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『次のニュースです』
『本日未明、◯県◯市にて女性が刃物で刺される字間が発生しました』
『犯人はその場で取り押さえられ、動機として"世界はもうすぐ終わるから、その前に人を殺してみたかった"などと供述しておりー…』
(わ。結構近くでも起こってる…。怖いなぁ〜)
何気なく点けたリビングのテレビからは陰鬱なニュースばかりが流れる。
一昨日から広まり始めた世界滅亡の噂に関するニュースや、それに関連して起こり始めた事件が延々と流れ続けている。
「…殺人事件、か」
声に気付き振り返ると、そこには出勤の準備を終えた夫の姿があった。
おはよう、と声をかけたものの夫は渋い顔をしたままなにか考え込んでいる。
「……お前、念の為暫くは外に出るなよ」
暫し熟考した夫は、ポツリとそう告げた。
もう少ししたらきっと世界滅亡なんて馬鹿な話しもそのまま消えるはずだから、と難しい顔をしながら続ける夫。
心配をしてくれるその心遣いはとても嬉しい。
「うーん。でも、もう粉ミルクがあんまりないしなぁ…」
私は腕の中ですやすやと眠る我が子の顔を眺めながらそう伝える。
「今日の分はあるだろ? 今日は仕事が遅くなるから無理だけど、明日俺が買ってくるから」
頑として譲らないといった様子の夫。
…それだけ、わたしやこの子を心配してくれてるんだろう。
「わかった、じゃあ明日お願いするね」
そう伝えると、夫はどこか安心したような表情を浮かべる。
そのまま夫を玄関まで見送り、リビングへ戻る。
点けっぱなしのテレビからは、陰鬱なニュースが流れ続けている。
「ぅー…」
眠っていた我が子がもぞもぞと動く。
それと同時に閉じていた目が開いていき、うとうとと目を醒ました。
私の子供。
私の赤ちゃん。
お医者さんにも何度も出産は難しいって言われて。
何回も諦めようって思って。でも諦められなくて。
頑張って、頑張って。やっと産まれてくれた時は、嬉しいなんて言葉じゃ足りないくらい嬉しかった。
私の。私達の、大切な宝物。
「大丈夫、大丈夫。なにかあってもママが守ってあげるからねー」
腕に抱いた我が子へ優しく語りかける。
…もし。もしも本当に世界が終わるとして。
どうしても避けられない終わりに襲われるとして。
その時は。私と、この子と、あの人の3人で一緒にいられたらいい。
最後の最期まで、家族で一緒にいられたなら。
(…きっと、それは幸せだろうなぁ)
仮想現実世界"地球"。終了まで残り二日。
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