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――ここ20年くらいの監督の作品は、そういう意識を取り入れて新たなスタンダードを生み出そうという意欲を感じますね。

富野 それは『Gのレコンギスタ』の企画を考え始めた時にもそう思いました。あの作品ではエネルギー論も含めて「人類が絶滅しないためにどうしたらいいか」っていう話をしているわけだけど、いわゆる『ガンダム』のような戦記物はそのテーマがない。そこに決定的な違いがあるんですよ。
象徴的なことを言えば、ガンダムファンっていうのは『G-レコ』を観て、とにかく「わからなかった」って言うんです。それはそうですよ、だって『G-レコ』はガンダムじゃないんですから。

――そもそもの作品の立脚点が全然違うということですね。

富野 はい、全然違います。

――先ほどの『G-レコ』の脚本の表紙の話はそこに繋がっているわけですね。

富野 はい。あと、この前、文化功労者に選ばれたでしょう。本来なら、僕は国からの賞を貰えるような立場ではないはずなんですよ。なのになぜ貰えたか、それが後でわかっちゃったんです。

(後編に続く)

富野由悠季(とみの・よしゆき)
1941年生まれ、小田原市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、虫プロダクションに入社、TVアニメ『鉄腕アトム』の演出を経てフリーに。主な監督作品に『海のトリトン』『無敵超人ザンボット3』『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』『聖戦士ダンバイン』『Gのレコンギスタ』など。また自身の作品の楽曲の作詞、小説の執筆、講演など幅広い活動を行い、2021年には文化功労者に選出された。
最新作として、劇場版『Gのレコンギスタ』IV『激闘に叫ぶ愛』(7月22日~)、V『死線を越えて』(8月5日~)が連続公開。

取材協力/やまむらはじめ
撮影/真下裕

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「富野由悠季が自身の展覧会で理解した「作家になれていない」という事実」の画像1 「富野由悠季が自身の展覧会で理解した「作家になれていない」という事実」の画像2