2021年に発覚した大手ジェネリック医薬品メーカーによる不正製造。
それをきっかけに今、富山をはじめ全国で薬不足が深刻化している。患者、そして薬局が混乱する「薬不足の実態」を取材した。
“ジェネリック不足”で先発品先を患者に…
富山市の郊外にある薬局では、患者に長年、先発医薬品と有効成分は同じでも価格が安い後発医薬品「ジェネリック医薬品」をすすめてきた。
この記事の画像(14枚)しかし、今は毎日のように欠品の連絡が届いている。
薬剤師:
今頼んだのに、1カ月後
再び欠品の連絡が届いた。
薬剤師:
品切れの案内だった。血圧の薬なので大事だが、品切れで入荷次第ということは、入ってこないということ
(Q.結構使う薬ですか?)
薬剤師:
血圧の薬で使いますね。今、先発品を準備しています。値段がかなり違う
全国的な薬不足は、2021年の夏頃から続いている。
現在も出荷が滞るジェネリック医薬品は、約2,500品目。薬局では、ジェネリックの代わりに、もともとの先発品を患者に勧めるという、これまでと逆の対応を強いられている。
別の薬局では…
薬剤師:
薬の内容はいつもと一緒だが、今まで飲んでいたジェネリック医薬品が入ってこなくなった。いったん先発品に戻させてほしい
患者:
ジェネリックなくなるのは、きょう初めて聞いてビックリした
薬剤師:
メーカーによって、急に入らなくなるのが増えている。2年くらいは、こういう状態が続くと言われている
患者:
ジェネリック復活したら、またぜひ
薬剤師:
前のメーカーから入りにくくなっていて、メーカーがまた変わったが、見た目は変わらないので
患者:
十数年飲んでいる。やっぱり同じ薬の方がいい
「買い占めた薬が残り…」在庫に偏り
ジェネリックが不足し、患者の負担も増えている。
富山市の山口浩さん(76)は、20年前に不整脈を患い、ここ数年は歩くとふらつきが起きる平衡障害に悩まされている。
毎日欠かせない9錠の薬のうち、ジェネリックは4錠。このうち、平衡障害を抑える約300円のジェネリックの供給が止まった。
代わりに医師から処方された880円の先発品を飲んでいる。ひと月の薬代は、倍に増えた。
山口浩さん:
医療費は気になる。年金なんてたかがしれているが、薬代で月に2万円ほど払っている。医者は、すぐ薬漬けにする。どうしても薬は安いにこしたことはない。飲まないのが一番いいが、そんなわけにはいかない
1日約750人の患者が訪れる高岡市民病院。薬剤師の麻生さんは、在庫の偏り、偏在が起きているという。
高岡市民病院薬剤科・麻生美佐子薬剤科長:
在庫は入ってきているが、これが偏在している
(Q.偏在はなぜ起きる?)
高岡市民病院薬剤科・麻生美佐子薬剤科長:
最初のころは買い占めが原因。高岡市民病院も買い占めた。その買い占めた部分が残っている。まだ持ってたのと言われる。それは結果的に偏在につながっていたと思う
高岡市民病院薬剤科・麻生美佐子薬剤科長:
ここは薬品倉庫。これは買いだめ。救急外来で夜に出るときがある。夜中、おなか痛いという人に。ここは急性期病院ということもあり、夜中に動く薬は気を張っている。「薬ないからごめんね」というわけには絶対いかない。
仕事柄、「薬忘れずに飲んでね」「朝飲み忘れたら、昼でもいいから飲んでね」と、日々患者さんに伝えている
かつてない規模の薬不足。収束のめどは立っていない。
医療現場の混乱を招き、患者の生活に深刻な影響が広がっている。
(富山テレビ)