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"世界はあと五日で終わる"



そんな夢を見た。

初めはただの夢だと思っていたけれど、どうにも私以外の人達も同じ日に同じ内容の夢を見ていたらしい。


ネット上の誰かの"夢を見た"という呟きが瞬く間に拡散されていき、今日に至ってはどこを見てもその話題ばかり。


夢を見たのが昨日だから、残りは今日を入れて四日。

これからどんどんこの話題は広がっていくだろう。


まぁでも。世界が終わるとか、そんな事はどうでもいい。



だって、どうせ生きていたって何もないんだし。



ただ酸素を吸って、二酸化炭素を吐いて。

親の、教師の、社会の敷いたレールに乗って。

空気を読み間違えたらあっという間に溺れる中、常に周囲の目に怯えながら減点方式の人生を生きていく。


その人生の中に私の意志はない。

その人生の中に私の望みはない。



そんな人生は、生きていると言えるのだろうか。



その人生は。



その人生を生きるのは、本当に私でなければいけないのだろうか?



だから、どうでもいい。

死にたい理由も、生きたい理由も、夢も希望も後悔も情熱も挫折も苦悩も歓びも無い。



淡々と、毎日毎日同じ事を繰り返して。

決められた事を決められたようにやって、周囲から望まれるように振る舞って。

私自身の個性、なんて邪魔なだけだから出来るだけ消して。

私なりに頑張ってみても、まぁ結局は意味はない。



だって周りの全員、私とおんなじなんだから。

生きているけど、死んでいるようなもの。

どうでもいい、なんでもいいって。

惰性で生きてるだけの無感情の肉塊。

心臓が動いていたって、なにも感じないのなら死んでいると同じことでしょ?



だから、どうでもいい。

どうせもう死んでるんだし、世界が終わろうがどうだっていい。



…だけど、今までの日常があっという間に塗り替えられていくこの感覚は面白い。



どうすれば、もっと面白くなるだろう?



「…あ、そっか。こうすれば早いか」



スマホを手に取り、文字を打ち込み始める。



内容はなんでもいい。どこかの誰かを煽動できればそれで。


でも出来るだけ過激な内容がいい。


その方が早く拡散されるだろうし。



今はまだ、ただのネット上で騒ぎになってるだけだけど。

これがうまくいけば、現実でも騒ぎが起き始める。



今より、もっともっと面白くなる。





(…あぁ、楽しいなぁ)








仮想現実世界"地球"。終了まで残り三日

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