自民党改憲草案
憲法はどうわる

前 文

現行憲法

政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、

改憲草案

先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、
自民党の改憲草案では憲法全体で「戦争を絶対にしない」という記載が無くなりました。 そして、「我々は、美しい国土を守り」と国民に国防義務を課しています。
また、これまで憲法前文に天皇に関する記載はありませんでしたが「天皇を戴く国家」と記載され、 改憲草案1条では天皇を元首であると規定しています。
一方で現行憲法の前文に記載の無かった「基本的人権の尊重」が記載されました。 しかし、後述するように改憲草案12条では基本的人権より国益が優先される旨が記載されています。

現行憲法

陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない

改憲草案

内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する
「徴兵制」を合憲とする事が可能になります。
自民党の改憲草案では新たに国防軍に関する記載が追加されました。 第二章の章題は「戦争の放棄」から「安全保障」に変更されています。
国防軍は「国際的に協調して行われる活動」を行う事ができると記載され、「集団的自衛権」を認める内容になります。 これにより米軍などの同盟国の軍隊が攻撃された際に国防軍が一緒に戦って防衛する事が可能になります。 また、国防軍に軍事審判所の設置も明記され、軍人等の職務の遂行上の犯罪などが通常の裁判所ではなく軍事審判所で裁かれるようになります。
そして9条の3には「国民と協力して」とあり改憲案前文3段と共に国民に「国防義務」を課しています。 18条2項では「意に反する苦役」に服されない事を定めていますが、それは12条で国益に反しない場合に限定しており、 国防を最大の国益として前述の「国防義務」と共に「徴兵制」を合憲とする事が可能になっています。
アメリカの情報公開により、戦争時に自衛隊が米軍の指揮下に入る事が日米合同委員会で合意されている事が判明していますが、 国防軍も同様の合意で実質的に米軍の下部組織となる可能性があります。
「日米合同委員会」とは日米安全保障条約第6条に基づく日米地位協定の第25条に規定された日本の官僚と米軍の会議。 ここでの合意内容は機密として国民に公開されないが、 後述する統治行為論により合意内容は憲法より上位の存在となる。 それによって、ここでの各種合意内容が根拠となり米軍には国内法が適用出来ない。

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現行憲法

国民は、常に公共の福祉のために自由及び権利を利用する責任を負う。

改憲草案

国民の自由及び権利には責任及び義務が伴う。公益及び公の秩序に反してはならない。
基本的人権の対価に責任と義務が求められ、基本的人権より国益と社会秩序が優先されます。
公共の福祉とは個々の人権同士が衝突した際に社会全体の利益の為に人権を調整する原理の事
公益及び公の秩序とは国益と社会秩序の事で人権同士が衝突しない場合にも適用されます
現行憲法では人権が制約されるのは人権同士が衝突した場合のみでしたが、 改憲案では国益に反する場合にも人権が制限されます。
また、国際人権規約では委員会が公共の福祉で人権が制約される範囲が必要以上に広がらないよう法律に明記することを求めていますが、 改憲案では制約の範囲が広がっています。
基本的人権よりも国益が優先され、全体主義や軍国主義が加速する形となります。
そして、13条では人権の尊重が「個人として」から「人として」に変更されています。 これは個人の尊重は憲法で保証されず集団の人としてのみ認識される事を示しており、憲法が多様性を否定する事に繋がります。
「公共の福祉」では例えば「報道の自由」と「プライバシー権(人格権)」が相反した場合、 一般人にはプライバシー権が、国会議員などの公人には報道の自由が優先されます。 つまり、人権を制限出来るのは人権のみとなります。
「公益及び公の秩序」では、人権同士の相反が無くても国益に反すると判断されると「報道の自由」などの人権が制限されます。 つまり人権が国家によって制限されます。

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現行憲法

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。

改憲草案

何人も、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。
「政治的な」または「軍事的な」拘束や拷問が可能になります。
奴隷的拘束に対して条件が追加され、「政治的な」または「軍事的な」拘束が可能になります。 また、36条の拷問の禁止から「絶対に」の文言が削除され、 前述の12条改正と合わせて国益や社会秩序のためであれば政治的または軍事的な拷問が可能になります。

⚠️注意⚠️

国会法68条の2により改憲発議は衆議院100人以上と参議院50人以上の賛成が必要であり改憲発議が出来るのは自民党だけです。
つまり改憲発議案の最終決定権は自民党にあるので他の改憲賛成の政党が現在どの様な改憲案を提示していてたり加憲や創憲といった他の言葉に置き換えていても、 護憲でない政党に投票すれば結果的に自民党改憲発議案に賛成する事になります。