ウイスキーのブログですが、いきなりビールのネタをやります。
今回は、35年もの間定番かつトップの売り上げを誇るアサヒ スーパードライと、近年になって復活したマルエフを飲み比べます。
1970年代に新規参入したサントリーがミクロフィルター濾過による生ビールを全国販売した後、その後半にサッポロビールが追随(現在の黒ラベル)、キリンとアサヒはミクロフィルター濾過型の生ビールで出遅れる格好になりました。
しかし、元々ホップからの苦みを抑えたビールを製造していたアサヒビールが出した生ビールは、時間が経って炭酸が抜けて温度が上がると爽快感の無いものになってしまったようです。
また、どのメーカーもコク(うま味や甘味)を重視した作りをしていたため、ホップの苦みを除くと個性に乏しい状況もあったようです。
その時代においては沈みゆく姿から「夕日ビール」とも揶揄されていました。
1985年に現在使われているCIに切り替えた翌年、まず最初に発売されたのが、新しいアサヒ生ビール(現在のマルエフ)です。
マルエフは社内でのコードネームで、沈んだシェア回復を願い、不死鳥の英語読みであるフェニックスから採られたとされています(ただし、後にフェニックスのスペルがPhoenixだと判明した)。
マルエフは従来のアサヒの生ビールに比べてキレのある味わいを求め、酵母も新しいものを使って醸造されました。「コクがあるのにキレがある」をキャッチコピーに、他社との味わいの差別化を図りました。
それまでのビールになかった爽快な飲み応え、のどごしによってスーパードライは大ヒットしました。
この大ヒットによって、1988年には他の3メーカーもこぞって銀色のラベルのドライビールを発売、当時これをドライ戦争と呼んでいました。
しかし、キレのある味わいを引き出す酵母から作り上げたアサヒが他のメーカーを寄せ付けず、1990年頃には3メーカーがドライビールの販売から撤退、別路線へ見いだすことになりました。
キリンはキレの良さをただ度数を上げるのではなく、もろみから最初に絞り出される麦汁のみを使うことで実現した一番搾りを開発。
サントリーは元々レギュラー価格で売り出していた麦芽100%のモルツを前面に売り出すことに。
そしてサッポロはびん生をサッポロドラフトと銀ラベルにして出すも失敗、結局元に戻して「黒ラベル」として売ることに。
結果的にスーパードライによって、各メーカーが従来とは異なる特徴的なビールを出すことになり、日本のビールの味の幅が広がることになりました。
その後2018年に製造工場を拡大して業務用での全国展開を再開、期間限定で缶での販売がされました。
そして2021年に、不死鳥を象ったマークのついたラベルデザインにリニューアルされ、「マルエフ」の文字も追加された現在の缶が発売され、今に至っています。
一時期はジョッキ缶が大人気でなかなか入手できませんでしたが、スーパードライ自体がリニューアルしてから徐々に店頭でも見かけるようになりました。
スーパードライは、アルコールからの辛みがしっかりあり、ホップの苦み、モルト由来のふわっとした香りや甘さ、うま味は少なめです。残り香や後味においても、それほど後引く感じが少なく、すっと消えてくれる印象です。
一方でマルエフは、アルコール由来の辛みは少なく、軽くホップの苦みが目立った後、モルトの甘味、うま味が感じられます。しかしこちらも、香りや味わいが後を引く印象は少なく、すっと消えます。
この辺りが「コクがあるのにキレがある」と言われる由来でしょう。
革命を起こしたスーパードライも発売から35年が経過し、すでに「定番」となったことで、むしろ昔ながらのコクのあるビールが若い人を中心に新鮮に感じているでしょう。
マルエフの復活もこうした流れがあってのことでしょう。
今後、段階的にビールの酒税減税が続くため、ビール自体が多様化、活性化することは十分あり得るでしょう。
 
 
 
今回は、35年もの間定番かつトップの売り上げを誇るアサヒ スーパードライと、近年になって復活したマルエフを飲み比べます。
ビール革命に挑んだ2銘柄
熱処理ビールから生ビールへの転換に失敗
アサヒビールは1980年代前半の時点で、ビールの全国シェアが第3位の位置にありました。1970年代に新規参入したサントリーがミクロフィルター濾過による生ビールを全国販売した後、その後半にサッポロビールが追随(現在の黒ラベル)、キリンとアサヒはミクロフィルター濾過型の生ビールで出遅れる格好になりました。
しかし、元々ホップからの苦みを抑えたビールを製造していたアサヒビールが出した生ビールは、時間が経って炭酸が抜けて温度が上がると爽快感の無いものになってしまったようです。
また、どのメーカーもコク(うま味や甘味)を重視した作りをしていたため、ホップの苦みを除くと個性に乏しい状況もあったようです。
その時代においては沈みゆく姿から「夕日ビール」とも揶揄されていました。
コクがあるのにキレがある
その中、1984年から1985年にかけて、アサヒビールはビールに求められる指向が変わっているかについての市場調査を行った所、味付けが濃くなり脂っこい料理が増えたことに加え、従来の和食の繊細な味を壊さないビールが求められているという結論に達しました。1985年に現在使われているCIに切り替えた翌年、まず最初に発売されたのが、新しいアサヒ生ビール(現在のマルエフ)です。
マルエフは社内でのコードネームで、沈んだシェア回復を願い、不死鳥の英語読みであるフェニックスから採られたとされています(ただし、後にフェニックスのスペルがPhoenixだと判明した)。
マルエフは従来のアサヒの生ビールに比べてキレのある味わいを求め、酵母も新しいものを使って醸造されました。「コクがあるのにキレがある」をキャッチコピーに、他社との味わいの差別化を図りました。
スーパードライの誕生、ドライ戦争
そしてマルエフのノウハウを取り入れつつ、更に改良された酵母の開発を行い、キレを重視した味わいのためにアルコール度数を引き上げた、「アサヒ スーパードライ」が1987年に発売されました。それまでのビールになかった爽快な飲み応え、のどごしによってスーパードライは大ヒットしました。
この大ヒットによって、1988年には他の3メーカーもこぞって銀色のラベルのドライビールを発売、当時これをドライ戦争と呼んでいました。
しかし、キレのある味わいを引き出す酵母から作り上げたアサヒが他のメーカーを寄せ付けず、1990年頃には3メーカーがドライビールの販売から撤退、別路線へ見いだすことになりました。
キリンはキレの良さをただ度数を上げるのではなく、もろみから最初に絞り出される麦汁のみを使うことで実現した一番搾りを開発。
サントリーは元々レギュラー価格で売り出していた麦芽100%のモルツを前面に売り出すことに。
そしてサッポロはびん生をサッポロドラフトと銀ラベルにして出すも失敗、結局元に戻して「黒ラベル」として売ることに。
結果的にスーパードライによって、各メーカーが従来とは異なる特徴的なビールを出すことになり、日本のビールの味の幅が広がることになりました。
マルエフの復活
一方でマルエフは、スーパードライの消費が増えてきたことを理由に1993年で一般向けの瓶、間での販売が終了し、一部地域で業務用の樽詰めのみの販売に縮小されました。その後2018年に製造工場を拡大して業務用での全国展開を再開、期間限定で缶での販売がされました。
そして2021年に、不死鳥を象ったマークのついたラベルデザインにリニューアルされ、「マルエフ」の文字も追加された現在の缶が発売され、今に至っています。
テイスティング
今回はスーパードライのジョッキ缶とマルエフを飲み比べます。一時期はジョッキ缶が大人気でなかなか入手できませんでしたが、スーパードライ自体がリニューアルしてから徐々に店頭でも見かけるようになりました。
スーパードライは、アルコールからの辛みがしっかりあり、ホップの苦み、モルト由来のふわっとした香りや甘さ、うま味は少なめです。残り香や後味においても、それほど後引く感じが少なく、すっと消えてくれる印象です。
一方でマルエフは、アルコール由来の辛みは少なく、軽くホップの苦みが目立った後、モルトの甘味、うま味が感じられます。しかしこちらも、香りや味わいが後を引く印象は少なく、すっと消えます。
この辺りが「コクがあるのにキレがある」と言われる由来でしょう。
クラフトビールブームから始まる消費者嗜好の変化
ここ5年においては、小規模の醸造所によるクラフトビールがどんどんと出回るようになり、大手メーカーもサッパリとしてキレのあるビールからコクの深いものを発売するなど、消費者のビールに対する嗜好が変わっているように思えます。革命を起こしたスーパードライも発売から35年が経過し、すでに「定番」となったことで、むしろ昔ながらのコクのあるビールが若い人を中心に新鮮に感じているでしょう。
マルエフの復活もこうした流れがあってのことでしょう。
今後、段階的にビールの酒税減税が続くため、ビール自体が多様化、活性化することは十分あり得るでしょう。