演出家デビューとなった『鉄腕アトム』から『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』ほか数多くの名作を経て現在まで、富野由悠季監督のキャリア55年の歩みを俯瞰する初の本格的な展覧会『富野由悠季の世界』は、延べ2年に渡り全国8カ所で開催され、アニメファンのみならず、衆目を集めた。

また富野監督は昨年11月、令和3年度文化功労者に選出された。選出理由は「物事の本質をつく視点で壮大な世界観をもつ作品を創造し、我が国のアニメーション界に新たな表現を切り拓いてきたものであり、アニメーションを文化として発展させた功績は極めて顕著」というもので、これまでの仕事がもたらしたものであることは間違いない。

そして富野監督は、今なおアニメの最前線で活動中だ。劇場版『Gのレコンギスタ』のクライマックスとなる2部作、IV『激闘に叫ぶ愛』とV『死線を越えて』が7月・8月に連続公開決定、現在その作業に追われている。
自身のキャリアと向かい合う時間を経た富野監督が、今後いかなる方向を目指していくのかに迫るロングインタビュー、前編である本記事では『富野由悠季の世界』展を改めて振り返るところから、富野監督の現在を語っていただいた。(全2回)

>>>富野由悠季監督の取材風景を見る(写真12点)

富野由悠季が自身の展覧会で理解した「作家になれていない」という事実


――約2年に渡って開催された『富野由悠季の世界』展が遂にピリオドを迎え、2月22日には本展示のドキュメントムービーのBlu-ray&DVDも発売になりました。改めて、本展示の意義について富野監督がどう考えておられるのかについてお聞かせ下さい。

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