このページの本文へ移動
文字サイズ
メニュー
子宮頸がん

子宮頸がん 治療

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的で、子宮頸がんでは早期から進行するにつれて期〜期に分けられます。

1)子宮頸がん前がん病変(高度異形成、上皮内がん)

子宮頸がんでは、前がん病変と呼ばれるがんになる前の状態でも治療を行います。

子宮頸がんの組織型は、扁平上皮がんと腺がんに大きく分けられます。

  • 扁平へんぺい上皮がんには、異形成と呼ばれるがんになる前の状態が存在します。さらに異形成には3つの段階があり、軽度(CIN1)、中等度(CIN2)、高度(CIN3)と進みます。扁平上皮がんでは、高度異形成(CIN3)と上皮内がん(CIN3)を前がん病変としています(図2)。
  • 腺がんでは、上皮内がんを前がん病変としています。
図2 扁平上皮がんの発生・進行のしかた(イメージ)
図2 扁平上皮がんの発生・進行のしかた(イメージ)の図
日本婦人科腫瘍学会編「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第2版(2016年)」(金原出版)より作成

2)病期(ステージ)

子宮頸がんでは、治療開始前に病期分類を決定する臨床進行期分類を用いています(表1)。

表1 子宮頸がんの臨床進行期分類(日産婦2011、FIGO2008)
表1 子宮頸がんの臨床進行期分類(日産婦2011、FIGO2008)の表
日本産科婦人科学会・日本病理学会編「子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4版(2017年)」(金原出版)より作成
図3 子宮頸がんの進行期分類の図解
図3 子宮頸がんの進行期分類の図解の図
日本婦人科腫瘍学会編「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第2版(2016年)」(金原出版)より作成

3)治療の選択

子宮頸がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法があります。それぞれの治療法は、単独で行われるばかりでなく、組み合わせて行われることがあります。

図4は、子宮頸がんに対する治療方法を示したものです。担当の医師と治療方針について話し合うときの参考にしてください。図にある治療法は原則的なものですので、合併症の有無や妊娠の希望などによっては別の治療法を選択することもあります。

図4 子宮頸がんの治療の選択
図4 子宮頸がんの治療の選択の図
日本婦人科腫瘍学会編「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」(金原出版)より作成

妊娠や出産について

前がん病変からB1期までの方で将来子どもをもつことを希望している場合には、妊よう性温存治療(妊娠するための力を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。また、子宮は妊娠したときに胎児を育てる器官であるため、子宮頸がんの手術治療が将来の妊娠に与える影響についても確認しましょう。

2.手術(外科治療)

前がん病変の高度異形成や上皮内がんと、期の子宮頸がんに対する有効な治療法が手術です。がんの広がりにより子宮頸部けいぶまたは子宮全部を切除します。卵巣と卵管は、年齢、病状に合わせて、切除するかどうかを決めます。切り取った組織は、顕微鏡で詳しく調べて(病理検査)、がんの広がりを診断し、手術後の治療方針を決めます。

良性疾患や前がん病変に対する単純子宮全摘出術では腹腔鏡下手術も広く行われています。子宮頸がんに対する腹腔鏡下手術も保険適用になっていますが、実施可能な病院は限られています。

1)手術の種類

(1)円錐切除術えんすいせつじょじゅつ

子宮頸部の一部を円錐状に切除します(図5)。高度異形成に対しては、病巣を完全に取りきる治療として行います。画像の検査でわからないような早期がんの場合には、顕微鏡でがんの広がりを正確に調べる目的で円錐切除術を行い、がんの広がりに応じた適切な手術の方法を決めます。

図5 円錐切除術の範囲
図5 円錐切除術の範囲の図

(2)単純子宮全摘出術

子宮頸部のまわりの組織は取らずに子宮だけを切除します(図6)。子宮筋腫などの良性の病気と同じ手術方法です。おなかを切り開いて切除する開腹手術、おなかを切らずに腟から切除する腟式手術、腹腔鏡下手術のいずれかで行います。

図6 単純子宮全摘出術の範囲
図6 単純子宮全摘出術の範囲の図

(3)準広汎こうはん子宮全摘出術

がんの取り残しが起こらないように、単純子宮全摘出術よりも少し広めに子宮を切除する方法です(図7)。子宮と一緒に、基靭帯(子宮を支えている子宮頸部の周囲にある組織)の一部と腟(2cm程度)を切除します。

図7 準広汎子宮全摘出術の範囲
図7 準広汎子宮全摘出術の範囲の図

(4)広汎子宮全摘出術

がんを完全に取りきるために、準広汎子宮全摘出術よりもさらに子宮を広く切除する方法です(図8)。子宮と一緒に、基靭帯や腟(3〜4cm程度)を大きく切除します。また、骨盤内のリンパ節も一緒に切除(リンパ節郭清)します。がんを完全に取りきる可能性が高い手術である一方、リンパ浮腫、排尿のトラブル、性生活への影響などの合併症が一定の割合で起こります。

図8 広汎子宮全摘出術の範囲
図8 広汎子宮全摘出術の範囲の図

(5)広汎子宮頸部摘出術

妊娠するための力を保つために、子宮体部と卵巣を残し、それ以外は広汎子宮全摘出術と同じ範囲を切除します(図9)。広汎子宮全摘出術が必要な進行期で、かつ妊娠可能な年齢で子どもが欲しい場合に行います。しかし、本来取るべき子宮体部と卵巣を残すため、がんの大きさが小さいなど一定の基準を満たしている必要があります。

図9 広汎子宮頸部摘出術の範囲
図9 広汎子宮頸部摘出術の範囲の図

2)手術後の合併症

近年、手術の技術や合併症の予防法が向上し、合併症の発症する割合は低くなってきています。しかしながら、一定の割合で合併症は起こりますので、気になる症状があるときは、担当医に相談しましょう。

子宮頸がんの手術に伴う合併症には、足や下腹部のむくみ(リンパ浮腫)、排尿のトラブル、便秘、腸閉塞、更年期障害と同様の症状(卵巣欠落症状)などがあります。

(1)リンパ浮腫

リンパ液は手足の先から胸部へと一方向に流れています。リンパ液の通り道であるリンパ節とリンパ管を切り取ることによって、リンパ液の通り道が少なくなり、足や下腹部がむくみやすくなります。

現在のところ、リンパ浮腫の確実な予防法はありませんが、日々の生活の中でこまめに、足を高くして休む、リンパドレナージをする、弾性ストッキングをはくなどの圧迫療法を行う、圧迫した状態での運動をする(運動療法)、スキンケアなどを継続的に行う、などが予防に効果的であるといわれています。自分でマッサージなどのセルフケアの方法を習得しておくことが大切です。また、医師による弾性着衣装着指示書があると、弾性ストッキングは保険適用(療養費として支給)になります。

(2)排尿のトラブル

排尿に関係する神経は基靭帯の中を走っているので、基靭帯を広く切除する広汎子宮全摘出術をした場合に排尿障害が起こりやすくなります。症状は、尿がたまった感じがわかりにくい、尿を出しにくい、尿が全部出しきれない、尿がもれるなどです。個人差がありますが、多くは手術後数週間から数カ月である程度は改善します。しかし、手術前とまったく同じ状態に回復することは難しいので、尿をためすぎない、強くおなかを押して無理やり出さない、一定の間隔で排尿する、など日常生活での注意が必要です。

(3)便秘

排尿のトラブルと同様、広汎子宮全摘出術をした場合に起こりますが、排尿のトラブルよりも頻度は少なく、比較的短期間で回復します。食事の調整や下剤の服用で対応します。

(4)腸閉塞

手術の後に、腸閉塞が起こることがあります。腸閉塞は、腸の炎症による部分的な癒着ゆちゃく(本来はくっついていないところがくっついてしまうこと)などによって、腸管の通りが悪くなる状態のことをいいます。便やガスが出なくなり、おなかの痛みや吐き気、嘔吐おうとなどの症状が出ます。多くの場合、食事や水分を取らずに点滴をしたり、胃や腸に鼻からチューブを入れて胃液や腸液を出したりすることなどで回復しますが、手術が必要になることもあります。

(5)卵巣欠落症状らんそうけつらくしょうじょう

閉経前に両側の卵巣を切除する手術や、放射線治療で卵巣の機能が失われた場合、女性ホルモンが減少し、更年期障害と同様の症状が起こりやすくなります。この症状を卵巣欠落症状といいます。具体的には、ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、動悸どうき、不眠、腟からの分泌液の減少、骨粗しょう症、高脂血症こうしけっしょうなどの症状があらわれます。症状の強さや発症する期間は人によって異なりますが、特に年齢が若いと症状が強くなる傾向があります。症状を軽くするためには、血行をよくしたり、精神的にリラックスしたりすることも大切です。つらいときは我慢しないで担当医に伝えましょう。必要に応じて症状を和らげるためホルモン療法薬や漢方などが処方されます。

3.放射線治療

放射線治療は手術、薬物療法などと並んで、がんに対する主な治療法の1つです。細胞内のDNAを直接傷つける高エネルギーのX線やガンマ線などの放射線をがんに照射し治療するものです。最近は放射線治療を選択する人も少しずつ増加しています。

子宮頸がんに対しては、骨盤の外から照射する外照射と、直接子宮頸部のがんに照射する腔内くうない照射、また、放射線を出す物質をがん組織やその周辺組織内に直接挿入して行う組織内照射があります。

子宮頸がんでは、病期にかかわらず放射線治療を行うことができますが、比較的進行したがんの場合には、細胞障害性抗がん薬とともに放射線治療を行うこと(化学放射線療法)が多くなっています。また術後再発リスクの高い人や、初回治療で放射線治療を行わなかった人の再発の際の治療手段にもなります。

放射線治療の副作用

放射線治療の副作用には、照射開始後数週間以内に起こる急性反応と、治療後数カ月から数年たってから起こる晩期合併症があります。

急性反応には、だるさ・吐き気や照射された部位の皮膚炎、粘膜炎、直腸炎や膀胱炎などがあります。しかしこれらは治療終了後には通常自然に治っていきます。

晩期合併症には、消化管からの出血や閉塞、穿孔せんこう(穴が開く)、直腸腟ろう(直腸と腟がつながって腟から便が漏れる症状)などがあります。尿路の障害として、出血、感染や、膀胱尿管腟ろう(膀胱や尿管と腟がつながって腟から尿が漏れる症状)、その他に腟が狭くなったり、腟の壁同士がくっついたりすることなどがありますが、必ずしも起こるものではありません。

4.薬物療法

子宮頸がんでの薬物療法は、主に、遠隔転移のある進行がんや再発した場合に行われます。クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を保ち生存期間を延ばすことが治療の目標となります。

1)細胞障害性抗がん薬

細胞障害性抗がん薬は、細胞の増殖の仕組みに注目して、その仕組みの一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する薬です。がん以外の正常に増殖している細胞も影響を受けます。

子宮頸がんに対しては、白金製剤のみによる治療と他の薬を併用する治療が行われています。また、放射線治療の効果を高めるために白金製剤が使われることがあります。

白金製剤とは、細胞障害性抗がん薬の中で白金を含むグループのことです。子宮頸がんで使う主な白金製剤に、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチンがあります。白金製剤以外の薬には、パクリタキセル、イリノテカン、ノギテカンなどがあります。現在、白金製剤と他の薬を組み合わせる多剤併用療法では、シスプラチン+パクリタキセル、もしくは、カルボプラチン+パクリタキセルが標準治療として用いられることが多くなっています。

細胞障害性抗がん薬の副作用

主な副作用には、吐き気や嘔吐、脱毛、末梢まっしょう神経障害(感覚低下、痛み)などがあります。近年では、吐き気に対して新しい予防薬が使えるようになっています。

2)分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質を標的にしてがんを攻撃する薬です。子宮頸がんでは、ベバシズマブが用いられており、細胞障害性抗がん薬とともに使います。

分子標的薬の副作用

主な副作用には、傷が治りにくい、高血圧、タンパク尿、出血などがあり、従来の細胞障害性抗がん薬とは異なる副作用が報告されています。

5.緩和ケア/支持療法

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、QOLを維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。

なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがん治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。

本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

6.リハビリテーション

一般的に、治療の途中や終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などを、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

子宮頸がんに対する手術や放射線治療の後には下肢から下腹部にかけてリンパ浮腫を発症することがよくあります。リンパ浮腫の軽減には、弾性着衣で圧迫した状態での運動が効果的とされており、リンパ浮腫の改善のためにも運動は重要です。

7.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

1)転移

子宮頸がんで多くみられるのは、肺、脳、傍大動脈リンパ節(骨盤より上の大動脈まわりのリンパ節)、骨への転移です。転移の治療は、がんの部位や数、年齢や体の状態などにより、さまざまです。一般的に、転移が1カ所から数カ所程度で部位が限定される場合には放射線治療や手術を選択することが多くなります。また、転移が複数の部位にまたがる場合には薬物療法を選択することが多くなります。

薬物療法は、白金製剤を含む2種類の細胞障害性抗がん薬で治療します。分子標的薬を併用することもあります。

2)再発

再発の治療は、再発した場所が、以前に放射線をあてた部位か、あてていない部位かによって大きく方針が異なります。放射線をあてていない部位の再発では、放射線治療が行われます。放射線治療中に細胞障害性抗がん薬を併用する治療も検討します。

放射線をあてた部位に再発した場合には、手術や再度の放射線治療をすると合併症の頻度が高くなります。そのため薬物療法が選ばれることも多いですが、効果があまり期待できないため、QOLを保つために症状を和らげる治療も検討します。

骨盤内の再発の場合、直腸や膀胱などもあわせて摘出する骨盤除臓術が行われることもあり、その場合は人工肛門や人工膀胱をつくることが必要となります。

更新・確認日:2020年10月27日 [ 履歴 ]
履歴
2020年10月27日 「2.手術(外科治療) 2)手術後の合併症 (4)腸閉塞」を更新しました。
2019年10月10日 「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」「子宮頸癌取扱い規約病理編第4版(2017年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月12日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2014年10月03日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2012年11月08日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2012年05月01日 内容を更新しました。
1996年04月01日 掲載しました。
前のページ
子宮頸がん
よりよい情報提供を行うために、
アンケートへの協力をお願いいたします。
アンケートはこちらから
ページの先頭に戻る
相談先・
病院を探す
閉じる

病名から探す

閲覧履歴