているのか、真面目に考えようとしたが、やめた。この原理がよくわからない不思議世界、なるようにしかならない。

離さないで ぎゅっと手を握っていて 続くと言って

風にのって遠く、どこまでも響け。愛するもののためにうたううたは、何者も遮ることはできない。うたを止めるものがいるとすればそれは、うたを理解しないものぐらい。

「何をしている」

ほら、璃月を護る夜叉が来た。

不完全燃焼だが、うたうのをやめる。リビカの賛牙としての力。“つい”のそばにいるためのうた。誰かに繋がるはずの感情を押し込める、誰かのもとへ届きかけた碧の光が消え去ったことにホッとした。



◇ ◇ ◇



春を呼び込む東風は璃月を再訪す。 “しんあいなる、璃月に” 目の色も、髪の色も異なる。名前とて違う。璃月の人間たちを見て綻ぶように笑った、うたうたう魔神と同じ顔をしていた、見覚えがある、お前はそうやって、穏やかさの中で笑うのだ。

賑やかさを連れてきたあの人間がこの地に親愛を向けるのは、なぜなのか。うたうたう人間は祈祷牧師(あいどる)という仕事をしているのだと凡人たちが騒いでいた、職務を全うするためだけに親愛と告げたならばそれで良いが、もし、そうでなかったなら?彼女に前の記憶があるとしたら。ただの凡人と成り果てた彼女に近づくべきではない。我は知っている、知っているはずだ。それなのにうたを聞けば、お前なのではないか、期待した足が考えるよりも先に駆けている。

「一人で何をしている、モンドの人間よ、なぜこの地にいる。風神はどうした。」

腕を組む我を見つめ、うたを止めた。風神に祝福を受けている人間がモンドを長く離れるわけがない。近くに風の神がいるのかと思えば、そうではないようだった。

「うたうたうために、此処に。」 「……”うたうたう、故に、ある。”ある魔神の言葉だ。お前も、うたうたう者か?」 「……よくわからない。うたは、うたうものだよ。」

爪弾いてはいなかったモンドの楽器を我に見せ、その人間は目を泳がせる。何かを決めたのか、楽器を盾にして我を伺い見る。

「……あなたは、聴いてくれる?」 「……お前が聴いて欲しいなら聴いてやる。」

人間はモンドの楽器に指を添える、その手の爪は短い。獣とは違う。

「あなたをライラの特別コンサートにご招待!」

キラッと呟くその動きにはいったい、どんな意味がある。おどけるような物言いをした祈祷牧師(あいどる)が奏でるのは、魔神が時折弾いていたうたうたいのねこ、言葉なき旋律だ。どこか情熱的な響きがするものだった。

軽やかに、けれど華やかだ。立て続けに音は紡がれ淀みがない。風を思わせるが、花を散らさない。帝君はあの日、彼女の歌を聴いていた。だがこれといった大きな反応を示してはいなかった。それが答えではないのか。リビカは、死んだ。死んだ者は蘇らない。

「余所見だなんて、いい度胸。」

俯きかけ、考え込んでいる我を覗き込んだ彼女がいつかと同じ顔で睨んでくる。

「そんな悲しい顔で聞いて欲しいうたじゃない。」

歌うのも聴くのも、どのような想いになるのかも、自由ではないのか、うたは。お前が言っていたことだ。こつりと額が合わさり、すり、と擦り寄られる。我に触れるなど、怒るより先に既視感を覚えた。リビカが帝君にしていた挨拶だ。“不敬だ!”と怒鳴った原因の一つであり、雌の体を持った獣が雄の形をとっていた帝君に擦り寄るなど許せなかった。

伏せられたまつげが触れ合う距離。風神の色が混じった髪も夢見るように閉じられた瞳も分からなければ、あの頃としか思えない姿形をしている。

「わたし、あのとき、あなたの夢を見たよ。」

ぽつりと囁かれた。子どもめいたひみつが、やけに甘い。幸せそうに笑う獣の幻を視た。立ち尽くすような我の表情に彼女はそろりと距離を置き、口遊む。我の忠告を顔を逸らし聞いていた、あの魔神としか思えない態度で。

「……風はうたい、わたしの花は散る」 「待て!」

風と共に逃亡の一手を選んだ人間を追いかける。足が軽い、体もそうだ、どこまでも駆けていけそうだ。動揺した獣を追い詰めるのはたやすい。

「記憶が、あるとっ先に言え!!!」 「怒らないなら言ってましたーーー!」 「我はお前を怒ったことはない!止まれ!」 「現在進行形で怒ってるよ!?どう足掻いても般若面真君!!!」 「我は夜叉だ!」 「知ってる!!!」

そんな我らを見ては声も出せずに身悶え爆笑する荻花洲の笛吹きがいた。やはり風神がいるではないか、魔神に好かれやすいうたうたう獣め。お前はあの頃からあちこちで魔神や妖魔を引っ掛けては攫われかけて帝君と我がどれほど気を揉んだことか。

「逃げるな、リビカ!我はお前に話がある!」

足を止め振り返り、我を見て笑った。 綻んだくちびるは切なげに、一瞬、泣かせてしまったのかと慌てた。それでも、瞬きひとつで、彼女の表情の大半を占めるのは吹っ切れたような清々しさだ。

「私は、ライラだよ!」 「お前は人の忠告を聞かないくせに話があると言えば足は止めるからな」 「そんな酷いことする?」

相変わらず律儀な彼女の腕を掴んだ。そこそこ強い力を込め、頬をひきつらせている彼女を睨みつける。

うたうたう魔神リビカは死んだ。 だが、彼女は、ライラは生きている。 言いたいことは山ほどあり、あらゆることを懐かしむには、一日では足りない。そして、我らにはまだ時間があるようだ。

「何だあの舞台(すてーじ)衣装は、肌を隠せ。風邪をひく。」 「そこなの!?あれぐらい普通だよ!?」



夜叉は、捕まえた獣をどうしたのか。 そのような問いへの答えは既に用意していた。 我のすべきことなど決まっている。鍾離様もひだまりで寝息を立てる獣を眺めては前に仰っていた“かわいいものには旅をさせるな”。 つまり、我がとるべき行動は一つ、彼女の保護に他ならない。



◇ ◇ ◇



魈が話すのは、これまでの璃月。 うたうたう魔神リビカ(わたし)が死んだ後、起こったこと。人間たちがとても嘆き悲しんだこと、しばらく塞ぎ込んでいたモラクス様の様子に、甘雨は案の定大泣きしていたが吹っ切れたように立ち直って、魈自身も、張り合いがなくなってつまらなかった。そんなことを隠さずに伝えてくれた。 私もまたライラとして生きてきたほんの少しの時間を彼に話す。風の神の目をもらったときのこと、そのときにリビカであった記憶を思い出し、風神の祝福も受けた。璃月のライブに来てくれて嬉しかったこと、リボンを拾ってくれてありがとう、と言えば、礼などいらぬ、とそっぽを向かれる。トゲが抜け落ちたような彼が横に座り、様々な話に相槌を打っている。リビカのときにはなかった時間だ。こうして互いに、考えや想いをすり合わせるなんて。ずっと言い合ってばかりだった。

良いこと、嬉しいこと、のはずなんだけど。むず痒さが込み上げてくる。これはたぶんリビカとして生きていた反動もある。

「魈、前はそんなに優しくなかったのにどうしたの?へんなものでも食べた?」 「は?」

落とされた声がクソデカ感情をとんでもなく押し殺したように聞こえ、地雷を踏んだと悟る。魔神リビカ時代の記憶が蘇りすぎる。こんな日が多々あった。

「────靖妖儺舞」 「私のこと殺しに来てる!?────賛えよ、女神のうた!クロア リュォ ズェ トゥエ リュォ レィ ネゥ リュォ ズェ 」

私の元素スキル、あらゆるうたを力とする。これは堅固たる護り手の調べ、フォースフィールド。ダメージの無効化だ。私の小細工を鼻で笑ったであろう魈に、嫌な予感がひしひしとする。

「逃さぬ」

それ通常攻撃ボイス。





───────────────────

もしもの話。 魔神リビカの復活〜発情期だよワッショイ編〜



「アビスに仕えよ」 「っア、ああ、イヤ、いやだ」

風神に与えられた祝福とアビスの使徒による呪いが混ざり合う。とんでもない刺客をけしかけないでほしい。詠唱者もいるとか聞いてない。二人がかりはあまりにも酷い。こちとら真面目に祈祷牧師(アイドル)してるだけなのに、人間としての生命を全うさせてほしい。

「やめて、おねがい、やめてください、何でもします、なんでも、」 「何でも、と言ったな?」

お前には言ってない、世界に吐き捨てたんだ。殺すぞ雑魚が。あふれてくる、おさえきれない。唇を噛み締めては、地に爪立て、土をえぐる。ダメなやつ。これは絶対に、ダメなやつ。頭を何度も振っては頭の中に入り込んでくる洗脳めいた囁きを追い出そうとする。あっわたしあびすのことだいすき♡あびすのみなさんがすき♡うたってあげる♡無意味だった。こんなんひどい、そくおちする。

「バルバトス様の、ばかっ」 「世界に芽吹きを齎してもらうぞ。魔神リビカ」

ここぞというときに現れない吟遊詩人野郎に悪態をつき、痛みすら走る自分の体を抱きしめる。囲まれる、どこかに、連れて行かれる。きやすく、わたしにさわるな。

たすけて、もらくすさま 「しょ、魈……」

落ちていく涙がみっともない。ぼろぼろ鳴いて、泣いて、わたしがなにかもわからなくなる。

「────!!!────!」



◇ ◇ ◇



「無事か。」

魈は彼女を担ぎ上げ洞天に引き摺り込んだ。そこは仙気が満ちる場所。暴れて地面に落ちた獣めいた彼女がいる。

猫の耳と尻尾、魈がよく知るうたうたう魔神リビカの形だ。風神の祝福の気配は微塵もない。

「ちかづかないでっ!」

耳と尾の毛を逆立て威嚇しているが、魈は気にせず手を伸ばす。体を地面から離すため身を起こすのを手伝った、魈は彼女が土に汚れるのをよしとしない。彼女を看取ったときを思い出す。

なぜ今なのかは分からないが、魈は彼女に触れている手に力を入れた。

リビカには、発情期がある。 璃月に訪れた彼女はある一定の周期で、一人になる時があった。心配するモラクスさえ、見ることも近づくことも許さず。魈は彼女から伝えられることすらなかったのだが、勝手に知っていた。

「あの頃、お前のそばに近づける者はいなかったがその姿、誰にも見せたくないわけがよく分かった。今のお前は魔神らしからぬ、ただの獣だな。」 「うるさい、さわらないで、おかしくなる」

彼女の獣の尻尾でベシベシ叩かれているが魈は気にしない、これが通常運転だ。ピシャリと跳ね除ける彼女に目を細める。離れようと足掻く姿も哀れであった。随分と辛そうで、これがモラクスであれば身を委ねるのだろう、と魈は考えてしまったが、腹が立った。彼女は近づくなと言っていたが、近づきさえすれば、恐らく“つい”に成り得たであろう相手だ。何故ならば彼は彼女と同じ魔神で、モラクスは、璃月の誰よりも強かったから。それにリビカはモラクスに弱い。彼女が彼を愛していることは、魈はそばで見ていたから知っている。

「聞いてやる道理がどこにある?お前が魔神ではなく、ただの獣ならば我の手でも捕まえられる。……“つい”が欲しいならくれてやる。」

涙で溺れている瞳は、信じられないものを見る目で魈を見た。耳と尾は震え、縮こまり、怯えている。胸がすく。魈には興味はないと顔を逸らされる澄まし顔よりよほど良い。憎まれた方が、満たされるものがある。

「だめ、ダメ、ゆるして」 「我は、怒ってなどいない。だが、許さん。なぜ我を置いて逝こうとする。なぜ、我がお前の選択を許すと思った。お前は無能ではない、わかっていたはずだ。」

危険を感じた瞬間、彼女は魈の名を呼べばよかったのだ。また、無意識で魈の地雷を踏んだことを彼女は察した。地雷原でタップダンスするつもりなどなかったというのに、リビカ時代から彼女は魈の地雷を連続で踏むことが上手かった。地雷原タップダンス大賞があるとするなら、賞を総なめする程度にはお上手だった。現在進行形で魈の腕から逃げるため、イヤイヤと嫌がる様子にも、魈はフツフツと怒りを溜めている。

彼女が魈から離れようとすること事態が、そもそも魈の地雷だった。

“つい”であるつがいがいれば彼女は頼ることを覚えるのか、それとも身籠もり母となればこの生き物は慎重になるのか。魈は考えては、重たく息を吐いた。魈は、夜叉より頑丈であったはずの魔神を生かす方法ばかりを探っている、昔から。

「……毛繕いの習慣があると言っていた。」 「や、やだ!魈は、“つい”じゃない!」 「やだと言うな。」

彼女の拒否、拒絶、一蹴、否定、逃亡。すべてが魈の地雷だ。

「本能に勝てない獣が、我に勝てると思っているのか」 「ッ」

諦めてしまえ、本能に堕落しろ。ちろり、蛇のように舌を見せつけた。分からせてやろう、我は毛繕いをするぞ、そんな夜叉の鋭い眼差しに彼女の肩が跳ねる。涙目になってしまっているであろう目で彼を睨みつけるが、素直にごろごろと鳴ってしまう喉を、魈は笑っていた。ライラは叫びそうになった、推しがいじわるだ。どシコリワンダフルえちちコンロ点火尊さ大噴火ワッショイ祭りなんて思ってる場合じゃない。流石に空気を読み、飲み込んだ。

「お前が賢い獣であれば、我や昔を思い出したことを伝えず獰猛な夜叉になど近づかなかっただろう。その愚鈍さは我が褒めてやる、喜ぶが良い。お前はいまもひだまりで寝息を立てる愚鈍な獣だ。」 「おこってるぜったいおこってるマニアックな一部のひとしか喜ばないことばぜめみたいになってるわたし喜ばないからね」

魈は顔を寄せる。額に額を合わせられ、擦り付けられる。それは、リビカの、挨拶だ。彼女は自然と魈の背に手を回し、おかえしをするべく魈の首元に擦り寄った。尻尾と耳がせわしなく、ぴくぴく動いている。彼女の浮いた背中をさする魈の手は執念い、熱をもたらすような動きに、彼女は足の指を丸め、うぅ、と唸った。

「別に構わない。我を憎め、我を恨め。それでお前が生きていけるならば、我はそれで良い。」

憎め、恨め。そう告げる夜叉の声はうんと甘くて、ライラは涙をこぼしながら、ずるい、と呟いた。

「魈が、わたしの”つい”に、なるの?」 「嫌か。」 「…………いやじゃない」 「その間はなんだ。まあ、良い。毛繕いをしてやる、動くな。我が慰めてやる。」

ベッ、と思いっきり見せつけられた舌に彼女は目を泳がし、勢いが良すぎるよ、と思いながらそっと目を閉じた。優しくないのに、やさしい、矛盾したあなたが好きだ。あなたが、“つい”なら、きっと悪くない。おすきなところをごじゆうにどうぞ。

無防備に腹を見せるやわらかな獣は魈の地雷ではない。むしろ、好物であった。

このあとめっちゃにゃんにゃんした。



数日後、ようやく解放され、よろけた体で命からがらデロ甘と化した“つい”の洞天から逃げ出し、ここぞというときに姿が見えなかった吟遊詩人野郎を見つけた瞬間にラリアットをかましたローブ姿の彼女は、フードを深く被り獣耳と尾を隠しながら酒を浴びるように飲んだあと、机に突っ伏しながらむせび泣き、全てを話した。 彼女に祝福を与えし吟遊詩人野郎は手を叩いて爆笑した。どっちも酒を浴びるように飲んでいた。マトモではない。二人とも最初からマトモな生命体ではなかったが。風神は猫アレルギーが彼女に反応しないことを喜び、こう言った。

「ちっちゃいリビカができたらボクに抱かせてね。可愛がってあげるから。あーあ、祝福も残ってないし、何だか残念だな〜。ちっちゃいリビカで我慢するけど!」 「できないからね!?祈祷牧師どうしよう!!!こんな姿じゃライラの知り合いに会えない……!」

リビカ時代のケモ耳美少女に戻ってしまった彼女は嘆き、決意するのはモンドを離れ璃月へと向かい人の世を離れることか、それとも────





















「でも、(つい)が見つかって良かったじゃないか。安泰だ。」 「それは、うん、まあ、はい。」

“つい”とは。 端的に言えばうたうたう魔神リビカのつがいであるが、このテイワットという闇が深そうな世界の魔神である彼女にとって、“つい”とは、動物のつがいのような単純な関係性ではない。

“つい”それは彼女の対、つがいでもあるが、終、終の住処でもある。 獣の本能が強い彼女に安らぎをあたえるひだまり。

うたうたう魔神リビカ(わたし)がモラクスと交わした契約。 安らげる地、眠り、ひだまり。死すべきときに死ぬための“つい”、すべて同じものを指した。

天理や各地に広がった災厄さえ遠ざけたがった魔神リビカの正体。 詩人に愛された女神。滅ぼ去れかけていた人間と交わったのは、猫の姿をした魔神。 猫のリビカは、虹色の卵を落とした。 わたしは、産まれなかった卵だ。 理から外れた、まつろわぬ神。 わたしは、リビカじゃない。他に名乗る名前がないからわたしを産んだ女神の名を借りただけ。

この地へ転がり落ちたうたうたう魔神は、卵の中の「種」で、女神の歌で目覚め、芽吹いた大地に広がって、紡がれたのは、はじまりの歌。わたし、という、うた。 わたしは、わたしを終わらせられるつがいを探していた。

「わたしのお母様は、猫なのかな……めっちゃ見てみたい。お父様は果たして、どんな人間で、そもそも雄なのか雌なのか。」

リビカは、“つい”が美しければ性別問わず、番っていそうだ。天を見上げ、お母様はいったいどこにいるのやら、なんて大きく伸びをした。 ライラに生まれ変わっていたうたうたう魔神リビカはこうして目覚めた。

うたうたう魔神は夜叉と在る
novel/17812705の続きです。
捏造注意。微クロスオーバー。ゲーム本編の時系列ガバガバ。ゲーム本編、ストーリーを含め様々なネタバレを含みます。ご都合主義、己の本能に従いました。続き正座タグありがとう。

もしもの話はめっちゃ、“癖”です。にゃんにゃんは見せられない(苦手)よ。全年齢だ、安心してくれ、大丈夫だ、問題ない。必殺、にゃんにゃん割愛。心の目で見てください。スクロールバーはもうないです。

すてきなうたがこの世界には溢れているんだなぁ。どれもやさしい、大好きな歌たちです。造語の歌はすごく素敵で、一度聴いてほしい、惹き込まれます。星霜もすごく好きです子守唄にいい。うたうたいのねこもめっちゃおすすめ、楽しい。知ってる方は握手してください。ある映画のものだったり、たまたま見つけたものだったり。恥ずかしくなってきたらマイピク投げ込みます。

実は、ずっとしまっちゃう魈くんが見たかったんです(開幕でベショベショに泣く)
どんなシチュエーションでも良いんですけど魈くんがお相手をしまっちゃうのが見たくてたまらないんですいのち たすけてほしい。
クソッ浴びるほど欲しい。書かなきゃ見られないお手軽な絶望。
いや魈くんはそんなことしない!ってキレる私とヤダヤダしまっちゃう魈くんが見たいってジタバタしてる私がいてもう解釈の渋滞っていうか醜態を晒しとるんです。

誤字脱字気づいたら直します
続きを読む
3513654653
2022年6月21日 14:54
ネギトロねぎとろ

ネギトロねぎとろ

コメント
作者に感想を伝えてみよう

関連作品


ディスカバリー

好きな小説と出会える小説総合サイト

pixivノベルの注目小説

  • 菫の姫を殺すまで
    菫の姫を殺すまで
    著者:王月よう イラスト:毒田ペパ子
    〈第3回百合文芸小説コンテスト〉大賞受賞‼︎“菫の姫”に心酔した少女たちの奇妙な百合虚言オムニバス