黒王国物語
墜ちた先へ(2)
マクスウェル領の住宅街。
ラルフは先日の戦から戻ってきた。
レオン、ミーアそしてジュリアは、シュヴァルツ王国の勝利を喜んだ。
「このまま勝てば、シュヴァルツ王国の立て直しが叶うんじゃねえか?」
「そうね。エルマの予言の事もあるわ」
「あ、そうそう。エルマの予言の事なんだけど……」
ミーアは、先日、エルマの予言の事を思い出した。
「私達で軍を革命する方法ってあるかしら?」
「母さん、それはどういう事だ?」
「私の近くにいる人が、軍の革命を起こすってエルマは言ってたのよ」
自分達の周りに、そのような人物など――そうミーアは悩んでいた時だった。
「レオン、私思うのだけど、前くれた拳銃……どうしたの?」
「俺が作ったぜ」
「貴方、拳銃はノールオリゾン国の技術よ。何で知ってるの?」
「え、いや、亡き親父がノールオリゾン国の技術を持って帰ったんだぜ?」
「もしかして、レオン、お前なのではないか?」
行き着いた答えにラルフは確信する。
シュヴァルツ王国は騎士の国と言われている。剣で忠義を守ってきた。
しかし、もう剣は古いのかもしれない
古くから伝わる伝統を守ることも必要だが、革命を起こす事も大事だ。
ラルフは軍の司令官に告げる事にした。シュヴァルツ王国軍にも、革命が必要だと。
こうして、シュヴァルツ王国軍は拳銃技術を手にしていく。
ラルフは、レオンは、革命を起こしていくだろう。全てはシュヴァルツ王国の勝利の為に。
「そう。天使教会が、そんな事に……」
「すまんな。折角、尽力してくれたのに、こんな事になるやなんて」
七瀬はメリルと内密に会っていた。
近日、天使教会を崩壊させる――シュヴァルツ王国軍が動くと。
「良いんだよ。僕は、この教えに疑問を持っていたし、天使教なんてとっくに捨てたよ」
そう、七瀬に協力した時からずっと――とはいえ、少し悲しいのは何故だろう。
メリルは自分の心に問うが、その理由は分からなかった。
「でも、君も大変だね。ダニエル様の手と足になるだなんて」
「ええんや。少しでも、ダニエル様の為になるなら、うちなんだってやる」
メリルはふと思う。
何故、七瀬はダニエルの指示を忠実に守っているのだろう。
嫌なことも平気でするのだろう。
恐らく、ダニエルは七瀬を、七瀬はダニエルを信頼しているからだろう。
その心は、何よりも、何よりも深い物だ。