弁理士試験の勉強をはじめて間もない時期は、出題される試験科目や勉強法についてよくわからないことも多いでしょう。
そこで今回は、試験の試験科目と内容、受かる勉強法を詳しく解説します。
目次
弁理士の試験科目
令和3年の弁理士試験統計によれば、最終合格率は6.1%となっています。16人いる受験者のうち、合格できるのはたった1人という超難関国家資格です。
※参考:弁理士試験 過去の試験結果
試験対策が不十分なまま闇雲に勉強しても、合格は難しいでしょう。まずは、試験ごとの特徴をおさえたうえで対策を立てることが何よりも大切です。
弁理士試験には、「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」を含めた3つの試験があります。
短答式試験に合格しなければ、論文式試験は受験できません。当然ながら、論文式試験に合格しなければ口述試験を受けることも不可能です。
このように、内容が異なる全てに合格しなければならないことが、弁理士試験が難しいといわれる理由だと考えられます。
※関連コラム:弁理士の難易度ランキング|合格率・勉強時間を他資格と比較
(1)短答式試験
「短答式試験」は、弁理士試験の最初に立ちはだかる試験です。
令和3年度弁理士試験統計によると、短答式試験の合格率は11.3%となっています。合格できるのは、8人のうち1人か2人のみです。近年で、もっとも難関の試験となります。
短答式試験は、5つある問題の中から1つを選択するマークシート形式で行われます。試験範囲が非常に広く、細かい知識が要求され苦手とする受験生も多いようです。
短答式試験の試験科目は、下記の7項目となっています。
- 特許法
- 実用新案法
- 意匠法
- 商標法
- 条約
- 不正競争防止法
- 著作権法
短答式試験では、合計60問が出題され39点が合格ラインとなっています。
- 特許法・実用新案法から20問
- 意匠法・商標法・条約から各10問
- 著作権法・不正競争防止法から各5問
(2)論文式試験
論文式試験は論述式の試験で、問題文に対して文章で解答します。マークシート形式の短答式試験とは違い、自力で対策するのが非常に難しく合格者に論文を見てもらう必要があります。
論文式試験の試験科目は、「必須科目」と「選択科目」の2種類です。
必須科目は、特許法・実用新案法、意匠法、商標法の4法(特許法と実用新案法はセットで行われます)となっています。短答式試験よりも試験範囲は狭くなりますが、解答分をテキストで表現するしなければならず、問題への理解力が問われます。
選択科目は、理工I(機械・応用力学)や理工II(数学・物理)、理工III(化学)、理工IV(生物)、理工V(情報)、法律(民法)のうちから1科目を選択します。理系の受験生はそれぞれの専門分野、文系の受験生は民法を選択する方が多い傾向です。
ちなみに、例年における論文式試験の合格率は25.5%です。
(3)口述試験
論文式試験に合格したら、あとは最終関門である口述試験を突破するのみです。口述試験は、試験官からの問題に対してその場で答えなければならず瞬時の判断力や臨機応変さが要求されます。
試験科目は、特許法・実用新案法、意匠法、商標法の4法(特許法と実用新案法はセットで行われるため、試験科目としては3つとなります)です。A・B・Cの三段階で評価され、3科目のうち2つ以上「C」を取らなければ合格です。
論文式試験の平均合格率は95.6%で、ほとんどの受験者が無事に合格しています。しっかり試験対策を行えば、合格の可能性は十分にあるでしょう。
しかし、受験者は短答式試験と論文式試験を突破したハイレベルな人ばかりです。合格率が高いからといって対策を怠ると、足元をすくわれる結果になりかねません。
試験科目が免除になる「免除制度」とは
弁理士試験は3つの試験に合格しなければならず、加えて試験科目も多い試験です。
しかし、一定の条件を満たせば試験が免除になる制度があります。ここでは、各試験の免除制度について説明いたします。
(1)短答式試験
短答式試験については、一度合格すればその後2年間試験が免除されます。
また、一定の大学院を修了した人や特許庁で審査官等に従事されている人は試験科目の一部が免除されます。
このうち、短答式試験合格による翌年以降2年間の免除が大きく、論文式試験に集中できるため、まずは短答式試験合格を目指すのがよいといえるでしょう。
免除対象者 | 免除条件 | 免除科目 |
短答式試験合格者 | 過去の短答式試験に合格した人は、2年間試験が免除されます。短答式試験に合格した年の次の年とその次の年は、短答式試験を受けることなく論文式試験を受験することができます。 | 全部 |
一定の大学院を修了し、工業所有権審議会の認定を受けた人 | いわゆる知的財産専門職大学院等で工業所有権に関する単位を修得し修了した人は、工業所有権審議会の認定を受けることにより、著作権法と不正競争防止法以外の試験科目が修了した日から2年間免除されます。 | 特許法、実用新案法、意匠法、商標法、条約 |
特許庁において審査または審判の事務に5年以上従事した人 | 特許庁の審査官や審判官として審査業務等に5年以上従事した人は、著作権法と不正競争防止法以外の試験科目が免除されます。 | 特許法、実用新案法、意匠法、商標法、条約 |
(2)論文式試験
論文式試験については、一定の条件を満たすと選択科目が免除となります。特に、理工系出身者は、大学院修士課程の修了により選択科目を免除される人が多い傾向です。
また、情報処理技術者試験や行政書士試験の合格(ただし行政書士は登録が必要)により免除を受ける人もいます。
必須科目を合格しても選択科目で不合格になった場合、口述試験に進むことができずその年は不合格になってしまうのです。
選択科目の免除を受けることは、弁理士の資格取得を目指すうえで大きなメリットだといえます。
免除対象者 | 免除条件 | 免除科目 |
論文式試験選択科目合格者 | 過去の論文式試験選択科目に合格した人は、永久に選択科目の試験が免除されます。 | 選択科目 |
修士・博士・専門職学位に基づく選択科目免除認定を受けた人 | 理工系の大学院修士課程や博士課程等を修了した人で、工業所有権審議会から認定を受けた人は、選択科目の試験が免除されます。 | 選択科目 |
特許庁が指定する他の公的資格を有する人 | 行政書士試験合格者で行政書士登録をしている人や、情報処理技術者試験のうち一定の試験を合格している人は、選択科目が永久に免除となります。 | 選択科目 |
※関連コラム:弁理士試験の選択科目が免除になる応用情報技術者とは?資格取得のメリット
弁理士の各試験項目の勉強法
3つの試験にはそれぞれ特性があり、試験特性に応じた試験対策を行う必要があります。独学による合格は非常に難しいため、受験予備校の講座を受講してインプット・アウトプットを行いましょう。
以下では、受験予備校の講座を受講することを前提とした試験対策をご紹介します。
(1)短答式試験
先ほどもお話ししましたが、短答式試験は試験科目が7科目あります。試験範囲が非常に広く、独学はおすすめしません。
弁理士試験を知り尽くした予備校の入門講座を受講し、効率良く知識をインプットすることをおすすめします。
基礎から応用までの知識を学んだら、次は短答式試験の過去問に取り組みましょう。最初はわからないことばかりですが、気にせずどんどん進めるのがポイントです。
解答が間違った箇所については、「産業財産権四法対照」(PATECH企画)に書き込んでいき、情報を一元化します。この作業を3回ほど繰り返し行い、産業財産権四法対照を読み込みましょう。これで、短答式試験はほぼ突破できると思います。
(2)論文式試験
論文式試験は試験科目が少なめですが、論述スキルを独学で習得するのは至難の技です。受験予備校の論文対策講座を利用し、論文の書き方を学びましょう。
論文の書き方をある程度理解できたら、過去問を使って実際に答案を書いていくのがおすすめです。
過去問は特許庁のページからダウンロードできますが、解答がありません。受験予備校で、論文対策講座の解説講義を利用した方が確実に試験対策できます。
(3)口述試験
短答式試験と論文式試験を突破できたなら、合格に必要な知識は十分に備わっているはずです。
口述試験前は、相手の質問に即座に答えられる練習をしましょう。過去問を使い友人と問題を出し合ったり、受験予備校や弁理士の会派と呼ばれる団体が開催している口述練習会に参加したり、方法はなんでも良いでしょう。
※参考1:【2022年6月】弁理士試験の通信講座・予備校おすすめ6社を比較!費用・値段は?
※参考2:弁理士試験対策における過去問の重要性と使い方のコツ
まとめ
今回は、弁理士試験の試験科目と具体的な出題内容、そして合格するための勉強法を解説しました。
難関国家試験である弁理士試験は、独学で合格するのは困難です。試験範囲を効率良く学習するためには、受験予備校を利用することをおすすめします。