欧州のプラスチック規制(大機小機)
プラスチックごみを減らすための規制強化の動きが欧州で相次いでいる。英国のメイ首相は1月11日、長期の環境計画の一環として、2042年までに可能な限りプラスチック廃棄物を無くす政策を打ち出した。欧州委員会も16日、欧州連合(EU)域内で使い捨てのプラスチック容器や包装を30年までに無くし、すべてを再利用ないし素材としてリサイクルできるようにする戦略を発表した。
規制強化の背景にあるのは、深刻な海洋汚染だ。
世界の海岸に漂着するごみの8割以上はプラスチックといわれる。一方、欧州委によると、EU域内で年間に捨てられる2500万トンのプラスチックのうち、リサイクル用に回収されているのは3割に満たない。欧州委のティメルマンス第1副委員長は、「プラスチックの利用の仕方を改めないと、魚ではなくプラスチックが海にあふれることになる」と警告している。
すでにEUはプラスチックバッグ(レジ袋)の使い捨ての規制に着手しているが、今回の欧州委の戦略では、プラスチックごみの回収方式の改善や、リサイクル施設の整備、再資源化事業の採算向上もめざす。
英国が離脱した後のEU予算の財源を確保する狙いから、プラスチックの容器や包装に課税する構想も取りざたされている。
昨年は、英国、フランス、中国などが電気自動車(EV)への移行を急ぐ動きが注目された。今年は、プラスチック規制が注目すべき動きの一つになる。いずれも、将来の石油需要に影響を及ぼす動きだ。
石油専門家の多くは、自動車や飛行機の軽量化を進める必要もあるので、プラスチック需要は増え続けると見込んできた。軽くて破れにくいという利点が大きいからだが、分解されにくく形を保つ特性は、自然環境では逆に問題を生む。
プラスチックの需要がすぐに鈍ることはないとしても、これに代わる環境への負荷が小さいパッケージ素材などへのニーズが、これから高まるだろう。
世界の機関投資家は、企業の取り組みに注目する。容器の素材を変更するネスレ、リサイクルの徹底を掲げたコカコーラなど、欧米の有力企業が動き始めた。プラスチック廃棄物規制への対応は、日本企業にとっても重要なテーマだ。
(花山裏)