記事更新日:2022年04月26日 | 初回公開日:2022年04月25日
用語集 外国人採用・雇用 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報アンコンシャスバイアスとは、無意識に起こる偏見や先入観のことを指します。アンコンシャスが無意識、バイアスが偏見、思い込みなどを指す言葉でできています。「男性は仕事をして女性は家事育児をするべきだ」などが代表的です。アンコンシャスバイアス自体は誰もが持っており、それ自体は問題ありませんが、さまざまな場面において問題視されるようになりました。現代の日本では、女性の社会進出や企業での働き方、家庭内の家事分業など、さまざまな社会生活のあり方が多様化しています。多様性を求める時代であるからこそ、アンコンシャスバイアスと向き合うべき課題であるとされているのです。
アンコンシャスバイアスが注目されるきっかけとなったのが、アメリカの大手企業での社員構成比でした。人種や性別などの社員構成比が偏っているという事象があり、その原因がアンコンシャスバイアスであるとされたのです。その企業はアンコンシャスバイアスを解消するため、多様性(Diversity)、公正性(Equity)、受容(Inclusion)の頭文字をとった「DEI」を取り組みました。多様性を認め、誰でも公平に情報や機会に出会うことができる動きとして、世界中で取り組みが広がっています。
アンコンシャスバイアスが生まれるのは、自己防衛をしようと感情スイッチが入ることが要因です。たとえば、自身が持つこだわりや思考、コンプレックスなどを他者から刺激されることで、他者に反撃したり冷静でいられなかったりするということがあります。これこそが自己防衛本能反応の表れです。人は安定を求める性質があるため、他者からの攻撃を受けても安定を保てるように先入観という思考で防衛しています。このような防衛本能こそがアンコンシャスバイアスが働くスイッチになっているのです。
アンコンシャスバイアスには、いくつか種類があります。一つは「ハロー効果」。ハロー効果とは、その人への好意や親近感により、その人のすべてのことが好意的に思えてしまうことです。たとえば、「この社員は前のプロジェクトも成功したから、別部署のプロジェクトでもきっと成功するだろう」といった思い込みです。このような思い込みは、その人に対して盲目的になり、本質を見極めるのが困難になります。間違った評価をされてしまうと、その人自身が合っていない仕事を任せられたり、過剰な期待に耐えられなくなってしまうといった問題が考えられます。
ステレオタイプバイアスとは、年代や性別、人種、職業といった属性ごとに特定の性質があると思い込むことです。たとえば、「若者は礼儀がなっていない」「男性は家族を養わなければならない」「外国人はルールに従わない」「飲食業はブラック」などです。アンコンシャスバイアスの中でも、特に代表的な例と言えるでしょう。ステレオタイプバイアスが働くことにより、個人の思考や現代社会における多様性が否定されてしまうことになります。
確証バイアスとは、仮説や価値観の正しさを立証しようと、有益な情報ばかり集めてしまい、反対意見や情報などを無視しようとすることです。たとえば、副業のメリットやポジティブな情報ばかり集め、デメリットやリスクの情報は集めなかった。いざ副業を始めてみたら思っていたのとは違い長続きしなかったといった例が挙げられます。科学的な根拠や客観的な意見を無視してしまうことで、最終的に間違った判断をしてしまうことが考えられます。
慈悲的差別とは、少数派や立場の弱い人、女性やお年寄りといった人たちに対しよかれと思ってした対応が差別を生んでしまうことです。たとえば、体力に問題がなくてもお年寄りには荷物を持たせない、女性は会費を安くするといったことです。当人はそれをされる必要を感じていなかったり、望んでいないということもあります。勝手な思い込みで弱者のような扱いされてしまう事を不快に思う人もいるので注意が必要です。慈悲的差別は、無意識的に起こってしまう差別的思考であると言えます。
インポスター症候群とは、実績や能力があったとしても、自分自身がそれを認められない状態のことです。どれだけ仕事やプライベートが充実していても、周囲のサポートがあったから、運が良かっただけなどと思い込んでしまい、自分の力を信じられない状態に陥っています。インポスター症候群は女性に多いと言われ、自己評価が極端に低く、過度な謙遜や自身を卑下する言動などが特徴的です。本来の力を発揮できないばかりか、悩みすぎてしまい、体調や生活にまで支障をきたす場合があります。
正常性バイアスとは、自身が危機的状況に置かれていたとしても、自身にとって不都合な情報を軽視したり無視してしまうことです。たとえば、「老後資金は3000万必要と言われているが、自分は大丈夫だろうと思い込んで貯金などをしなかった。」「不摂生な食生活が病気につながると知りながら、自分は大丈夫と思い込み、改善をしない。」といった例が挙げられます。いざ自分の身に悪影響が出始めてから過信であったと気づき、気づいたときには取返しのつかない状態になっていることもありますので、注意しましょう。
集団同調性バイアスは、多数派同調性バイアスとも呼ばれます。自身が判断しかねているとき、多数派の意見が正しいという思い込みをしてしまうことです。コミュニティ形成の際に現れる社会的行動を誘発する心理です。集団同調性バイアスが出ると、多数決で決まった意見に後からモヤモヤしてしまうといったことがあります。また、災害時に避難行動をとらない人が多かった場合に、多数派に同調してしまうと、避難の遅れや集団で被災してしまう場合が考えられ、時と場合によっては非常に危険であると言えます。
アインシュテルング効果とは、自身の成功体験や、親しみのある価値観などにとらわれてしまい、それ以外を無視したり軽視してしまうことです。たとえば、自身の過去の成功体験にとらわれ、それ以外の手法を試さないといった例が挙げられます。これは、企業内においても、上司の昔の成功体験を引き合いに出し、一つの考え方だけを押し付けられるといったケースが当てはまります。さまざまな事象においての臨機応変な対応や、柔軟な考え方を阻害してしまい、結果古い考え方に固執する社風を生み出してしまうことになるでしょう。
アンコンシャスバイアスが与える影響は、多様性の喪失が代表的です。企業という組織においては、ステレオタイプバイアスや集団同調性バイアスが起こりやすく、個人の意見が言いづらい風潮を生み、多様性が失われる原因になります。多様性が失われると、画期的なアイデアが生まれにくくなり、新たなソリューション展開が阻害されます。また、パワハラをはじめとするハラスメント行為やコンプライアンス違反も起こりやすく、企業の成長にとっては非常に致命的な問題となるでしょう。
アンコンシャスバイアスにより、個性を尊重しない風潮が蔓延してしまうと、人間関係を悪化させることにもなりかねません。個人の意見や個性が押さえつけられることによる反発が起こり、個人間の関係だけでなく職場の雰囲気全体が悪くなってしまう事も考えられます。職場の雰囲気や人間関係が原因で、優秀な人材が次々に退職してしまうこともあります。アンコンシャスバイアスが色濃く出てしまうと、企業の成長に致命的な問題が発生しやすい状態になるため、軽視することはできません。
アンコンシャスバイアスに対処する方法としては、まずアンコンシャスバイアス自体を理解することが挙げられます。誰もが必ず持っているものであり、思考の部分であるため100%対策することは難しいですが、その性質を理解し、行動に移しやすいものから対処しましょう。また、企業内やチームにおいて、アンコンシャスバイアスによってどんな弊害が生まれているのか、実態を把握することも重要です。実態把握と、ひとりひとりがアンコンシャスバイアスを持っていることを自覚し、意識しながら行動することから始めましょう。
アンコンシャスバイアスを企業で対策するためには、社員ひとりひとりの意識を変える必要があります。そのため、経営層やマネージャークラスだけではなく、社員全体にアンコンシャスバイアス研修を行うという手段もあります。偏見や思い込みを完全に取り除くのは難しいですが、ひとりひとりが自身のアンコンシャスバイアスと向き合い、意識を変えていくことが重要です。研修の効果はすぐには現れないため、忍耐強く続けていく必要があります。
アンコンシャスバイアスに対処した実例をご紹介します。1970年代、オーケストラの団員は、ほとんどが男性であったという状況でした。音大卒業者は女性が多いにも関わらず、採用されるのは男性ばかりという状況に疑問をもった楽団は、試験時に受験者と審査員の間にスクリーンを張るという方法をとりました。これにより、受験者の性別が分からない状態で、演奏技術のみで判断できるようになった結果、女性の合格率が50%上昇したのです。男性の方が演奏技術が高いというアンコンシャスバイアスが払拭され、現在のオーケストラでは男女比が6:4にまで変化が見られました。
Google社は、検索エンジンの日替わりロゴや、検索窓入力時の予測変換候補が差別的であるという指摘を受けました。また、Google社には国籍や性別を問わず2万人の社員が在籍していますが、黒人社員の割合が4%と少ないことも指摘されています。さらに、黒人社員の昇進や賃金においても差別が起きていると黒人社員から提訴されており、社内で改善を要求した黒人社員を解雇したことが問題になりました。これらの指摘を受け、Google社では2万人の社員に対し、アンコンシャスバイアスの教育を実施しています。
今回は、アンコンシャスバイアスについてご紹介しました。アンコンシャスバイアスの種類についてもご紹介しましたが、本記事の読者様も、自覚ある部分があったのではないでしょうか。アンコンシャスバイアスは誰もが持っており、文化形成における人類の成長過程で生まれた思考であると言えます。多様性を求める現代社会においては、アンコンシャスバイアスによる弊害が顕著に現れることがあり、小さな火種から大きな問題が起こる可能性も否定できません。企業内においても同様のことが言えます。それらに対処するためには、アンコンシャスバイアスの性質を理解し、公平性を意識しながら判断していくことが大切です。
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