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だから、今日は来ていただいて本当にありがたいんだけれども、『富野由悠季の世界』展で展示されたことは全て過去のこと。20年とか30年前の話だし、未だにそのクオリティを自分が保っているとは言えない。だって庵野(秀明)君や細田(守)君、『Fate』っていうアニメにも負けてるじゃないですか。

――いえいえ、興収だけで決まるような単純な話ではないと思いますよ。

富野 ちなみに今、僕はずっとガンダムと関係ない『Gのレコンギスタ』っていう作品を8年くらい作っているんだけれど、2日前に改めてアフレコ台本を見ると、『Gのレコンギスタ』のロゴのGに『GUNDAM』ってルビがあるわけ。「ああそうか、これは営業サイドから見ればガンダムなんだ」って思ったと同時に、「そろそろこういうのを外してくれることを考えてくれないかな」とも思いました。このまま過去に縛られていたら、今後20~30年先までは生き残れないだろうなって思っています。はい、これで今日お伝えしたいことは全部言ってしまいました。

――これでお終いでは困るので(苦笑)、もう少しお話をお聞かせ下さい。『富野由悠季の世界展』はあくまで他人からの評価、とおっしゃられてましたが、例えばそういう目線の中で、自分のお仕事に関して何か気付きのあった部分はありましたか。

富野 そういう意味での驚きというのはなく、「よくもまあ、これだけいろいろなことを思いつけたな」っていう言い方はできます。もっともあれは学識があって思いついたのと違って、アニメだからやれてこられたこと、という言い方ですけれど。

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「富野由悠季が自身の展覧会で理解した「作家になれていない」という事実」の画像1 「富野由悠季が自身の展覧会で理解した「作家になれていない」という事実」の画像2